「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されたけれど、私は太っていないし、むしろ痩せている方だ」 「ネットで検索しても『ダイエットしましょう』『糖質制限を』という情報ばかりで、自分に合う対策が分からない」もしあなたがそう感じているなら、この記事はまさにあなたのためのものです。実は、日本人のPCOS患者さんには、痩せ型や標準体型の方が非常に多いという特徴があります。欧米型の「肥満による排卵障害」とはメカニズムが異なるため、痩せ型の方が無理なダイエットや糖質制限をすると、かえって生理が止まってしまうことさえあるのです。この記事では、漢方薬局の視点から、痩せ型PCOSの原因である「エネルギー不足」について解説し、本当に必要な「補う」ケアについてお話しします。PCOSの全体像や、漢方で整える方法をまとめた記事はこちら『多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を漢方で整える|原因から体質改善まで網羅した完全ガイド』痩せ型でも多嚢胞性卵巣症候群になる?「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)=肥満の人がなる病気」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、実際には体重や体脂肪率が低い方でも発症します。 まずは、なぜ痩せているのにPCOSになるのか、その背景を知ることから始めましょう。日本人のPCOS患者の約3割は痩せ型世界的に見るとPCOSは肥満の方に多い疾患ですが、アジア人、特に日本人においてはその傾向が少し異なります。 国内の調査では、PCOSと診断された女性のうち、約25〜30%は痩せ型(非肥満)であると言われています。標準体型の方を含めると、半数以上が肥満ではありません。「太っていないから私は違うはず」と思い込んでいると、発見が遅れる原因になります。日本人女性にとって、痩せ型PCOSは決して珍しいことではないのです。肥満型とは違う「LH高値」タイプ肥満型のPCOSは、インスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性)が主な原因ですが、痩せ型の場合はホルモンバランスの乱れ方が少し異なります。痩せ型の方に多く見られるのが、脳から分泌される「LH(黄体化ホルモン)」の数値が常に高い状態です。 本来、排卵の瞬間だけ高くなるはずのLHが常に出続けているため、卵巣が過剰に刺激され続け、かえって排卵できなくなってしまいます。 このタイプの方は、血糖値の問題よりも、脳の指令系統の興奮やストレス、自律神経の乱れが関わっていることが多いのです。あわせて読みたい関連記事:多嚢胞性卵巣症候群は黄体ホルモン不足?漢方で高温期を作る方法自覚症状が少なく発見が遅れがち肥満型の方であれば「最近急に太った」「ニキビがひどい」といった変化で気づくことができます。 しかし、痩せ型の方は見た目の変化がほとんどありません。生理周期が35日、40日と少しずつ長くなっていても、「疲れのせいかな?」「楽でいいや」と見過ごしてしまいがちです。 不妊治療のクリニックやブライダルチェックで初めて「卵巣に卵がたくさん溜まっていますね」と指摘され、驚かれる方が非常に多いのが特徴です。太っていないのに排卵しない3つの原因では、なぜ脂肪が邪魔をしているわけでもないのに、卵巣は排卵を止めてしまうのでしょうか? 漢方(東洋医学)では、PCOSを単なる病気ではなく「体質の偏り」と捉えます。痩せ型の方の排卵障害は、「詰まっている」のではなく「足りていない」ことが主な原因です。卵巣のエネルギー不足(気虚タイプ)最も多いのが、漢方でいう「気虚(ききょ)」の状態です。 排卵とは、卵子が卵巣の壁を突き破って外に出る、非常にエネルギーを使う現象です。しかし、痩せ型の方はもともと胃腸が弱かったり、食が細かったりして、体を動かすガソリンである「気(エネルギー)」が不足しがちです。日常生活を送るだけで精一杯で、生殖機能(卵巣)に回すエネルギーが残っていない状態です。その結果、卵胞はある程度育っても、最後に飛び出すパワーがなく、卵巣内に留まってしまいます。栄養が行き届いていない(血虚タイプ)次に考えられるのが「血虚(けっきょ)」、つまり栄養不足です。 漢方でいう「血」は、ホルモンを運ぶトラックのような役割も果たしています。無理なダイエット経験がある方や、偏食気味の方、生理の量が極端に少ない方は、この「血」が不足しています。卵巣に十分な栄養とホルモンが届かないため、質の良い卵子が育ちにくく、卵巣の機能自体が低下してしまっている状態です。ストレスによる緊張(気滞タイプ)真面目で頑張り屋さんの痩せ型さんに多いのが「気滞(きたい)」です。 ストレスや緊張で、気の巡りが滞っている状態です。体が常に緊張モード(交感神経優位)にあると、血管が収縮し、卵巣への血流も悪くなります。すると卵巣の膜がギュッと硬くこわばってしまい、物理的に排卵しにくくなります。 「数値には問題がないのに排卵しない」という方は、このストレスによるブロックが原因かもしれません。あわせて読みたい関連記事:多嚢胞性卵巣症候群はストレスで悪化する?「肝」を整え排卵を取り戻す方法要注意!痩せ型PCOSがやってはいけない事PCOSの治療法を検索すると、「糖質制限」や「運動」が推奨されていることが多いですが、これらは主に肥満型の方に向けたアドバイスです。 