「痛み止めを飲んでも足のつりが治まらない」「両方飲んでも大丈夫なのか、間隔は空けるべきか」――芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)と鎮痛薬の併用について、こうしたご質問をいただきます。
結論からお伝えすると、併用に問題はなく、間隔を空ける必要もありません。働きかける場所が違うためです。
ただし注意点が1つあります。芍薬甘草湯は甘草の量が最も多い部類の漢方薬で、毎日飲み続ける前提の薬ではありません。当薬局では、痛みのある日だけの使用をお勧めしています。
併用できる理由と、飲む間隔
結論: 鎮痛薬は炎症と痛みの信号に働き、芍薬甘草湯は筋肉の急な収縮そのものに働きます。狙う場所が重ならないため、同時に飲んでも差し支えありません。胃が弱い方は30分ほど分けると負担が軽くなります。
鎮痛薬が働くところ/芍薬甘草湯が働くところ
一般的な鎮痛薬は、体のなかで痛みや炎症を起こす物質の生成を抑えます。炎症が背景にある痛みに向かう仕組みです。
打撲、関節の痛み、頭痛、生理痛。いずれも炎症や痛みの信号が関わっています。
逆に言えば、炎症が背景にない痛みには届きにくいということです。こむら返りのように、筋肉が急に縮んで起こる痛みがそれにあたります。
飲んでも変わらなかった経験がある方は、痛みの種類が違っていた可能性があります。
もう一方は、別の場所を担当します。
芍薬甘草湯は芍薬と甘草の2つだけでできた漢方薬です。効能効果には「筋肉の急激なけいれんを伴う疼痛、筋肉・関節痛、胃痛、腹痛」と定められています。
こむら返り、腹部の差し込む痛み、胃の痛み。筋肉が急に縮んで戻らない状態そのものをゆるめる方向に働きます。
2つの生薬だけで組まれているぶん、狙いがはっきりしています。効き方が早いのも、この単純さによります。
重ならないから併せられる
炎症を抑えるのと、縮んだ筋肉をゆるめるのは別の仕事です。同じ痛みに対して違う角度から手を入れることになります。
実際、整形外科などで両方が同時に処方される場面もあります。併用が想定外の組み合わせではないという点は、安心していただいてよい部分です。
漢方薬と西洋薬を混ぜてはいけない、と考えている方が一定数いらっしゃいます。ここは当てはまりません。
同時でよい理由|胃が弱い方と、飲む順番
相互作用が報告されていないため、吸収を邪魔し合うことがありません。こむら返りのように急に起こる症状では、時間を空けている余裕もないのが実際です。
夜中に足がつって目が覚めた。この場面では、すぐに飲めることのほうが重要になります。
30分空ける、食後にする。こうした条件を守ろうとして飲む機会を逃すほうが、実際には損になります。
順番も間隔も、痛みの前では二の次です。
例外にあたるのは、消化の弱い方です。
鎮痛薬は胃に負担がかかることがあります。空腹時に鎮痛薬と芍薬甘草湯を一緒に飲むと、胃が重くなる方がいます。
この場合は、鎮痛薬を食後に、芍薬甘草湯を30分ほど空けてという形にすると和らぎます。芍薬甘草湯は空腹時でなくても働きが大きく変わりません。
もたれる感じが続くようなら、飲み方より鎮痛薬の種類を見直す場面です。胃を守る薬を併せる形もあります。
順番を気にされる方も多くいらっしゃいます。
決まりはありません。痛みの性質で判断すると分かりやすくなります。
つったような痛みが主なら芍薬甘草湯を先に、炎症を伴う痛みが主なら鎮痛薬を先に。数分の差なので、厳密に考える必要はありません。
同時に飲んで差し支えありません。順番を気にして飲むのが遅れるほうが、痛みは長引きます。
どちらが主かの見分けは、痛みの出方で付きます。急に縮む感じか、じんじんと続く感じか。
芍薬甘草湯の最大の注意点|甘草の量
結論: 芍薬甘草湯は甘草の量が漢方薬のなかで最も多い部類です。毎日続けると副作用が出やすくなります。
2つの生薬しか入っていない|偽アルドステロン症という副作用
芍薬甘草湯は芍薬と甘草の2つだけです。生薬の数が少ないぶん、1つあたりの量が多くなります。
多くの漢方薬では甘草が脇役ですが、この漢方薬では半分を占める主役です。この構造が、続けて飲むときの注意点を生みます。
効き方が早いことと、長く続けられないことは、同じ理由から来ています。切れ味と引き換えに、量の制約があるということです。
