「常に喉に何かが張り付いていて、一日中それが気になる」「耳鼻科では異常なしと言われたが、確かに鼻水が落ちてくる」――後鼻漏についてのご相談は、当薬局でも特に切実なものが多い領域です。
結論からお伝えすると、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は後鼻漏に用いられる漢方薬のひとつです。ただし合うのは、鼻汁が粘って色がついている、症状が何年も続いている、体力が保たれているという条件が揃った場合です。さらさらの鼻水が落ちるタイプには、別の漢方薬が向きます。
後鼻漏がやっかいなのは、本人にしか分からない症状だという点です。検査でも見えにくく、周囲にも伝わりにくい。相談先が見つからないまま何年も抱えている方が少なくありません。
この記事では、後鼻漏が起きる仕組み、荊芥連翹湯が向くタイプ、向かないタイプ、他の漢方薬との使い分け、期間の目安までを整理します。
後鼻漏とは何が起きている状態か
結論: 後鼻漏は、鼻の奥から喉へ鼻汁が流れ落ちる状態を指します。誰にでも起きている生理的な現象が、量や粘りの変化で自覚されるようになったものです。
もともと誰でも起きている|検査では見えにくい
鼻の粘膜は1日に一定量の分泌液を出しており、その多くは自然に喉のほうへ流れています。健康な状態では自覚されません。
自覚されるようになるのは、量が増えたか、粘りが強くなったか、あるいは粘膜が敏感になったときです。後鼻漏という病気があるのではなく、状態の呼び名だという点は押さえておく価値があります。
名前が付くと治らないものに思えますが、状態を指す言葉なので、状態が変われば外れます。
そのため、調べても引っかからないことがあります。
耳鼻科で診てもらっても異常なしと言われることがあります。粘膜の状態や分泌の量は、画像や数値に出にくいためです。
異常なしという結果は、症状がないという意味ではありません。当薬局にも、検査では問題ないと言われたが確かに困っているというご相談が寄せられます。
重いものが隠れていないと確かめられた、という意味では価値のある結果です。そのうえで、残った困りごとをどう扱うかという段階に進みます。
生活への影響が大きい
喉の張り付き、痰がからむ感じ、咳払いの繰り返し、朝の不快感。一つひとつは小さくても、一日中続くと消耗します。
人と話すときに気になる、寝つけないという形で生活に影響が出ることもあります。
会議中や電車の中で咳払いができず、我慢しているうちに喉がさらに気になる。この形を訴える方は多くいらっしゃいます。
痛みや発熱がないぶん、周囲に伝わりにくいのも負担になります。
荊芥連翹湯が向くタイプと、向かないタイプ
結論: 粘って色のついた鼻汁、何年も続いている、体力が保たれている。この3つが揃うほど合いやすくなります。逆にさらさらの鼻水、冷え、胃腸の弱さがあるなら、別の方向を考えます。
| 項目 | 荊芥連翹湯が向く | 向かない |
|---|---|---|
| 鼻汁の性状 | 粘る、黄色や緑がかる | さらさら、透明 |
| 期間 | 何年も続いている | 数日〜数週間 |
| 体力 | 中等度以上 | 極端に落ちている |
| 冷え | ない、または軽い | 手足が冷たい |
| 皮膚症状 | 吹き出物を伴う | 皮膚は問題ない |
粘って色がついた鼻汁・続いてきた長さ・皮膚の症状
もっとも分かりやすい手がかりです。喉に落ちてくるものが粘っこく、黄色や緑がかっているなら、荊芥連翹湯の想定に近くなります。
漢方では、この状態を熱がこもった結果と捉えます。冷ます方向の漢方薬が合う理由がここにあります。
確かめ方は単純で、かんだあとのティッシュを見るだけです。朝いちばんが最も分かりやすく、日中は薄まっていることがあります。
