更年期に絶対食べてはいけないもの、という意味ではひとつもありません。それでも、ほてりや動悸を強めやすいものは確かにあります。挙げるなら、まとめてとる砂糖、量の多いカフェイン、アルコール、辛いものの4つです。
ただ、この4つを並べて終わりにすると、たいていうまくいきません。理由は単純で、更年期は甘いものが欲しくなる時期だからです。我慢する話にすると続かず、続かないと結局もとに戻ります。
ここでは、なぜ甘いものが欲しくなるのかという仕組みから始めて、コーヒーはどこまで飲んでよいのか、大豆製品はどのくらい摂ればよいのかまで、量と時間帯の話として整理します。やめるかどうかではなく、いつ、どれだけ、という形に置き換えるのが要点です。
更年期障害で食べてはいけないものは?先に挙げると4つ
結論: ほてり・動悸・寝つきの悪さを強めやすいのは、まとめてとる砂糖、量の多いカフェイン、アルコール、辛いものの4つです。禁止ではなく、量と時間帯を変えるだけで影響はかなり減ります。
まとめてとる砂糖と、量の多いカフェイン
血糖が急に上がって急に下がる動きは、そのまま自律神経の揺れになります。下がる局面で動悸、冷や汗、いらだちが出るため、更年期の症状と見分けがつきません。問題は甘いもの自体ではなく、空腹時にまとめてとることです。
2つめは、朝いちばんに手が伸びるものです。
コーヒーや濃い緑茶に含まれるカフェインには、交感神経を刺激する働きがあります。ほてりや動悸が出やすい方では、この刺激が症状を後押しします。1日の総量と、飲む時間帯の2つで調整できます。
アルコールと辛いもの
アルコールは血管を広げるため、飲んだ直後にほてりが出やすくなります。さらに眠りの後半を浅くするので、夜中に目が覚める方では影響が重なります。
量よりも、寝る何時間前に飲み終えるかのほうが影響します。
4つめは、口の中で熱さを作るものです。
唐辛子の辛みは、体温が上がっていなくても熱く感じさせます。ホットフラッシュが強い時期は、これが引き金になることがあります。逆にほてりが落ち着いている時期なら、気にする必要はありません。
更年期に甘いものが欲しくなる理由と、付き合い方
結論: 女性ホルモンの減少で気分を保つ働きが弱まり、手っ取り早く気分を上げる糖を体が求めます。だから意思の問題ではありません。完全にやめるより、とる順番と時間帯を変えるほうが続きます。
気分を保つ仕組みが弱くなり、血糖の谷が次を呼ぶ
エストロゲンには、気分を安定させる方向に働く一面があります。これが減ると、落ち込みやすさやいらだちが出やすくなります。糖は短時間で気分を持ち上げるため、体は最短の手段としてそれを求めます。
ここに、もう1つの流れが重なります。
まとめて糖をとると、上がったあとに急な下がりが来ます。この谷で、また甘いものが欲しくなります。いわば、坂を勢いよく下りた反動でまた上りたくなるようなもので、回数を重ねるほど間隔が短くなります。
眠りの浅さが拍車をかける|意思の問題ではない
睡眠が足りない日は、甘いものが欲しくなる度合いが強まります。更年期は眠りが浅くなる時期でもあるため、ここが重なると欲求が一段強くなります。
これらを並べると、見え方が変わってきます。仕組みの側に理由があるからです。
我慢が足りないからだと思われがちですが、実際にはホルモンと血糖と睡眠の3つが背景にあります。責める方向で考えると続かないので、仕組みを崩す方向で組み立てます。
空腹時に単独でとらない|たんぱく質か脂質と一緒に
いちばん影響が大きいのがこれです。何も食べていない状態で甘いものだけを入れると、上がり方も下がり方も急になります。食後のデザートに移すだけで、同じ量でも動きが変わります。
では、何を添えるとよいか。
ナッツと一緒に、あるいは温かい豆乳と一緒に。組み合わせると吸収がゆるやかになり、谷が浅くなります。チョコレートを食べるなら、カカオの割合が高いものほど糖が少なくなります。
夕方以降を減らす/3日だけ記録してみる
夜にとった糖は、眠りの質に影響します。夕方までに済ませておくと、夜中に目が覚める回数が変わる方がいます。
とはいえ、いつ食べているかは意外と把握できていないものです。思い出しで書くと実際より少なくなるので、その場で残すほうが確実です。
いつ、何を、どのくらい食べたか。3日書き出すと、自分がどの時間帯に欲しくなるのかが分かります。
そこを狙って対策すれば、我慢する場面はかなり減ります。
コーヒーは飲んでよいか|量と時間帯、影響しやすい症状
