「軟膏を塗れば治ると思って、もう2年買い続けています」「病院に行くのが恥ずかしくて、ずっとそのままです」――痔のご相談で、最初に伺うことの多い2つです。
痔には3種類あり、市販薬で治せるものと、手術でなければ治らないものが混ざっています。この見分けがつかないまま軟膏を続けると、治せたはずのものが治りにくい段階へ進みます。
れいわ漢方薬局では、痔のご相談で必ず便通の状態を伺います。硬い便でも水様便でも肛門は傷むため、痔の手当てと便通を整えることは、いつも同時に進める必要があるからです。
この記事では、3種類の見分け方、それぞれの治し方、市販薬の限界、病院でされること、便通を整える漢方薬までを扱います。日々ご相談をお受けしている薬剤師の立場から解説します。
痔は3種類|まず自分がどれか
結論: 痔は切れ痔・いぼ痔・痔瘻の3つに分かれます。治し方が違うため、まずどれかを絞るところから始めます。
3つの違いを整理する
同じ痔という言葉でまとめられていますが、起きていることは別です。皮膚が切れているのか、血管がうっ血しているのか、細菌が入って膿がたまっているのか。
痛み方と血の付き方で、ある程度は見分けがつきます。ただし自己判断で確定させる必要はありません。腫れと発熱があれば、種類に関わらず受診が先です。
見分けの手がかりで最も分かりやすいのは、痛むタイミングです。排便のときだけ鋭く痛むなら切れ痔、座っていても痛むなら外側のいぼ痔か痔瘻を考えます。
| 種類 | 何が起きているか | 痛み | 血 | 治り方 |
|---|---|---|---|---|
| 切れ痔(裂肛) | 肛門の皮膚が切れる | 排便時に鋭く痛む | 紙に付く少量 | 便通が整えば治る |
| いぼ痔(痔核) | 肛門の血管がうっ血して膨らむ | 内側は痛まないことが多い | ぽたぽた落ちることも | 軽ければ薬と生活で戻る |
| 痔瘻(じろう) | 細菌が入って膿がたまり、管ができる | 腫れて強く痛む・熱が出る | 膿が出る | 手術が原則 |
いぼ痔は、できる場所で2つに分かれる
いぼ痔は、肛門の内側にできる内痔核と、外側にできる外痔核に分かれます。境目は歯状線(しじょうせん)と呼ばれる線です。
内側には痛みを感じる神経が通っていないため、内痔核は出血で気づくことが多くなります。外側は痛みを感じるので、腫れて痛むのは外痔核です。痛くないのに血が出る場合、内痔核を疑います。
この違いは治療の選び方にも影響します。内側は注射で固める方法が使えますが、外側は痛みを感じる場所なのでその方法が向きません。
3つが同時に起きることもある
下痢で切れ痔になり、痛みで排便を我慢して便が硬くなり、いきんでいぼ痔ができる。この順にたどる方は珍しくありません。
このため、1つが治っても別のものが残ることがあります。治りきらないと感じるときは、種類が変わっていないかを見直します。
症状の出方が変わったときも同じです。以前は排便のときだけ痛んだのに、いまは座っていても痛む。この変化は、別の種類が加わったサインであることがあります。
切れ痔の治し方
結論: 切れ痔は、便通が整えば治ります。薬で傷を治すより、傷を作らない状態にする方が近道です。
なぜ治りにくいのか
切れた部分が治りにくいのは、肛門の筋肉が緊張して血流が落ちるためです。痛みで締まり、締まるから治らない、という輪になります。
さらに、痛いから排便を我慢する。すると便が硬くなり、次にまた切れる。この2つの輪が重なると、市販薬だけでは抜けにくくなります。
軟膏が効かないのではなく、傷を作り続けている側に手が入っていない状態です。塗る薬と便通の手当ては、どちらか片方では足りません。
温めて血流を戻す