痩せ型の方がこれらを真に受けて実践すると、逆効果になることがあります。過度な「糖質制限」は逆効果「PCOSには糖質制限が良いと聞いたから、お米を抜いています」 痩せ型の方からよく聞くお話ですが、これは大変危険です。痩せ型の方はもともとエネルギー(気)が不足しています。そこへ来て、エネルギー源である炭水化物を抜いてしまうと、脳は「今は飢餓状態だ」と判断し、命を守るために生殖機能(生理)を真っ先にストップさせます。 痩せ型さんに必要なのは、制限することではなく、質の良い糖質を適量とることです。激しすぎる運動による消耗「代謝を上げなきゃ」と、激しい筋トレや長距離ランニングをするのも要注意です。 気虚タイプ(エネルギー不足)の方が激しい運動をすると、なけなしの気を消耗してしまい、疲れ果ててしまいます。 運動後にぐったりしてしまうようなら、それはやりすぎのサイン。かえって排卵力を遠ざけています。冷たいサラダ中心のヘルシー食「野菜中心でヘルシーに」と、生野菜のサラダばかり食べていませんか? 生の野菜は体を冷やします。特に痩せ型の方は筋肉量が少なく冷え性の方が多いため、内臓が冷えると卵巣の血流がさらに悪化します。 良かれと思って食べているサラダが、実は「瘀血(おけつ=血行不良)」の原因を作っているかもしれません。痩せ型PCOSのための正しい改善法痩せ型PCOSの改善の鍵は、「出す(ダイエット)」のではなく「入れる(補う)」ことにあります。 卵巣が安心して「そろそろ排卵しても大丈夫かな」と思える環境を作ってあげましょう。「補う」食事:タンパク質と温かい汁物まずは「気」と「血」の材料をしっかり食べることです。 おすすめは、消化の良いタンパク質(鶏肉、白身魚、豆腐、卵など)と、温かい汁物(味噌汁、スープ)の組み合わせです。胃腸が弱い方が多いので、一度にたくさん食べるよりも、よく噛んで食べることや、おやつにおにぎりを食べるなど「分食」も有効です。 お米も、エネルギーを生み出す大切な源です。極端に減らさず、お茶碗一杯程度は毎食しっかり食べましょう。「緩める」習慣:睡眠とリラックスストレスによる「気滞」を解消し、「血」を養うために最も効果的なのが睡眠です。 特に夜の11時から3時は、漢方では血が作られるゴールデンタイムと言われています。また、頑張りすぎる性格の方は、意識的に「何もしない時間」を作ってください。 お風呂にゆっくり浸かる、好きなアロマを焚く、お茶を飲むなどして、心と体を緩めることが、硬くなった卵巣を柔らかくほぐすことにつながります。「巡らせる」漢方で排卵力をつける食事や生活習慣を変えてもなかなか生理が来ない場合は、漢方薬の力を借りるのが近道です。漢方では、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん): 血を補い、冷えを改善する 当帰芍薬散を購入する▶加味逍遥散(かみしょうようさん): 気の巡りを良くしてストレスを緩和する 加味逍遙散を購入する▶補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 胃腸を元気にしてエネルギーを底上げする 補中益気湯を購入する▶など、痩せ型さんの「足りない部分」を補う処方がよく選ばれます。 排卵誘発剤で無理やり卵巣を叩くのではなく、卵巣そのものが元気になるのを助けるアプローチです。PCOSの全体像や、漢方で整える方法をまとめた記事はこちら『多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を漢方で整える|原因から体質改善まで網羅した完全ガイド』%3Cdiv%20style%3D%22text-align%3A%20center%3B%20line-height%3A%200%3B%22%3E%0A%20%20%3Cp%20style%3D%22%0A%20%20%20%20margin%3A%200%200%200%200%3B%20%0A%20%20%20%20padding%3A%200%200%202px%200%3B%20%0A%20%20%20%20font-size%3A%2014px%3B%20%0A%20%20%20%20color%3A%20%2357443a%3B%20%0A%20%20%20%20line-height%3A%201.5%3B%0A%20%20%22%3E%0A%20%20%20%20%EF%BC%BC%20%E8%87%AA%E5%88%86%E3%81%AB%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%BC%A2%E6%96%B9%E8%96%AC%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E6%96%B9%E3%81%AF%20%EF%BC%8F%0A%20%20%3C%2Fp%3E%0A%20%20%0A%20%20%3Ca%20href%3D%22https%3A%2F%2Flin.ee%2FPveIvKw%22%20target%3D%22_blank%22%20rel%3D%22noopener%20noreferrer%22%20style%3D%22text-decoration%3A%20none%3B%20display%3A%20inline-block%3B%20width%3A%20100%25%3B%20max-width