結論: やめる必要はありません。目安は1日2杯から3杯までで、午後3時以降を控えると眠りへの影響が減ります。ほてり、動悸、寝つきの悪さ、いらだちが出ている時期は、上乗せになりやすい点だけ覚えておいてください。
1日の総量の目安と、見落とされやすい飲みもの
食品安全委員会は、諸外国の評価として「健康な成人であれば、一日当たり400ミリグラムまでのカフェイン摂取であれば健康リスクは増加しない」という値を紹介しています(食品安全委員会)。コーヒー1杯におよそ60ミリグラムから90ミリグラム含まれるため、2杯から3杯が現実的な目安になります。
この量を数えるとき、1つの飲みものだけを見ていると足りません。
緑茶、紅茶、ウーロン茶、エナジードリンク、栄養ドリンク。これらにもカフェインが入っています。コーヒーを1杯に減らしても、緑茶を何杯も飲んでいれば総量は変わりません。
午後3時を境にする|急に断たない、デカフェという手
カフェインの働きが半分になるまでには数時間かかります。夕方に飲んだ分が、寝つく時間まで残ります。眠りが浅い時期は、午後3時を境にすると変化が分かりやすくなります。
ただし、いきなり断つのは勧めません。
毎日飲んでいる方が突然ゼロにすると、頭痛やだるさが出ることがあります。1日1杯ずつ減らしていくほうが体が慣れます。
減らす途中で使える手もあります。
味や習慣が目的なら、カフェインを抜いたものに置き換える方法があります。香りと温かさは残るので、やめた感じが少なくて済みます。
ほてりと動悸、寝つきと中途覚醒
交感神経が刺激されると、心拍が上がり、血管の動きも変わります。もともとほてりが出やすい時期には、これが引き金として働きます。
日中だけでなく、夜のほうにも出ます。ここは自覚しやすく、飲む時間を変えたときの手ごたえも分かりやすい部分です。
寝つきだけでなく、眠りの深さにも影響します。夜中に目が覚める回数が増えている方は、夕方以降のカフェインをまず疑ってください。
鉄の吸収を妨げる/出方には個人差がある
食事の直後にお茶やコーヒーを飲むと、鉄の吸収が落ちます。更年期の前後で貧血ぎみの方は、食事と30分ほど間隔を空けるだけで変わります。
ここまで挙げてきましたが、当てはまり方は一様ではありません。自分がどちら寄りかを知っておくと、量を決めやすくなります。
同じ量でも平気な方と眠れなくなる方がいます。他人の目安をそのまま当てはめず、自分の量を見つけるほうが確実です。
アルコールと辛いものはどこまで許容できるか
結論: どちらも量より時間帯とタイミングです。アルコールは就寝の3時間前までに終える、辛いものはほてりが強い週だけ控える。この2つで日常の楽しみを削らずに済みます。
寝る直前の1杯|ほてりが出るのは飲んだ直後
アルコールは寝つきを助けるように感じますが、分解の過程で眠りの後半を浅くします。夜中に目が覚める、明け方に汗をかいて起きる。この2つがある方は、飲む時間を早めるだけで変わることがあります。
眠りとは別に、その場で出る反応もあります。
血管が広がることで、飲み始めてすぐに顔が熱くなります。この反応そのものは一時的なもので、翌日まで残るものではありません。
問題になるのは、ほてりの波がもともと強い時期に上乗せされる場合です。
辛いものは週単位で|我慢の総量を増やしすぎない
唐辛子の辛みは、実際の体温とは別に熱さの感覚を生みます。ほてりの回数が増えている週だけ控えて、落ち着いている週は気にしない。この使い分けなら続きます。
ここまで4つを見てきましたが、注意点が1つあります。
砂糖もカフェインもアルコールも辛いものも全部やめる、という進め方は、たいてい30日で崩れます。いま出ている症状に近いものから1つずつ外すほうが、結果としては先に進みます。
ホットフラッシュを強めるもの、支えるもの
結論: 熱を上げる方向のものと、体を潤す方向のものを分けて考えます。表の左に偏っている日ほど、ほてりの回数が増えます。
強める側と支える側を1枚で見る|避けきらなくてよい
| 種類 | 強めやすいもの | 支えやすいもの |
|---|---|---|
| 飲みもの | アルコール・濃いコーヒー | 常温の水・麦茶・豆乳 |
| 味つけ | 唐辛子・こしょうの効いたもの | 出汁を効かせた薄味 |
| 主食 | 菓子パン・白い砂糖の多いもの | 雑穀・いも類 |
| たんぱく質 | 脂身の多い肉・揚げもの | 大豆製品・青魚 |
| 温度 | 熱すぎるもの・氷入りの飲みもの | 常温から人肌 |
表に入れていないもので、1つ補足があります。