湯船に10分ほど浸かって温めると、筋肉の緊張がゆるみます。シャワーだけで済ませている方は、ここを変えるだけで治りが変わることがあります。
夏場ほど抜けやすい習慣です。冷房で下腹部が冷えている時期こそ、湯船に入る意味があります。1日1回、10分。これだけで痛みの出方が変わったという方は多くいます。
湯温は熱すぎない方が向きます。42度を超えると刺激になるため、40度前後でゆっくり浸かる方が血流は戻ります。
便を軟らかくする
硬い便が出る限り、傷は繰り返し作られます。水分と食物繊維を増やし、必要なら便を軟らかくする薬を使います。
ここで刺激性の下剤を選ばないことが要点です。腸を刺激して押し出すタイプは、痛みを強めることがあります。便に水分を含ませるタイプの方が向きます。
食物繊維も種類で分かれます。水に溶けるタイプは便を軟らかくしますが、溶けないタイプを増やすと量が増えて硬くなることがあります。切れ痔の時期は、溶けるタイプから増やします。
慢性化すると狭くなる
切れ痔を繰り返すと、傷が硬い組織に変わり、肛門が狭くなることがあります。ここまで進むと、軟膏では戻りません。
目安は3か月です。市販薬と生活の見直しで3か月変わらないなら、受診に切り替えてください。狭くなる前なら、手当ての規模は小さくて済みます。
狭くなってきたサインは、便が細くなることです。以前より明らかに細い便が続いているなら、日数を待たずに相談する段階に入っています。
いぼ痔の治し方
結論: 軽いいぼ痔は、薬と生活の見直しで戻ります。脱出して戻らない段階になると、手術を含めた治療が必要です。
うっ血を減らすことが中心
いぼ痔は、肛門周囲の血管がうっ血して膨らんだ状態です。長時間同じ姿勢で座る、いきむ、冷える。この3つが重なると悪化します。
デスクワークの方は、1時間に1回立つだけで違います。座面が硬い場合は、クッションを1枚敷くと夕方の違和感が変わります。
立ち仕事の方も対象です。同じ姿勢が続くこと自体が血をためるので、座るか立つかより、動かない時間の長さが影響します。
排便時間を3分以内にする
トイレでスマートフォンを見ながら10分座る。この習慣がある方は、まずここからです。座っている時間そのものが、肛門に血をためます。
目安は3分です。出なければ一度立って、次の便意を待つ方が結果的に早く出ます。いきみ続けるのは、いぼ痔にとって最も負担の大きい行為です。
スマートフォンを持ち込まないだけで、3分は自然に守れます。時間を計るより、持ち込むものを減らす方が続きます。
進み具合で治療が変わる
内痔核は、脱出の程度で4段階に分けられます。出血だけの段階、いきむと出て自然に戻る段階、手で押し込む必要がある段階、押しても戻らない段階です。
前の2段階なら、薬と生活の見直しで戻ることが多くあります。手で戻す段階からは、医療機関での治療が現実的な選択肢に入ります。
自分がどの段階かは、いきんだあとに何が起きるかで分かります。何も出ないのか、出て自然に戻るのか、押さないと戻らないのか。この3つで見当がつきます。
血が出る量で判断しない
「便器が赤くなるほど出ました」というお話を伺うことがあります。驚く量に見えても、内痔核からの出血であれば量ほど深刻ではないことが多くあります。
一方で、量が少なくても黒っぽい血なら、胃や小腸からの出血を疑います。色の方が量より情報を持っています。赤いか黒いかを覚えておいてください。
もう1つ見るのは、便に混ざっているか、便の表面に付いているかです。表面に付くだけなら肛門に近い出血、混ざっているならもっと奥を考えます。
痔瘻の治し方|手術が原則
結論: 痔瘻は自然には治らず、手術が原則です。市販薬でも漢方薬でも、できた管が消えることはありません。