ここを知らずに毎日飲み続けると、後で困ることになります。
量が積み上がると、名前のついた形で出ます。
甘草を長く飲むと、体内のカリウムが減ります。むくみ、体重増加、血圧の上昇、手足に力が入りにくいといった症状が出ることがあります。
足のつりを治すために飲んでいるのに、続けるとかえって足がつりやすくなるという逆転が起こり得ます。カリウムが減ると筋肉のけいれんが起こりやすくなるためです。
つる回数が増えたなら、量を減らす合図と受け取る形になります。
頓用が基本|高齢の方では特に注意
痛みのある日だけ、つった時だけ。これが芍薬甘草湯の基本的な使い方です。
毎日3回、何か月も続けるという飲み方は想定されていません。当薬局では、週に何日飲んでいるかを必ず伺うようにしています。
痛みが強かった記憶は残りますが、何日飲んだかは覚えていないものです。数えていない方がほとんどです。
袋を捨てずに月ごとにまとめておくだけで、その数字が残ります。
年代によって、注意の重さが変わります。
甘草による副作用は高齢の方で報告が多いことが知られています。日常的に飲む薬が複数ある年代でもあり、重複が起きやすい事情も重なります。
血圧の薬や利尿薬を飲んでいる方は、開始前に伝える必要があります。
お薬手帳を1冊にまとめておくと、こうした確認が数十秒で済みます。複数の医療機関にかかっている方ほど、ここが効いてきます。
こむら返りと生理痛での使い方
結論: こむら返りではつった時に飲む形が基本で、夜間に起こる方は寝る前に1回という使い方もあります。生理痛にも使われますが、こちらも頓用が基本で、鎮痛薬との併用に問題はありません。
つった時に飲む|夜間に頻発する場合
芍薬甘草湯は即効性のある漢方薬です。飲んで数分から30分ほどで手ごたえが出ることが多く、この点が他の漢方薬と大きく違います。
夜中に足がつって目が覚めたとき、枕元に置いておいてすぐ飲めるようにしている方が実際にいらっしゃいます。
水がなくても飲めるよう、コップも一緒に置いておく形が向いています。暗い中で探す時間が惜しい場面です。
つってから飲むまでの時間が短いほど、収まるのも早くなります。
毎晩起きる方には、別の形もあります。
毎晩のようにつるという方では、寝る前に1回だけ飲むという使い方があります。予防的な位置づけです。
ただしこれも毎日続けると甘草が積み上がります。週に何日つっているかを記録し、頻度が下がったら止めるという前提で始めます。
止める時期を決めずに始めると、そのまま何か月も続くことになります。始める前に、いつ見直すかを決めておく形です。
2週間ためして減らないなら、原因のほうを探す段階に入ります。
頻度が下がらない場合|運動やスポーツの場面
つる回数が減らないなら、背景に別の原因があるかもしれません。水分やミネラルの不足、糖尿病や腎臓の病気、飲んでいる薬の影響。
芍薬甘草湯で抑え続けるのではなく、なぜつるのかを確かめる段階に進む必要があります。月に10日以上飲んでいるなら、その時期です。
血液検査で分かることが多くあります。原因が見つかれば、そちらに手を入れるほうが早く済みます。
体を動かす場面では、前提が変わります。
激しい運動の後につるという方では、水分とミネラルの補給が先になります。汗で失われたものが原因なら、そちらを補うほうが根本的です。水だけを飲むと、かえって薄まってつりやすくなることがあります。塩分を含む飲み物や、食事で補う形が向いています。
運動の前後だけでなく、途中にも入れると差が出ます。のどが渇いてからでは間に合いません。
芍薬甘草湯は、その場をしのぐ手段としては使えます。ただ、毎回使う状態なら補給の側を見直す場面です。
差し込むような痛みに向かう|生理の日だけ使う
効能効果に腹痛が含まれています。子宮が急に収縮して起こる、差し込むような痛みが対象です。
鎮痛薬が効きにくい種類の痛みに、別の角度から届く場面があります。
ずっと重い痛みが続いているのではなく、波のように来る痛みが対象です。息が詰まるような感じを伴うこともあります。
鎮痛薬を飲んでも変わらなかった方が、こちらで収まることがあります。痛みの種類が違っていたということです。
使う日は、絞っておきます。
生理痛での使用も、痛みのある1日から3日に限るのが基本です。生理のたびに数日だけなら、甘草の積み上がりは大きくなりません。