2つめは、抱えてきた長さです。
医薬品医療機器総合機構が公開している医療用漢方製剤の添付文書では、荊芥連翹湯の効能・効果は「蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび」と定められています。
慢性という言葉が2回出てくるとおり、長く続いた状態が対象です。数日前に始まった症状には向きません。
かぜのあとに一時的に出ているものなら、そちらが治まれば消えます。何年も同じ状態が続いているかどうかが、選ぶ前の分かれ目です。
3つめは、鼻から離れた場所の手がかりです。
額やこめかみに吹き出物が出ている、皮膚の色が浅黒い、手足の裏に汗をかく。こうした特徴があると、より合いやすくなります。
後鼻漏と吹き出物を同時に抱えている方は珍しくありません。上半身にこもった熱という共通の背景があるためです。
本人は別々の悩みとして捉えていることが多く、皮膚のほうは相談の場で聞かれて初めて出てきます。両方あるなら、選ぶ理由が一つ増えます。
さらさらの鼻水・冷え・胃腸の弱さ|向かない3つ
水のように透明で粘りのない鼻汁が落ちてくるなら、熱ではなく冷えや水分の停滞が背景にあります。
この場合、冷ます方向の荊芥連翹湯は逆効果になりえます。温めて水をさばく方向の漢方薬が候補になります。
同じ後鼻漏という言葉で語られていても、向かう方向が正反対です。粘りがあるか、水のようかを見るだけで分けられます。
季節や時間帯で入れ替わる方は、多いほうで判断する形になります。
2つめは、体が冷えている場合です。
手足が冷たい、寒がり、温かい飲み物を好む。こうした方が飲むと、冷えが進むことがあります。
荊芥連翹湯の骨格は熱を冷ますことにあるため、もともと冷えている体には向きません。自分では冷えていないつもりでも、足を触ると冷たいという方が実際にいらっしゃいます。感覚ではなく、触って確かめる形が確実です。
夏でも温かい飲み物を選ぶ、靴下を履かないと眠れない。こうした様子が並ぶなら、方向を変える場面です。
3つめは、消化のほうが弱い場合です。
17種類の生薬が入っており、冷ます生薬も多く含まれます。飲むともたれる、食欲が落ちる、軟便になるという方は、先に胃腸を整えるほうが確実です。生薬の数が多い漢方薬ほど、胃への負担も大きくなります。冷ます生薬はとくに、胃の動きを落とす方向に働きます。
順番を逆にすると、鼻の症状は多少動いても食事が細くなります。土台ができてから戻るほうが、結局は早く進みます。
アレルギーが背景にある
花粉やハウスダストによるアレルギー性鼻炎が背景にある場合、まずそちらへの対応が必要です。原因を取り除かないまま体質だけを扱っても、押し戻されます。
対象となるのは、アレルギーの要素が薄く、慢性の炎症が主体の場合です。
季節が決まっている、目のかゆみを伴う、外出した日に強くなる。こうした特徴があれば、まず検査を受けるほうが早く進みます。
似た漢方薬との使い分け
結論: 後鼻漏に使われる漢方薬は複数あります。鼻汁の性状と、体が冷えているか熱がこもっているかで分かれます。
辛夷清肺湯・葛根湯加川芎辛夷との違い
どちらも慢性の鼻の症状に使われます。辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)は鼻に絞って働き、荊芥連翹湯は皮膚まで含めた広い範囲を扱います。
鼻の症状だけなら辛夷清肺湯、鼻と肌の両方があるなら荊芥連翹湯。この分け方が実務的です。
両方に当てはまる時期と、片方だけの時期がある方もいらっしゃいます。その場合は、いま困っているほうから選ぶ形になります。
温める側にも、鼻に向かうものがあります。
こちらは体を温めて発散させる方向です。冷えがある方の鼻づまりに向きます。