どうやってできるのか
肛門の内側には、肛門陰窩(こうもんいんか)と呼ばれる小さなくぼみが並んでいます。ここに便中の細菌が入ると、周囲に膿がたまります。これが肛門周囲膿瘍です。
膿がたまった状態が進むと、皮膚の方へ抜ける管ができます。これが痔瘻です。日本大腸肛門病学会の『肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン』でも、この経路が痔瘻の主な成り立ちとして示されています。
下痢が続く人に起きやすい
くぼみは小さいため、固形の便は入りません。入り込めるのは水様便です。痔瘻は、便秘の人より下痢が続いている人に多いのはこの構造によります。
男性に多いとされていますが、下痢が背景にある場合は性別に関係なく起こります。
下痢が続いている自覚が無い方でも、1日2〜3回の軟便が習慣になっていることがあります。ご自身では下痢と呼んでいない回数が、くぼみに便が入る機会を作っています。
腫れて熱が出たらその日に受診
肛門周囲膿瘍の段階では、強い痛みと腫れ、そして発熱が出ます。座れないほど痛む、38度前後の熱が出るという状態なら、その日のうちに肛門科へ行ってください。
膿がたまっている段階で切開すれば、そこで済むことがあります。放置して管ができると、手当ての規模が変わります。
熱が出るため、風邪と間違える方もいます。座ると痛む、片側だけ腫れているという特徴があれば、肛門の側を疑ってください。
膿が出て楽になっても、治っていない
自然に破れて膿が出ると、痛みが引きます。治ったと感じてそのままにする方がいますが、管は残っています。
この時期に受診をやめてしまうのが、いちばん惜しい判断です。時間が経つほど管が枝分かれして複雑になり、手術の規模も大きくなります。
腫れと膿を何度も繰り返している方は、その都度おさまっているのではなく、同じ管が詰まっては破れているだけということがあります。
市販薬で治るもの・治らないもの
結論: 市販薬は、切れ痔と軽いいぼ痔の症状を抑えるのに向きます。痔瘻には効きません。
種類ごとの向き不向き
市販薬に期待できる範囲は、種類によってはっきり分かれます。症状を抑えるところまでか、治るところまでか。
痔瘻だけは、市販薬を使い続けることが受診の遅れに直結します。腫れと熱を繰り返しているなら、薬局の棚ではなく肛門科が行き先です。
いぼ痔は、脱出の段階で扱いが分かれます。出血だけ、いきむと出て自然に戻る段階までは市販薬と生活の見直しで戻ることが多く、手で押し込む段階からは医療機関の治療が現実的になります。
| 種類 | 市販薬の役割 | どこまで期待できるか |
|---|---|---|
| 切れ痔 | 痛みと炎症を抑える | 便通が整えば治る。3か月が区切り |
| いぼ痔(軽度) | 出血と腫れを抑える | 生活の見直しと合わせれば戻る |
| いぼ痔(脱出する) | 症状の緩和のみ | 手で戻す段階からは医療機関へ |
| 痔瘻 | 効果は期待できない | 手術が原則。受診が遅れるだけ |
軟膏と坐薬の使い分け
外側の痛みが中心なら軟膏、内側からの出血が中心なら坐薬が向きます。両方の性質を持つ注入軟膏もあり、迷ったときはこちらでも構いません。
薬局で選ぶときは、症状の場所と、痛みか出血かのどちらが強いかを伝えると絞りやすくなります。この2つで、棚の中の選択肢はかなり減ります。
ステロイドを含むものと含まないものがある点も、伝えると分けてもらえます。長く使う前提なら、含まないものを選ぶ考え方もあります。
期間を先に決めておく
市販薬を2週間使って変わらないなら、受診に切り替える。この区切りを先に決めておくと、だらだら使い続ける状態を避けられます。