冷やせば楽になりそうに思われがちですが、氷入りの飲みものは一時的に体を冷やしたあと、反動で熱を戻そうとする動きを招きます。ほてりの波が繰り返す方は、常温に変えるだけで回数が減ることがあります。
この表の使い方も書いておきます。
左の列をゼロにする必要はありません。ほてりが強い週だけ右に寄せる、という使い方で十分です。
変わったかどうかは、数えると見えます。
毎日つけなくても、ほてりの回数を週ごとに数えるだけで、食事との関係が見えてきます。
大豆製品の量と、骨と血管のために足しておくもの
結論: 豆腐なら半丁、納豆なら1パック、豆乳ならコップ1杯。この量を毎日続けるのが目安で、サプリメントで上乗せする形は勧めません。あわせて更年期以降は骨量が減りやすいため、カルシウムとたんぱく質、青魚を意識します。
上限の考え方と、食品から摂るほうがよい理由
食品安全委員会は大豆イソフラボンについて、「安全な一日摂取目安量の上限値は、大豆イソフラボンアグリコンとして70から75ミリグラム」という値を示しています(食品安全委員会)。ふつうの食事で豆腐や納豆から摂る分では、この値を超えることはまずありません。
上限があるからこそ、どこから摂るかが問題になります。
サプリメントは1粒あたりの量が多く、上乗せで摂ると目安を超えることがあります。食品から摂れば、量が急に増えることはありません。
働き方には個人差がある/1つの食品に頼らない
大豆イソフラボンが体の中でどう働くかは、腸内の細菌の種類によって変わることが知られています。同じ量を食べても、感じ方が違うのはこのためです。
個人差があるぶん、選び方に幅を持たせておくほうが無理がありません。同じものばかりでは飽きが来ます。
豆腐だけ、豆乳だけと決めると飽きて続きません。納豆、味噌、豆乳、豆腐を日替わりにするほうが、結果として長く続きます。
カルシウムは1食に1品、たんぱく質を減らさない
牛乳、小魚、小松菜、豆腐。1食に1品入れるという決め方にすると、意識しやすくなります。日光に当たる時間も一緒に確保できると、吸収の面で助けになります。
同じくらい大事なものが、もう1つあります。
体重を気にして食事量を減らすと、真っ先に減るのがたんぱく質です。筋肉が落ちると代謝も骨も同時に弱くなります。1食に手のひら1枚分を目安にしてください。
青魚を週2回/極端な制限をしない
さば、いわし、あじに含まれる脂は、血管の面で働きます。缶詰でも構いません。
毎日でなくてかまいません。週の中で2回入るように献立を組むと、無理なく続きます。ここまで足す話をしてきましたが、最後に引き算の注意を書いておきます。
糖質を抜く、脂質を抜くといった極端なやり方は、更年期の時期にはすすめられません。ホルモンの材料が足りなくなり、かえって症状が重くなることがあります。
東洋医学でみる更年期の食養生
結論: 東洋医学では、更年期の不調を腎の力の低下と、上に昇った熱として捉えます。補う食材と、熱を下ろす食材を組み合わせるのが基本の考え方です。
腎を補う黒い食材と、上に昇った熱を下ろす食材
黒豆、黒ごま、ひじき、きくらげ。東洋医学では黒い食材が腎を補うと考えられており、更年期の食養生では定番です。毎日ひとさじ黒ごまを足すところから始めると続きます。
補う側とは別に、下ろす側の食材もあります。
トマト、きゅうり、緑豆、豆腐。夏場の食材が多く、ほてりが強い時期に向きます。ただし冷えやすい方が食べすぎると足元が冷えるため、加熱して使うほうが安全です。
潤いを補う食材|体質で選ぶものが変わる
山いも、白きくらげ、梨、はちみつ。乾燥した咳や、肌と目の乾きが出ている方に向きます。更年期は潤いが減る時期でもあるので、熱を下ろすだけでなく補う視点が要ります。
3つめは、乾きに向かう側です。ただし、どれを取るかは人によって変わります。
同じ更年期でも、ほてりが強い方と冷えが強い方では選ぶ食材が逆になります。すすめられた食材をそのまま試して合わないと感じたら、体質が違うと考えてください。
食事だけで足りないときの漢方薬
結論: 食事は土台ですが、症状が生活に支障を出している段階では、それだけでは追いつきません。ほてりが強いのか、いらだちが強いのか、冷えが強いのかで選ぶ漢方薬が変わります。
いらだちと気分の波が主なとき
加味逍遙散(かみしょうようさん)は、更年期の相談でもっとも使われる漢方薬のひとつです。添付文書には、効能・効果として「体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるもの」という体質の記載があります(医薬品医療機器総合機構の添付文書情報)。