荊芥連翹湯とは真逆の性格なので、冷えているか熱がこもっているかで選び分けます。
こちらは鼻づまりが前面にあり、肩や首のこわばりを伴う方に向かいます。かぜのひき始めに使う漢方薬を土台にしているぶん、体を温める性格がはっきりしています。
名前に同じ鼻の生薬が入っている点は共通しているので、そこだけで選ぶと取り違えます。粘りと色を見るほうが確実です。
小青竜湯との違いと、半夏厚朴湯が候補になる場合
水のようにさらさらした鼻水、くしゃみが止まらないという状態に向きます。急性期やアレルギーの要素が強い場合の選択肢です。
荊芥連翹湯が対象にするのは、粘って色のついた鼻汁のほうです。
同じ鼻の症状でも、出ているものの質で分かれます。透明でさらさらならこちら、粘って色がついていれば荊芥連翹湯という分け方です。
花粉の時期だけこちらに切り替え、落ち着いたら戻すという使い方をされる方もいらっしゃいます。
鼻ではなく喉が主役のときは、別の枠になります。
喉の異物感が強く、鼻汁そのものは多くないという場合は、気のめぐりの問題として別の漢方薬が候補になります。
後鼻漏だと思っていたものが、実は喉の締めつけ感だったというケースもあります。ここは相談のうえで切り分けます。
見分けの手がかりは、ティッシュに実際に出るものがあるかどうかです。落ちてくる感じはあるのに、かんでも出ないなら、鼻ではなく喉の側を疑います。
効果が出るまでの期間と、記録のとり方
結論: 慢性の状態が対象なので時間がかかります。最初に変わるのは鼻汁の性状で、30日前後が目安です。自覚症状のため、記録がないと変化を判断できません。数えられる形にしておきます。
最初に変わるのは鼻汁の性状|90日から180日を見ておく
多くの方が最初に気づくのは、喉に落ちてくるものの質が変わることです。粘って黄色かったものが、透明でさらさらしたものに変わる。
量そのものが減るより先に、中身が変わります。この順序を知らないと、変化がないと判断してしまいます。
量が減るのはそのあとで、早い方でも1か月以上かかります。最初の1か月は、色と粘りだけを見ておく形が向いています。
そのあとの見通しも、先に持っておきます。
対象が何年も続いた状態なので、90日では足りないことがあります。5年続いた後鼻漏なら、180日を見ておくほうが現実的です。
おおよそ、悩んできた年数に比例すると考えるほうが実際に近いです。
この見通しを始める前に持っておくと、途中で迷わずに済みます。3か月で判断すると決めていた方が、そこで見限ってしまうのが惜しいところです。
長くかかるぶん、記録がないと変化に気づけません。
判断の区切り
90日を過ぎても何ひとつ変化がない場合は、合っていない可能性を考えます。ここでいう何ひとつには、鼻以外の変化も含みます。
後鼻漏は動かないが吹き出物が減った、というのも方向が合っている証拠です。もう少し続ける余地があります。
逆に、鼻も皮膚も胃腸も何も動いていないなら、見立てそのものを組み直す場面です。90日というのは、その判断ができるだけの材料がそろう長さでもあります。
記録する3項目|週1回・季節・皮膚の状態も添える
飲み始めるときに、次の3つを決めておきます。
- 鼻汁の色と粘り:透明か黄色か、さらさらか粘るか。最初に動く指標です
- 咳払いの回数:1日のうち、気になって咳払いした回数をおおまかに数えます
- 朝の張り付き:起床時の喉の状態を5段階でつけます
この3つだけで足ります。項目を増やすと続かなくなるので、少ないほうを選ぶ形が向いています。数字にしておくと、半年前と比べられます。
頻度は、そこまで上げなくて構いません。
毎日つけると、日々のばらつきに振り回されます。曜日を決めて週1回残せば十分です。
後鼻漏は日によって波があります。今日は良い、明日は悪いという変動を毎日記録すると、そちらに気を取られて全体の流れが読めなくなります。