3年間、同じ軟膏を買い続けていたという方もいらっしゃいます。少しでも効いている実感があると、区切りが作れなくなるためです。1か月ぶんの薬代を数えてみると、判断が変わることがあります。
病院ではどんな治療をするか
結論: 診察は数分で終わります。治療は薬から始まり、進んでいる場合に注射や手術が選択肢に入ります。
診察の中身
横向きに寝た姿勢で、必要な範囲だけを出して行われます。時間にして数分です。
「どんなことをされるのか分からないから行けない」というお話をよく伺います。中身が分かっていれば決心がつく方は多く、受診されたあとで、思っていたより短かったと話される方がほとんどです。
受診の前に、症状が出た時期と便通の状態を書き出しておくと、診察はさらに短くなります。口で説明しにくい部分だからこそ、紙が助けになります。
薬から始まる
多くの場合、まず外用薬と便通を整える薬から始まります。この段階で改善すれば、それ以上の治療は要りません。
痔の治療というと手術を思い浮かべる方が多いのですが、実際に手術になるのは進んだ段階に限られます。早く行くほど、手術を避けられる可能性が上がります。
処方される外用薬は、市販薬より成分の幅があります。市販薬で変わらなかった方でも、別の組み立てで動くことがあります。
手術以外の選択肢もある
内痔核には、硬化療法という注射の治療があります。日帰りで受けられ、切らずに済む方法として広く行われています。
痔瘻の場合は手術が原則ですが、こちらも早い段階なら方法が限られません。どの選択肢が使えるかは、進み具合で決まります。
ゴム輪で縛る方法など、内痔核には他にも切らない選択肢があります。どれが向くかは診察で決まるため、方法を先に決めて受診する必要はありません。
便通を整えることが土台
結論: 痔の再発を防ぐいちばん強い手は、便通を整えることです。硬い便でも水様便でも肛門は傷みます。
硬い便と水様便、どちらも原因になる
痔は便秘の人がなるもの、と思われがちですが、下痢でもなります。硬い便は一度に大きく切り、下痢は浅い刺激を1日に何度も繰り返します。
傷の作られ方が違うだけで、行き着く先は同じです。下痢が続いている方は、切れ痔と痔瘻の両方が起こりやすくなります。
下痢と便秘を繰り返している方は、両方の負担を受けます。この型がいちばん治りにくく、便通そのものを整える必要があります。
便秘型の整え方
水分と水溶性の食物繊維を増やし、朝の排便の時間を確保します。刺激性の下剤に頼っている場合は、便を軟らかくするタイプへ切り替える順番を考えます。
切り替えは一度にしません。重ねてから少しずつ刺激性の量を減らす形にすると、出ない日が続く不安を避けられます。
朝の1杯の白湯(さゆ)と朝食で、胃から大腸への反射を起こす。この習慣がある方は、いきむ回数そのものが減ります。
下痢型の整え方
冷たい飲み物を常温に替える、食事の温度を戻す。まずここからです。慢性の下痢では、内容より温度の影響が大きいことがあります。
回数が減れば、肛門が受ける刺激も、拭く回数も減ります。1日5回が2回になれば、負担は半分以下になります。
下痢止めを毎日使って回数を抑えるのは、この目的には向きません。慢性の下痢に重ねると、下痢と便秘が入れ替わる状態になりやすいためです。体質の側から減らす方が、痔にとっても安全です。
いきまない排便のしかた
前かがみになり、足を少し高くする姿勢が、直腸から肛門への角度をゆるめます。踏み台を置くだけで、いきむ力が要らなくなる方もいます。
出ないときは3分で切り上げる。この2つを組み合わせると、いぼ痔への負担がはっきり減ります。
息を止めて力むより、息を吐きながらお腹を膨らませる方が、肛門にかかる圧は下がります。踏み台と呼吸、この2つは道具も費用も要りません。