のぼせが主なとき、冷えが主なとき|食事との役割の違い
顔はのぼせるのに足は冷える、肩こりや頭痛が重い。この組み合わせなら桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)のように血の巡りを動かす方向が選ばれます。
熱ではなく冷えのほうが前に出ている方もいます。
顔色が白く、疲れやすく、むくみやすい方では、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)のように補いながら水を整える方向が向きます。ほてりが目立たない更年期もあります。
3つを並べたところで、食事との関係を整理しておきます。
食事は土台を整えるもので、変化が出るまでに時間がかかります。漢方薬は症状の側から手を入れるもので、両方あると進みが早くなります。
どちらか一方だけ、という選び方をしないほうが結果は出ます。
改善症例|食事の見直しで変化が出た2例
51歳女性 桜子さん|甘いものの時間帯を変えただけで、動悸が減ったケース
夕方に必ず甘いものが欲しくなり、菓子パンを食べたあとに動悸と冷や汗が出るとご相談を受けました。昼食が軽く、夕方まで6時間空いていたことが背景にありました。昼食にたんぱく質を1品足し、甘いものは昼食の直後に移す。この2つを14日試していただき、夕方の動悸が出なくなっています。いらだちも強かったため加味逍遙散を併用し、60日で夜中に目が覚める回数も減りました。食べる量は変えていません。
48歳女性 瑠衣さん|コーヒーの時間を変えて、寝つきが戻ったケース
1日5杯のコーヒーを習慣にしており、寝つきの悪さとほてりを訴えて来店されました。急にやめると頭痛が出た経験があるとのことだったので、1週間ごとに1杯ずつ減らし、午後3時以降はカフェインを抜いたものに置き換える方法をとりました。30日で1日2杯に落ち着き、寝つくまでの時間が半分になっています。ほてりの回数も週14回から週5回まで減りました。やめるのではなく置き換えたことで、無理なく続いた例です。
よくある質問
Q. 更年期障害で絶対に食べてはいけないものはありますか?
A. 絶対に禁止というものはありません。 ほてりや動悸を強めやすいのは、まとめてとる砂糖、量の多いカフェイン、アルコール、辛いものの4つです。やめるのではなく、量と時間帯を変えるほうが続きます。
Q. コーヒーは1日何杯までなら大丈夫ですか?
A. 1日2杯から3杯が目安です。 諸外国の評価では健康な成人で1日400ミリグラムまでとされており、コーヒー1杯あたり60ミリグラムから90ミリグラムです。緑茶や紅茶の分も総量に入ることを忘れないでください。
Q. 甘いものが我慢できないのですが、意思が弱いのでしょうか?
A. 意思の問題ではありません。 女性ホルモンの減少で気分を保つ働きが弱まること、血糖の谷、睡眠の浅さの3つが重なって起こります。空腹時に単独でとらない工夫のほうが効きます。
Q. チョコレートは食べてはいけませんか?
A. カカオの割合が高いものを選べば問題ありません。 糖の量が少なく、少量で満足しやすくなります。空腹時ではなく食後に、少量をとる形にしてください。
Q. 大豆製品はサプリメントで摂ったほうが効率的ですか?
A. 食品から摂るほうがすすめられます。 サプリメントは1粒あたりの量が多く、上乗せで摂ると目安を超えることがあります。豆腐半丁、納豆1パック、豆乳コップ1杯のいずれかを毎日続ける形で十分です。
Q. 食事を変えてどのくらいで変化が出ますか?
A. 甘いものの時間帯は14日、全体の食事の見直しは60日から90日が目安です。 ほてりの回数を週単位で数えておくと、変化の方向が読み取れます。
まとめ|やめる話ではなく、いつどれだけの話にする
更年期の食事は、禁止のリストにすると続きません。
- 強めやすいのは、まとめてとる砂糖・量の多いカフェイン・アルコール・辛いものの4つ
- 甘いものが欲しくなるのは仕組みの問題。空腹時に単独でとらないだけで谷が浅くなる
- コーヒーは1日2杯から3杯、午後3時を境にすると眠りへの影響が減る
- 大豆製品は食品から。豆腐半丁、納豆1パック、豆乳1杯のいずれかを毎日
- ほてりの時期は熱を下ろす食材、乾きの時期は潤す食材と、体質で選ぶものが変わる
食事は土台を整えるもので、変化が出るまでに時間がかかります。症状が生活に支障を出している段階なら、漢方薬を並行させるほうが早く進みます。れいわ漢方薬局では、ほてりの出方と体質を確かめたうえで、食事の優先順位と合う漢方薬をご提案しています。