週1回なら、半年で26行にしかなりません。並べて見たときに、上がっているのか下がっているのかが一目で分かります。書くのは1行で足りるので、続けるための負担も小さく収まります。
もう1つ、添えておきたい欄があります。
慢性の鼻の症状は季節の影響を受けます。花粉の時期、梅雨、乾燥する冬。去年の同じ時期と比べるという見方ができると、判断の精度が上がります。3か月前と比べて悪くなっていても、季節が動いていれば単純には比べられません。冬に悪化する方が秋と冬を比べれば、当然そう出ます。
1年ぶん記録がたまると、この補正ができるようになります。それまでは、季節の欄を書き添えておくだけで足ります。
鼻の外に出ているものも、同じ紙に残します。
吹き出物の数も並べて書いておくと、両方の関係が見えます。片方が動いていれば、方向は合っています。
数え方は、額とこめかみにいくつあるかで足ります。写真に残しておくと、あとから比べられます。
鼻のほうが動かない時期でも、皮膚が減っていれば続ける理由になります。この記録があるかどうかで、90日目の判断が変わります。荊芥連翹湯は皮膚まで含めて扱う漢方薬なので、両方を並べる意味がここにあります。
生活面で見直したいこと
結論: 後鼻漏は生活の影響を受けやすい症状です。漢方薬だけでなく、粘膜への負担を減らす方向も同時に動かします。
乳製品と甘いものを控え、鼻を強くかまない
粘りのある鼻汁が出ているときは、乳製品と甘いものが影響することがあります。漢方では、これらが体に湿を生むと考えます。
すべてやめる必要はありません。毎日を週2回にするだけでも差が出ます。
自分に影響しているかどうかは、1つずつ外して7日ほど様子を見れば分かります。同時に2つ外すと、どちらが効いたのか読めません。
関係がなければ、戻して構いません。
口に入れるものの次は、扱い方です。
強くかむと粘膜を傷めます。傷んだ粘膜はさらに分泌を増やすため、悪循環になります。
片方ずつ、軽く。この形に戻すだけで楽になる方がいます。
両方を一度に強くかむと、耳のほうにも圧がかかります。粘りが強くて出にくいときは、蒸しタオルを鼻に当ててからかむと楽になります。
出そうとして力を入れるほど、粘膜は荒れます。出ないときは無理に出さず、時間を置くほうが結果的に早く済みます。
部屋の湿度を保ち、咳払いを減らす
乾燥すると粘膜が守ろうとして分泌を増やします。冬に悪化する方は、湿度が影響していることがあります。
目安は50から60パーセントです。湿度計を1つ置いておくと、体感に頼らずに済みます。
加湿器がなくても、濡れたタオルを部屋に干す、洗濯物を室内に干すといった方法で上がります。寝室だけでも保てれば、朝の張り付きは変わります。エアコンの暖房を使う時期は、とくに下がりやすいところです。
無意識にしている動作も、負担になります。
気になって咳払いを繰り返すと、喉の粘膜が荒れます。荒れた粘膜はさらに違和感を生みます。
咳払いで楽になると思われがちですが、短期的に楽になっても長期的には症状を強めます。水を一口飲む形に置き換えると、負担が減ります。
手元に水を置いておくだけで、置き換えは進みます。回数を数えておくと、減っているかどうかも分かります。習慣になっているぶん、意識しないと気づけない動作でもあります。
就寝時の姿勢と、水分のとり方
横になると鼻汁が喉のほうへ流れやすくなります。夜間や起床時に強く感じる方は、枕を少し高くするだけで変わることがあります。
高くしすぎると首に負担がかかるため、上半身全体をゆるやかに起こす形が無理のない範囲です。
枕を重ねるより、敷布団やマットレスの下に何かを挟んで傾けるほうが首に無理がかかりません。段ボールやたたんだ毛布で足ります。
飲む量そのものも、質に関わります。