痔に使う漢方薬
結論: 痔の漢方薬は、切れ痔・いぼ痔に使うもの、出血に使うもの、便通を整えるものに分かれます。痔瘻には使いません。
乙字湯|いぼ痔・切れ痔の代表
乙字湯(おつじとう)は、痔に使う漢方薬の代表です。厚生労働省の一般用漢方製剤承認基準では、その効能を「痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛」としています。
痔瘻はこの中に入っていません。認められている範囲がそのまま、漢方薬で扱える範囲になります。
もう1つ注意があります。乙字湯には大黄(だいおう)が含まれ、便通をつける働きがあります。便秘傾向の方に向く組み立てなので、下痢が続いている方にそのまま使うと回数が増えます。
芎帰膠艾湯|出血が続くとき
芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)は、出血に用いる漢方薬です。同じ承認基準では、体力中等度以下で冷え症、出血傾向があるものの「痔出血」などに用いるとされています。
冷えがあり、貧血気味で、出血が続くという方に向きます。乙字湯が便秘寄りの方に向くのに対し、こちらは冷えと出血が前に出ている方が対象です。
桂枝茯苓丸|血の滞りが強いとき
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、血の巡りの滞りを動かす漢方薬です。いぼ痔のうっ血が強く、下腹部の張りや冷えのぼせを伴う方に使うことがあります。
女性では、生理痛や子宮内膜症でこの漢方薬を使っている方も多く、その場合は痔の側にも一緒に働きます。
舌の裏の静脈が太い、唇の色が暗い、肩こりが強い。こうしたサインが揃うなら、血の滞りが背景にあると考えます。
麻子仁丸・潤腸湯|硬い便が原因のとき
便が硬くて切れる方には、腸を潤す漢方薬を使います。麻子仁丸(ましにんがん)は、コロコロした硬い便に向きます。乾燥が強く高齢の方には潤腸湯(じゅんちょうとう)を選びます。
刺激性の下剤と違い、腸をたたいて動かすのではなく、便に水分を保たせて出しやすくする働きです。切れ痔の再発を防ぐ土台になります。
補中益気湯|脱肛といきむ力の低下に
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、体の力を底から補う漢方薬です。押し出す力が落ちて長くいきんでしまう方、脱肛(だっこう)を伴う方に使います。
疲れやすく、食が細く、立っていると症状が強くなるという方が当てはまります。夕方になるほど脱出が出やすい、という訴えもこの型です。
即効性のある漢方薬ではありません。3か月ほどかけて、いきまなくても出る状態に近づける役割で使います。
拭き方・洗い方・座り方
結論: 痔のある肛門は、拭き方と洗い方で状態が変わります。強く拭く、洗いすぎる。この2つが荒れを進めます。
こすらず、押さえて取る
紙でこすると、荒れた皮膚がさらに削れます。押し当てて水分を吸わせる形にすると、摩擦が減ります。
外出先では負担が増えます。備え付けの紙は硬いことが多く、急いでいるぶん力も入りやすいためです。柔らかい紙を持ち歩く方法もあります。
拭き取りきれない感じが残るときも、回数を増やすより押さえる時間を長くする方が皮膚に優しくなります。
温水洗浄便座は弱く、短く
洗い流すこと自体は問題ありません。ただし強い水圧を長く当てると、皮膚を守っている脂が落ちて乾きます。
弱い水圧で数秒、そのあとは押さえて水気を取る。これで十分です。温度も熱くしすぎない方が無難で、かゆみが一時的に引くぶん強く熱くしがちですが、そのぶん乾きが進みます。