一方、生理前から生理後まで毎回1週間以上飲んでいるなら、量を見直す必要があります。
年に12回、毎回1週間なら84日です。頓用のつもりでも、合計すると相当な日数になります。
痛みが長く続くなら、その日だけを抑えるより、背景に向かう漢方薬を土台に置く形が合っています。
実際にどう振り分けるかも決めておきます。
痛みが強い日は鎮痛薬を使い、差し込む痛みには芍薬甘草湯を足す。この組み合わせで足りることが多くあります。
あわせて、生理痛の背景そのものに向かう漢方薬を土台に置くという考え方もあります。桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がその系統です。
どちらにも甘草が入っていないので、頓用と重ねても量が増えません。
他の漢方薬と併用している場合
結論: 甘草を含む漢方薬と重なると、量が一気に跳ね上がります。ここが最も見落とされやすい部分です。
甘草はほとんどの漢方薬に入っている|頓用なら重なる日は限られる
甘草を含む漢方薬は、医療用として使われるもののうち7割ほどに及ぶとされます。抑肝散(よくかんさん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)など。
これらを毎日飲みながら芍薬甘草湯を頓用する場合、飲んだ日は甘草の量が大きく増えます。
毎日飲むほうに何が入っているかを、先に確かめておく形が確実です。薬剤師に聞けばその場で分かります。
ただ、飲み方しだいで話が変わります。
毎日ではなく、痛みのある日だけであれば、重なる日は限られます。この形なら過度に心配する必要はありません。
問題になるのは、両方を毎日飲んでいる場合です。毎日飲む土台のほうを、甘草の入っていないものに替えられないかを検討する場面です。土台を替えれば、頓用の余地が広がります。
両方が必要な時期なら、期間を区切って進める形もあります。合計の日数を見る発想が要るということです。
含まない漢方薬もある|市販薬にも入っている
五苓散(ごれいさん)、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸には甘草が入っていません。これらと併用しても、甘草の量は増えません。
土台に置く漢方薬を甘草の入っていないものにすると、芍薬甘草湯を頓用する余地が広がります。
下の表は、よく併用される漢方薬について、甘草の有無と重なりをまとめたものです。自分が飲んでいるものの行を見れば、頓用したときにどうなるかが分かります。
含むものを飲んでいるからといって、併用できないわけではありません。日数を数える必要が出てくる、という意味です。
| 併用する漢方薬 | 甘草 | 芍薬甘草湯との重なり |
|---|---|---|
| 抑肝散 | 含む(多い) | 飲んだ日は大きく増える |
| 補中益気湯 | 含む | 飲んだ日は増える |
| 五苓散 | 含まない | 増えない |
| 当帰芍薬散 | 含まない | 増えない |
| 桂枝茯苓丸 | 含まない | 増えない |
見落としやすいのは、処方箋の外にあるものです。
風邪薬、のどの薬、胃腸薬、のど飴。市販薬にも甘草を含むものが数多くあります。処方された薬だけを数えていると、この分が抜け落ちます。のど飴は薬ではないという感覚で、数に入れていない方が多くいらっしゃいます。1日に何個も舐めていれば、それなりの量になります。
箱や袋の成分表示に、甘草もしくはカンゾウと書かれています。買うときに一度見ておくと、あとで数えやすくなります。
西洋薬との併用で注意するものと、気づくためのサイン
結論: 利尿薬との組み合わせでカリウムがさらに減ることがあり、心臓の薬を飲んでいる方も確認が要ります。むくみ、体重の増加、手足のだるさ、足がつりやすくなった。この4つが並んだら甘草を疑います。
利尿薬と心臓の薬
一部の利尿薬は、体内のカリウムを減らす方向に働きます。甘草による作用と重なると、低カリウム血症が起こりやすくなります。
血圧やむくみで利尿薬を飲んでいる方は、開始前に必ず伝えてください。あわせて、定期的な血液検査の結果があると判断がしやすくなります。
足がつる、力が入りにくいという形で出ることが多い変化です。もともとの症状と紛らわしいところがあります。
同じ理由で、確かめておきたいものがあります。