水分が足りないと分泌液の粘りが強まり、喉に張り付きやすくなります。一度に大量に飲むより、少量をこまめにとるほうが粘膜には向きます。
冷たいものより常温か白湯(さゆ)のほうが、体を冷やさずに済みます。荊芥連翹湯を飲んでいる時期はとくに、冷たい飲み物を減らしておくと冷えの副作用も避けやすくなります。
手元に小さめのコップを置いておくと、自然に回数が増えます。
後鼻漏と間違えやすい3つの状態
結論: 喉の違和感がすべて後鼻漏とは限りません。原因が違えば向かう漢方薬も変わるため、切り分けが要ります。
喉の締めつけ感と、逆流性食道炎による違和感
鼻汁は落ちていないのに、喉に何か詰まっている感じが続く。漢方では気のめぐりの滞りとして捉える状態です。
緊張すると強くなる、リラックスすると軽くなるという波があれば、こちらの可能性が高くなります。荊芥連翹湯ではなく、気のめぐりを整える方向の漢方薬が候補になります。
休みの日には気にならない、という方はこの形に当てはまります。場面によって変わるかどうかが、いちばん分かりやすい手がかりです。
下から来ているものもあります。
胃から上がってくるものが喉を刺激している場合があります。食後に強くなる、横になると悪化する、胸やけを伴うという特徴があれば疑います。
この場合は胃の側への対応が先です。喉の症状だから鼻の薬という発想になりがちですが、来ている方向が逆のことがあります。
夕食から就寝までの時間を3時間空けるだけで、朝の状態が変わることがあります。試して差が出れば、そこが原因だったと分かります。
口呼吸による乾燥と、切り分けの手がかり
寝ているあいだに口が開いていると、朝に喉が張り付きます。これは分泌の問題ではなく乾燥の問題です。
起床時だけ強く、日中は気にならないという場合は、こちらを疑う価値があります。
朝起きたときに口の中が乾いている、唇が乾いているという点も同じ側の目印です。
寝ているあいだのことなので自分では分かりませんが、いびきを指摘されたことがあるなら口が開いています。部屋の湿度を上げるだけでも、朝の張り付きは軽くなります。
3つのどれに当たるかは、順に潰すと分かります。
判断がつかないときは、次の順で確かめます。
- 鼻汁が実際に落ちているか:ティッシュに出るものがあるかを見ます
- 時間帯の偏りはあるか:朝だけなら乾燥、食後なら胃を疑います
- 緊張との関係はあるか:場面で変わるなら気のめぐりを疑います
この3つで見当がつかない場合は、複数が重なっていることがあります。その場合は、いちばん強く出ているものから手をつける形になります。
経過中に起こりうる変化
結論: 飲み始めてから落ち着くまでのあいだに、いくつか予想しておきたい変化があります。知っておくと途中でやめずに済みます。
一時的に鼻汁が増える/長く続けると冷えが出る
荊芥連翹湯には外へ発散させる生薬が含まれます。飲み始めに、たまっていたものが動いて量が増えたように感じることがあります。
もともと出ていた場所からで、1〜2週間で落ち着くなら様子を見る余地があります。ただし発熱や強い痛みを伴う場合は中止して相談してください。
増えた期間と量を書き留めておくと、あとで判断しやすくなります。落ち着くまでの日数は人によって差があります。
長く続けたときに出るものは、また別です。
骨格が熱を冷ますことにあるため、長く飲み続けると冷えが出ることがあります。手足が冷たくなった、下痢しやすくなったという変化は見直しの合図です。
とくに冬場は、夏と同じ量では冷えすぎることがあります。季節をまたぐときは確かめる機会になります。
季節で量を変える方も実際にいらっしゃいます。半年に一度、まだ必要かどうかを見直す機会を持っておくと惰性を防げます。
胃にこたえる/皮膚のほうが先に動く