洗浄を毎回の習慣にしている方は、回数も見直す対象です。1日に何度も洗うほど、皮膚を守っている脂は落ちていきます。
濡れたままにしない
洗ったあとの水気が残ると、皮膚がふやけて傷つきやすくなります。押さえて取る、あるいは軽く乾かす。
下着に湿り気が残る状態が続くと、かゆみも出ます。かいてしまえばまた荒れるので、乾かす手順まで含めて1組にします。
夏や長時間座る日は特に残りやすくなります。通気性のよい下着に替えるだけでも、蒸れる時間は短くなります。
冷やさない
肛門周囲が冷えると血流が落ち、うっ血も傷の治りも悪くなります。夏の冷房、冬の冷えた床、長時間の座り仕事。いずれも影響します。
腹巻き、ひざ掛け、座面のクッション。地味ですが、温めることは薬と同じ方向に働きます。
入浴で温めるのが最も分かりやすい方法です。切れ痔でもいぼ痔でも、湯船に浸かる習慣は共通して勧められます。
女性の痔|妊娠・出産・生理
結論: 女性の痔は、妊娠と出産をきっかけに起きることが多くあります。時期によって使える薬が変わります。
妊娠中に増える理由
大きくなった子宮が骨盤内の血管を圧迫し、肛門周囲の血流が滞ります。加えて、ホルモンの影響で便秘になりやすく、いきむ回数も増えます。
この2つが重なるため、妊娠中はいぼ痔が起きやすい時期です。妊娠後期になるほど、圧迫の影響は強くなります。
出産のいきみで一気に出ることもあります。妊娠中から便通を整えておくと、その負担を軽くできます。
妊娠中は自己判断で薬を選ばない
市販薬にも漢方薬にも、妊娠中に避けたいものがあります。大黄を含む漢方薬は子宮の収縮に影響する可能性があるため、乙字湯も慎重に扱います。
まず産科に相談する順番です。当薬局にご相談いただく場合も、妊娠の有無と週数を必ず伺ったうえで、産科の方針と食い違わない範囲でご提案します。
外用薬についても同じです。市販の軟膏には妊娠中の使用を避けるべき成分を含むものがあり、産科で処方を受ける方が確実になります。
出産後の痔
出産のいきみで、いぼ痔が急に出ることがあります。多くは時間とともに戻りますが、授乳中は使える薬が限られるため、自己判断は避けてください。
痛みが強い、戻らない、出血が続く。この3つのどれかがあれば受診の対象です。
授乳中は、飲み薬より外用薬が選ばれることが多くなります。どちらにしても、自己判断で市販薬を選ぶ前に産科か薬剤師に相談する順番です。
生理周期との関係
生理のたびに下痢になる方は、その時期に切れ痔を繰り返すことがあります。毎月同じ時期に痛むなら、周期との関係を疑います。
この場合は、痔の側だけを手当てしても翌月にまた切れます。下痢の側を整えることが、そのまま予防になります。
生理の3日前から下腹部を温めておくと、当日の下痢が軽くなる方が多くいます。始まってからでは間に合いにくいので、周期の前半から続けます。
手術を勧められたとき
結論: 手術が必要なのは、進んだいぼ痔と痔瘻です。早く受診するほど、選べる方法は多くなります。
手術になる段階
いぼ痔では、押しても戻らない段階、出血が続いて貧血になる段階が対象です。痔瘻は原則として手術になります。
逆に言えば、それ以外の段階では手術になりません。恐れて受診を遅らせると、手術しか選べない段階に自分で近づくことになります。
実際、受診された方の多くは薬と生活の見直しで済んでいます。手術になるかどうかは、行くか行かないかではなく、いつ行くかで決まります。
入院の要否は方法で変わる
日帰りで受けられる方法もあれば、数日の入院が必要な方法もあります。仕事の都合を伝えれば、選択肢の中から調整してもらえることがあります。
聞かずに決めつけて先延ばしにするより、まず条件を確かめる方が話が早く進みます。
術後の痛みについても、方法によって差があります。心配な点は診察のときに具体的に聞いておくと、決めやすくなります。
手術のあとも便通を整える
手術で痔そのものを取っても、便通が乱れたままなら再発します。特に痔瘻は、下痢が続いていると同じ経路をたどる可能性が残ります。
ここが漢方薬の役割です。管を閉じることはできませんが、下る回数を減らして再発の条件を減らすことはできます。
手術の前から始めても構いません。便通が落ち着いていれば、術後の傷が便で汚れる回数も減ります。
受診をためらう理由をほどく
結論: 痔の受診が遅れる理由は、痛みでも費用でもなく、恥ずかしさです。ただし診察は数分で終わります。