一部の心臓の薬は、カリウムの値によって働きが変わります。カリウムが減った状態で使うと、影響が強く出ることがあります。
該当する薬を飲んでいる方は、自己判断で芍薬甘草湯を始めないでください。
市販で手に入るものでもあるので、気づかずに始めてしまう場面があります。ここは薬剤師に確かめる価値があります。
お薬手帳を見せれば、その場で判断がつきます。
鎮痛薬そのものは問題にならない|血圧の薬は伝える
一般的な鎮痛薬とのあいだで、相互作用は報告されていません。併用に関しては、こちらは心配の少ない組み合わせです。
対象となるのはカリウムに関わる薬で、鎮痛薬はここに該当しません。
併用で気をつけるのは、鎮痛薬の側の胃への負担くらいです。これは芍薬甘草湯と重ねたから起きるものではありません。
鎮痛薬を飲んでいるから漢方薬は足せない、と考える必要はないということです。
血圧のほうにも、確かめる薬があります。
甘草によって血圧が上がることがあるため、血圧の薬を飲んでいる方は伝えておく必要があります。頓用であれば影響は限られますが、毎日飲む場合は別です。
家庭で血圧を測っている方は、飲み始めた時期を記録に書き添えておくと、変化が読み取れます。
もともと血圧が高めの方ほど、上がったときの幅が問題になります。測っていない方は、この機会に始める価値があります。
4つを並べて見る|体重と日数で確かめ、出たら止める
顔や足がむくむ、靴やゆびわがきつくなる、数日で体重が2キロ以上増える、手足に力が入りにくい、足がつる回数が増えた。
1つずつだと年齢や疲れのせいだと思われがちですが、並べるとはっきりします。飲み始めてから出たかどうかが目印です。
むくみは自分では分かりにくいので、すねを指で押して跡が残るかどうかで見ます。
家族から顔がむくんでいると言われて気づく方もいらっしゃいます。
見た目より確かな測り方があります。
むくみは見た目では判断しにくく、気づいたときには数日経っていることがあります。体重であれば数字で残ります。
朝起きて排尿の後、同じ服装で測る。この条件を固定すると、1キロの違いも拾えます。
飲み始める前に何日か測っておくと、比べる基準ができます。始めてから測り始めると、増えたかどうかが分かりません。
手帳に数字を並べるだけで足ります。
もう1つ、数えておくものがあります。
週に何日飲んでいるかを記録します。月に10日を超えているなら、頓用の範囲を出ています。
痛かった記憶は曖昧になりますが、飲んだ日数は数えられます。これが最も扱いやすい目安になります。
空き袋を月ごとの封筒に入れておくだけで、数える手間はかかりません。
月に10日という線を1つ持っておくと、超えたかどうかで判断できます。感覚で多い少ないを考えるより、確かです。
当てはまったときの動き方も決めておきます。
該当するサインが並んだら、まず芍薬甘草湯を止めて、他に飲んでいる甘草を含むものも整理します。
血圧が上がっている、手足に力が入らないという症状があれば、医療機関に相談してください。
止めれば戻ることがほとんどです。時間はかかりますが、放置しなければ大事には至りません。
いつから飲み始めて、いつ症状が出たか。この2つが分かると、判断が早く進みます。
こむら返り以外の使いどころ
結論: 効能効果には筋肉・関節痛、胃痛、腹痛も含まれます。急に縮んで戻らないという形が共通しています。
胃と腹部の差し込む痛み
胃が急に締めつけられるように痛む場面で用いられます。効能効果に胃痛が挙げられているのは、この形が対象だからです。
ただし、痛みが繰り返し起こる、食後に決まって痛む、体重が減っているといった場合は、医療機関での確認が先になります。
急な痛みが1回きりなら、その場を収める使い方で足ります。繰り返しているかどうかが分かれ目です。
何日に何回痛んだかを書き留めておくと、判断の材料になります。
同じ差し込みでも、場所が下がる場合があります。
腸が急に縮んで起こる痛みに向かいます。冷えた後や、緊張したときに起こるという方が多くいます。
対象となるのは急な痛みで、慢性的に続く腹痛は該当しません。
冷えが引き金になっている方は、お腹を温めるだけで収まることもあります。腹巻きや温かい飲み物で試せます。
緊張と結びついている方は、出る場面が決まっています。通勤の途中、会議の前。ここが分かると、手の打ちようが出てきます。