17種類の生薬が入っているぶん、空腹時の刺激を強く感じる方がいます。食前から食後に移す、白湯に溶かして少しずつ飲むといった調整で収まることがあります。
それでも続くようなら、胃腸を守る生薬を足した組み立てを検討します。
我慢して続けると、たいてい途中でやめることになります。飲み方を変えるだけで収まる場合が多いので、早めに伝えるほうが早く進みます。
変化が現れる場所は、鼻とは限りません。
鼻の症状より先に、吹き出物が減ることがあります。これは方向が合っている証拠です。
鼻だけを見ていると変化に気づけないため、両方を記録しておく意味がここにあります。皮膚は目で見えるぶん、変化がはっきり分かります。鼻の症状は感覚に頼るので、良くなっていても気づきにくいところです。
吹き出物が減っている時期に鼻が動いていないなら、やめるのではなく続ける場面です。順番が来ていないだけということがあります。
市販品と煎じ薬の選び分け
結論: 後鼻漏は年単位で付き合う症状なので、量が足りているかどうかが結果を大きく左右します。
市販品は量が少ないことがある|煎じ薬なら調整できる
一般用医薬品は医療用より生薬の量が少なく設定されていることがあります。同じ商品名でもメーカーによって量が異なります。
体格の大きい方が最小量の製品を選ぶと、90日飲んでも届かないことがあります。購入前に含有量を確かめる価値があります。
箱の裏に1日量あたりの生薬の量が書かれています。医療用と比べたい場合は、薬剤師に聞けばその場で分かります。
量だけでなく、中身を動かせる形もあります。
荊芥連翹湯は17種類と生薬が多いため、体質に合わない要素が混ざることがあります。煎じ薬なら、胃腸が弱ければ守る生薬を増やす、冷えが気になれば冷ます生薬を減らすといった手が入れられます。
生薬が多い漢方薬ほど、この調整の価値が出ます。当薬局でも、荊芥連翹湯は煎じ薬でご提案する機会が多いほうです。
既製品で3か月動かなかった方が、組み替えて動くことがあります。
後鼻漏には調整の余地が大きい
後鼻漏は、鼻だけの問題ではなく喉や胃の状態も絡みます。喉の乾燥が強いなら潤す生薬を、胃から上がってくる要素があるならそちらの生薬を、というように足せます。
既製品では手が入らない部分に届くのが、煎じ薬の利点です。
途中で組み替えられる点も違います。季節が変わって冷えが出てきたら、そこだけ減らすという手が使えます。同じ名前の漢方薬でも、中身が固定されていないということです。
まずは試してから|費用の面も判断材料になる
初めての方は、エキス剤で合うかどうかを確かめる段階から始めて構いません。最初から煎じ薬でなければ意味がないと思われがちですが、方向が合っているかを見るだけならエキス剤で足ります。
手ごたえはあるが物足りない、あるいは胃にこたえるという段階になったら、切り替えを検討する形が現実的です。
判断の順序としては、まず30日で鼻汁の性状が動くかどうかを見ます。動いているなら方向は合っているので、そこから先の速さは量の問題です。まったく動かないなら、量を増やしても同じなので体質の見立てから見直します。
続ける前提なら、総額のほうも見ておきます。
医療用のものは保険適用となる場合があり、費用の面では負担が軽くなります。後鼻漏は年単位で付き合う症状なので、この差は小さくありません。
一方、煎じ薬は体質に合わせて組めるぶん、届くまでの時間を短縮できる可能性があります。費用と時間のどちらを取るかは、症状の長さと生活への影響で決めることになります。
まず保険の範囲で試して、動かなければ組み替えるという順序もあります。
改善症例|後鼻漏が変わった2例
結論: 後鼻漏は自覚症状のため経過が見えにくいのですが、記録があると変化がはっきりします。当薬局で伺った2つのケースをご紹介します。