%3A%20600px%3B%22%3E%0A%20%20%20%20%3Cimg%20src%3D%22https%3A%2F%2Fstorage.googleapis.com%2Fstudio-design-asset-files%2Fprojects%2FnBW2MrAJav%2Fs-1200x300_v-fms_webp_a4c9c683-64f5-4354-b61b-440637270338.png%22%20style%3D%22%0A%20%20%20%20%20%20width%3A%20100%25%3B%20%0A%20%20%20%20%20%20height%3A%20auto%3B%20%0A%20%20%20%20%20%20display%3A%20block%3B%20%0A%20%20%20%20%20%20margin%3A%200%20auto%3B%0A%20%20%20%20%20%20border-radius%3A%2012px%3B%0A%20%20%20%20%20%20cursor%3A%20pointer%3B%0A%20%20%20%20%22%20alt%3D%E2%80%9C%E6%BC%A2%E6%96%B9%E7%9B%B8%E8%AB%87%E2%80%9D%3E%0A%20%20%3C%2Fa%3E%0A%3C%2Fdiv%3EPCOSが改善した症例過度な糖質制限を中止し、排卵周期が回復した症例30代前半 女性 まきさん婦人科でPCOSの疑いがあると言われた際、ネットで「糖質が卵巣に悪い」という情報を読み、糖質制限を開始されました。主食を抜き、肉や野菜中心の食事に変えたところ、BMI18前後の痩せ型だった体型がさらに細くなり、それと同時に生理が完全に止まってしまいました。疲れやすさや不眠、肌の乾燥にも悩まされ相談に来られました。漢方相談の結果、まきさんの場合は「インスリン抵抗性」よりも、糖質不足による「エネルギー枯渇」が深刻であると判断しました。脳が飢餓状態にあると認識し、生殖機能を後回しにしている状態です。まずは、毎食必ず「お米」を食べるよう食事の改善を提案しました。最初は「糖質を摂るとPCOSが悪化するのでは」と不安げでしたが、お米をしっかり食べるようになってから、まず体温が上がり、深く眠れるようになりました。食事を戻して3ヶ月後には、半年以上止まっていた生理が再開。現在は糖質を敵視せず、バランス良く食べることで、安定した生理周期を維持されています。冷えと血流が改善し、無月経を克服した症例20代後半 女性 あさみさん以前から痩せ型で体力がなく、病院でPCOSと診断されてからも「太っていないのになぜ?」と原因が分からず不安を感じておられました。生理は3ヶ月〜半年に一度しか来ず、ひどい冷え性と、立ちくらみのような貧血症状を自覚されていました。将来の妊娠も希望されており、体質改善のために相談に来られました。漢方的な見立てでは、あさみさんはホルモンの栄養源となる血(けつ)が不足している「血虚(けっきょ)」と、水の巡りが悪く下半身が冷える「水滞(すいたい)」の状態でした。卵巣周囲の血流が悪いため、卵胞が育ちにくい環境になっていたのです。そこで、血を補いながら全身の巡りを整える当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を服用していただくことにしました。服用開始から1ヶ月で、手足の冷えが解消され、顔色が明るくなりました。3ヶ月が経過する頃には、ガタガタだった基礎体温がきれいな二相性になり、自力での排卵を確認。その後も服用を続け、現在は自然なリズムで生理が来るようになり、体調も非常に安定されています。痩せ型PCOSに関するよくある質問Q. 妊娠しにくいですか?排卵障害がある以上、何もしなければ妊娠しにくい状態と言えます。しかし、PCOSは卵子がないわけではなく「出られないだけ」です。 痩せ型の方は、体力をつけてホルモンバランスを整えることで、自然排卵が戻りやすい傾向にあります。決して妊娠できないわけではありませんので、早めのケアが大切です。Q. 糖尿病のリスクはありますか?肥満型の方に比べればリスクは低いですが、痩せ型PCOSの方にも「隠れインスリン抵抗性」がある場合があります。 「甘いものを食べると急激に眠くなる」「夕方になると手が震える」などの症状がある場合は、血糖値の乱高下に注意が必要です。Q. 太った方が治りやすいですか?「BMIが低すぎる(18.5未満)」場合は、少し体重を増やして標準体重に近づけることで生理が戻ることがあります。 しかし、ただ脂肪を増やせばいいわけではありません。筋肉と栄養をつけて「健康的にふっくらする」ことを目指しましょう。お菓子で太るのは逆効果です。まとめ:エネルギーを蓄えて排卵できる体へ痩せ型の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の正体は、体がエネルギー切れを起こし、生殖機能を「省エネモード」にしている状態です。世の中の「痩せれば治る」という情報は、あなたには当てはまりません。 むしろ、しっかり食べて、温めて、休むこと。自分をいたわってエネルギーをチャージすることが、排卵への一番の近道です。「食べていいんだ」と心が楽になるだけで、体の緊張が解けて生理が来ることもあります。 もし、自分一人ではどう食事や生活を整えればいいか分からない、自分に合う漢方を知りたいという方は、ぜひ専門家を頼ってください。