腰や肩の急な痛み|尿路結石の痛み
ぎっくり腰のように、筋肉が急に縮んで動けなくなる場面でも用いられます。鎮痛薬と併せて使われることが多い場面です。
筋肉が固まって動かせないという形であれば、届く可能性があります。
痛みそのものを消すというより、縮んで戻らない筋肉をゆるめる働きです。動かせる範囲が広がる、という形で表れます。
数日たっても動けない、しびれを伴うという場合は、別の原因を確かめる場面になります。
筋肉のほかに、管が縮む痛みにも使われます。
医療の現場では、尿路結石による痛みに対して使われることがあります。管が縮んで起こる強い痛みが対象です。
ただし激しい痛みがある場合は、まず医療機関での対応が先になります。
我慢して自宅でしのぐ種類の痛みではありません。原因を確かめて、必要な処置を受ける段階です。
痛みが収まったあとに、再び起こらないようにする手当ては別にあります。水分の摂り方がそのひとつです。
使う前に確かめる5つのこと
結論: 血圧、飲んでいる薬、飲む頻度、つる原因、代わりの手段。この5つを先に整理すると、続けるかどうかの判断がしやすくなります。
順番に確かめる5つ|水分とミネラルの補給、ふくらはぎを伸ばす
- 血圧の薬や利尿薬を飲んでいないか
- 他に飲んでいる漢方薬に甘草が入っていないか
- 週に何日つっているか、何日飲んでいるか
- つる時間帯と、その日の水分量や運動量に偏りがないか
- 水分やミネラルの補給、ストレッチで減らせないか
5番目まで見ると、飲む日数を減らせる余地が見えることがあります。芍薬甘草湯は飲む回数を減らせるほど安全に使える薬です。
飲むもの以外に、先に埋めておく部分があります。
汗をかいた日、飲酒した日、利尿薬を飲んでいる日は、体から水分とミネラルが多く出ます。この日につりやすいという方は珍しくありません。
寝る前にコップ1杯の水を飲む。これだけで夜間のこむら返りが減ったという方が実際にいらっしゃいます。
夜中にトイレで起きるのが気になる方は、夕方までに量を寄せる形もあります。
1週間ためして変わらなければ、原因は別のところにあると判断できます。試す価値のある割に、手間がかかりません。
体の側からも、回数を減らせます。
寝る前にふくらはぎを30秒ずつ伸ばすと、夜間につる回数が減ることがあります。飲むものと並行して行う価値があります。
あわせて、冷えも引き金になります。夏場の冷房で足先が冷えている方は、靴下を1枚足すだけで変わることがあります。
伸ばすときは、反動をつけずにゆっくり行います。痛みを感じるところまで伸ばす必要はありません。
風呂上がりに行うと、筋肉が温まっているぶん伸びやすくなります。
妊娠中・授乳中・高齢の方での扱い
結論: 妊娠中は自己判断で始めず、高齢の方は量と頻度から相談します。年代によって確かめる項目が変わります。
妊娠中と授乳中
妊娠中は足がつりやすくなる時期です。芍薬甘草湯が用いられる場面もありますが、自己判断で始めるものではありません。
産婦人科に伝えたうえで判断する形になります。あわせて、水分とミネラルの補給や、寝る前のストレッチで減らせないかを先に試す価値があります。
お腹が大きくなる時期は、姿勢や血の巡りの影響も重なります。時期が過ぎれば落ち着くことが多いところです。
産んだあとも、確かめる点が残ります。
明確な禁止はありませんが、母乳を通じた影響についてのデータが十分ではありません。頓用で数回であれば大きな心配はないものの、続けて飲む場合は相談していただく形になります。
この時期は睡眠が細切れになり、水分も不足しがちです。つりやすくなる条件が重なっています。
授乳のたびに水分を1杯入れる形にすると、それだけで減ることがあります。飲むものを足す前に試せる方法です。
高齢の方と、子どもの場合
甘草による副作用は高齢の方で報告が多く、ここが最も注意の要る年代です。日常的に飲む薬が複数あることが多く、重複も起きやすくなります。
当薬局では、70代以降の方については量を少なめに始め、飲んだ日数を記録していただくようお願いしています。
少なめで足りることも多くあります。効きめが弱いと感じたときに増やす、という順番のほうが安全です。記録があれば、その判断も早く付きます。
年齢が下がる側にも、相談があります。
成長期に足がつるという相談もあります。この場合、運動量と水分の摂り方が原因のことがほとんどです。