ケース1:30代女性|10年続いた喉の張り付き
症状: 中学生の頃から鼻が詰まり、喉に鼻水が落ちる状態が10年以上。鼻汁は黄色く粘り、額とこめかみに吹き出物が絶えませんでした。皮膚の色は浅黒く、手のひらがじっとり湿っている状態です。
アプローチ: 鼻と肌を別々に扱わず、荊芥連翹湯の煎じ薬を朝晩。あわせて夜の揚げものと乳製品を週2回までに減らし、咳払いを水を飲む形に置き換えていただきました。
経過: 30日で鼻汁が黄色から透明に変わり、90日で喉に落ちる感覚が大きく減りました。額の吹き出物も同じ時期に落ち着いています。
ケース2:50代男性|さらさらタイプで方向を変えた
症状: 3年続く後鼻漏。ただし喉に落ちてくるのは透明でさらさらした鼻水で、手足の冷えを訴えておられました。市販の荊芥連翹湯を90日試したが変化がないとのことです。
アプローチ: 鼻汁の性状と冷えから、熱ではなく水分の停滞が背景にあると判断しました。荊芥連翹湯を中止し、温めて水をさばく方向の煎じ薬へ切り替えています。
経過: 30日で朝の張り付きが軽くなり、90日で咳払いの回数が半分以下になりました。同じ後鼻漏でも方向がまったく違うという例です。
よくある質問
Q. 耳鼻科で異常なしと言われましたが飲んでもいいですか?
A. 検査で見えないことと、症状がないことは別です。粘膜の状態や分泌の量は画像や数値に出にくいため、異常なしと言われることは珍しくありません。ただし体質が合っているかは別途の判断になりますので、鼻汁の性状と冷えの有無を確かめたうえで選ぶのが確実です。
Q. さらさらの鼻水が落ちる場合でも使えますか?
A. おすすめしません。さらさらで透明な鼻汁は、熱ではなく冷えや水分の停滞が背景にあることが多く、冷ます方向の荊芥連翹湯とは合いません。温めて水をさばく方向の漢方薬が候補になります。
Q. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?
A. 90日から180日を見ておいてください。最初に変わるのは鼻汁の性状で、粘って黄色かったものが透明になるという変化が30日前後で出ることがあります。量が減るより先に、中身が変わります。
Q. 耳鼻科の薬と一緒に飲めますか?
A. 抗菌薬や点鼻薬との併用は、多くの場合支障ありません。外から炎症を抑えながら内側から体質を整えるという組み合わせは、当薬局でもよくご提案します。耳鼻科にかかっている場合は、漢方薬を飲んでいることを伝えておくと担当医も判断しやすくなります。
Q. 症状が消えたらすぐやめてよいですか?
A. すぐにやめると戻ることがあります。慢性の炎症は、表面が落ち着いても体質はまだ移行の途中だからです。落ち着いてから1〜2か月続けて、そのうえで段階的に減らしていく形が安全です。
まとめ
荊芥連翹湯は後鼻漏に用いられる漢方薬のひとつですが、合うタイプは限られます。
- 向くのは、粘って色のついた鼻汁、何年も続いている、体力が保たれている場合
- 向かないのは、さらさらの鼻水、冷えがある、胃腸が弱い場合
- 皮膚の吹き出物を伴っているなら、より合いやすい
- 最初に変わるのは量ではなく鼻汁の性状。30日前後が目安
- 全体では90日から180日を見ておく
いちばんお伝えしたいのは、喉に落ちてくるものが粘るか、さらさらかを確かめるということです。この一点だけで、荊芥連翹湯が候補に入るかどうかがかなり絞り込めます。同じ後鼻漏という言葉でも、中身が正反対のことがあるためです。
後鼻漏は本人にしか分からない症状で、相談先を見つけにくい領域です。当薬局では、鼻汁の性状と体質を伺ったうえで、体に合わせた煎じ薬をお作りしています。公式LINEから気軽にご相談いただけますので、どこにも相談できずにいるときの入口としてお使いください。