何科に行くか
肛門科、または肛門外科が専門です。近くに無ければ、消化器外科や外科でも診てもらえます。
女性専用の外来や、女性の医師が担当する日を設けている施設もあります。受診の前に電話で確かめておくと、行きやすさが変わります。
下痢や便秘が主で、肛門の症状が軽いなら、消化器内科という入口もあります。便通の相談として始める方が、心理的な負担は小さくなります。
行かないまま進むとどうなるか
切れ痔は、繰り返すうちに肛門が狭くなることがあります。いぼ痔は、押しても戻らない段階へ進みます。痔瘻は、管が枝分かれして複雑になります。
早い段階なら簡単に済んだものが、待つほど大きな治療になる。これが先延ばしのいちばんの損です。
もう1つ、出血を痔だと思い込んで確かめないことの危うさもあります。実際に痔からの出血だったとしても、外しておく価値はあります。
相談の場を分けて使う
いきなり病院はためらう、という方もいらっしゃいます。その場合、まず薬局で市販薬を選ぶところから始めても構いません。
そのうえで、2週間から3か月という区切りを決めておく。この期限があれば、ずるずると年単位で放置することは避けられます。
当薬局でも、痔のご相談では受診をおすすめする段階かどうかを必ずお伝えしています。漢方薬で粘る場面と、行くべき場面は分けて考えます。
よくある質問
Q. 痔は市販薬だけで治りますか?
A. 切れ痔と軽いいぼ痔なら、便通を整えることと合わせて治ることがあります。痔瘻は市販薬では治りません。手術が原則で、使い続けると受診が遅れるだけになります。まず自分がどの種類かを絞ってください。
Q. 痛くないのに血が出ます。放っておいてよいですか?
A. 内痔核からの出血であることが多いのですが、確かめておく意味があります。特に黒っぽい血なら、胃や小腸からの出血を疑います。色と量を覚えて受診してください。量より色の方が情報を持っています。
Q. 乙字湯を飲めばよいのでしょうか?
A. 便秘傾向のいぼ痔・切れ痔には向きます。ただし乙字湯には大黄が含まれ、便通をつける働きがあるため、下痢が続いている方には向きません。下痢と痔が同時にあるなら、下痢の側から手を入れる順番になります。
Q. 病院ではどんなことをされますか?
A. 横向きに寝た姿勢で、必要な範囲だけを出して診察します。時間にして数分です。多くの場合は外用薬と便通の薬から始まり、手術になるのは進んだ段階に限られます。
Q. 妊娠中に痔になりました。薬は使えますか?
A. 自己判断で選ばず、まず産科に相談してください。市販薬にも漢方薬にも妊娠中に避けたいものがあり、大黄を含む乙字湯も慎重に扱います。当薬局でも、妊娠の週数を伺ったうえで産科の方針と食い違わない範囲でご提案しています。
Q. 手術をしたら再発しませんか?
A. 便通が乱れたままだと再発することがあります。特に痔瘻は、下痢が続いていると同じ経路をたどる可能性が残ります。手術で痔そのものを取ったあと、便通を整えることが再発を防ぐ土台になります。
まとめ:種類を絞ってから、便通と同時に手を入れる
痔の手当ては、どの種類かを絞るところから始まります。市販薬で治せるものと、手術でなければ治らないものが混ざっているためです。
- 3種類を見分ける: 切れ痔・いぼ痔・痔瘻。痛み方と血の付き方で絞る
- 痔瘻は手術が原則: 膿が出て楽になっても管は残る。市販薬では治らない
- 市販薬は期間を決めて使う: 2週間で変わらなければ受診、切れ痔は3か月が区切り
- 便通が土台: 硬い便も水様便も肛門を傷める。下痢型は温度から、便秘型は水分と繊維から
- 漢方薬は痔と便通の両方から: 乙字湯は便秘型、芎帰膠艾湯は冷えと出血、麻子仁丸は硬い便
最後に、本文で触れなかったことを1つ。痔の症状は、他の相談のついででよいので口に出してください。便秘や下痢で相談に来られた方が、最後にひとこと触れて分かることがよくあります。痔があるかどうかで、選ぶ漢方薬が変わります。乙字湯のように便通をつける働きのあるものを避ける判断も、そこで決まります。話しにくさで選択肢が減るのは、もったいないことです。
「どの種類か分からない」「市販薬を使い続けているが変わらない」という方は、れいわ漢方薬局にご相談ください。症状と便通の状態を伺ったうえで、体質に合う漢方薬と、受診が要るかどうかの見立てをお伝えします。