飲むものを足す前に、練習後の水分とミネラルの補給を見直すほうが早く済みます。
練習中に飲めているかどうかも確かめる価値があります。終わってから一気に飲む形では間に合いません。
成長期は、体が大きくなる速さに追いつかないことでも起こります。伸びている時期は、そのぶん起きやすくなります。
改善症例|併用の整理で楽になった2例
結論: 併用そのものより、甘草の総量が問題になっていることがあります。当薬局で伺った2つのケースをご紹介します。
ケース1:60代男性|毎晩飲み続けていた
症状: 夜間のこむら返りで芍薬甘草湯を毎晩、半年ほど飲んでいた方です。痛み止めも併用していました。最近つる回数がかえって増え、足のむくみも出てきたとご相談をいただきました。
アプローチ: 甘草によってカリウムが減っている可能性をお伝えし、医療機関で血液検査を受けていただきました。あわせて、つった時だけの頓用に戻し、冷えと巡りに向かう別の煎じ薬を土台に置いています。
経過: 3週間でむくみが引き、2か月後にはつる回数が週4回から1回に減りました。飲み続けたことが原因を増やしていた例です。
ケース2:40代女性|甘草が重なっていた
症状: 生理痛で芍薬甘草湯と鎮痛薬を併用している方が、飲むと顔がむくむとご相談に来られました。併用が原因かと考えておられました。
アプローチ: 飲んでいるものを確認すると、日常的に抑肝散も飲んでおり、生理の日は甘草が二重になっていました。抑肝散を甘草の少ない組み立てに変え、芍薬甘草湯は生理の2日間だけという形に整理しています。
経過: むくみは出なくなり、痛みの抑え方も変わりませんでした。問題は鎮痛薬との併用ではなく、漢方薬どうしの重なりだった例です。
よくある質問
Q. ロキソニンと同時に飲んでも大丈夫ですか?
A. 差し支えありません。鎮痛薬は炎症と痛みの信号に、芍薬甘草湯は筋肉の急な収縮に働くため、狙う場所が重なりません。間隔を空ける必要もありませんが、胃が弱い方は30分ほど分けると負担が軽くなります。
Q. どちらを先に飲めばいいですか?
A. 決まりはありません。つったような痛みが主なら芍薬甘草湯を先に、炎症を伴う痛みが主なら鎮痛薬を先に、という程度の目安で構いません。数分の差なので厳密に考える必要はありません。
Q. 毎日飲んでも大丈夫ですか?
A. 勧められません。芍薬甘草湯は甘草の量が最も多い部類の漢方薬で、続けるとむくみや血圧の上昇、足がつりやすくなるといった副作用が出ることがあります。痛みのある日だけの頓用が基本です。月に10日を超えているなら見直す時期です。
Q. 毎晩つるので、予防的に寝る前に飲んでもいいですか?
A. 一時的にはその使い方もありますが、続ける前提にはしないでください。つる回数が減らないなら、水分やミネラルの不足、飲んでいる薬の影響、別の病気が背景にあるかもしれません。原因を確かめる段階に進む必要があります。
Q. 他の漢方薬と一緒に飲んでいます。問題ありませんか?
A. 相手に甘草が入っているかどうかで変わります。抑肝散や補中益気湯には入っているため、飲んだ日は量が大きく増えます。五苓散や当帰芍薬散、桂枝茯苓丸には入っていないので増えません。飲んでいるものを薬剤師に見せて確かめてください。
まとめ
芍薬甘草湯とロキソニンをはじめとする鎮痛薬は、併用に問題がありません。働きかける場所が違うためで、間隔を空ける必要もありません。整形外科などで両方が同時に出される場面もある、想定内の組み合わせです。
注意が要るのは、併用そのものではなく甘草の量です。芍薬甘草湯は2つの生薬だけでできており、甘草が半分を占めます。毎日続けるとむくみや血圧の上昇が起こり、足のつりを抑えるために飲んでいるのに、かえってつりやすくなるという逆転も起こり得ます。
見落とされやすいのが、他の漢方薬との重複です。抑肝散や補中益気湯には甘草が入っているため、飲んだ日は量が跳ね上がります。一方、五苓散や当帰芍薬散、桂枝茯苓丸には入っていません。土台に置くものを選べば、頓用の余地が広がります。
つる回数が減らないなら、抑え続けるのではなく原因を確かめる段階です。当薬局では飲んでいるものを全部見せていただき、甘草の総量から組み直した煎じ薬をお作りしています。飲む日数が増えてきたら、公式LINEからお気軽にご相談ください。


