「何科に行けばいいのか分からず、そのままになっています」「どんなことをされるのか分からないから、行く決心がつきません」――痔の受診について、この2つはよく伺うご相談です。
行き先は肛門科、または肛門外科です。診察は横向きに寝た姿勢で、必要な範囲だけを出して行われ、時間にして数分で終わります。中身が分かっていれば決心がつく方は多くいます。
れいわ漢方薬局では、痔のご相談を受けたとき、受診が要る段階かどうかを先にお伝えしています。市販薬で粘ってよい段階と、行った方が早い段階があるためです。
この記事では、何科に行くか、診察の中身、費用の目安、ためらう理由のほどき方、受診前の準備までを扱います。
何科に行けばよいか
結論: 肛門科または肛門外科が専門です。近くに無ければ、消化器外科・外科・消化器内科でも診てもらえます。
症状別の行き先
症状によって、最も適した診療科が変わります。迷ったときは肛門科を選べば間違いありません。
下の表は、症状ごとの行き先を整理したものです。当てはまる行が複数ある場合は、いちばん困っている症状の側を選びます。
近くに肛門科が無いという理由で受診をやめてしまう方がいますが、外科でも一般的な痔の診察はできます。
| 主な症状 | 行き先 | 理由 |
|---|---|---|
| 肛門が痛む、血が付く | 肛門科・肛門外科 | 痔の3種類を見分けられる |
| 腫れて熱が出た | 肛門科(その日のうちに) | 膿がたまっている可能性がある |
| 下痢や便秘が主で、肛門は軽い | 消化器内科 | 便通の側から入る方が自然 |
| 近くに肛門科が無い | 消化器外科・外科 | 一般的な痔の診察は可能 |
| 妊娠中・産後 | まず産科に相談 | 使える薬が限られるため |
腫れて38度前後の熱が出ている場合だけは、その日のうちに受診します。膿がたまった状態なら、切開で済むかどうかの分かれ目になります。
肛門科と外科の違い
肛門科は、肛門とその周辺を専門に扱う科です。痔の3種類を見分け、進み具合に応じた治療を選べます。
外科や消化器外科でも、一般的な痔の診察はできます。ただし手術になる場合、方法の選択肢は専門に扱っている施設の方が多くなります。
まず近くで診てもらい、必要なら紹介してもらうという流れでも構いません。行かないままにすることの方が、選択を狭めます。
消化器内科から入る道もある
下痢や便秘が主で、肛門の症状は軽いという方もいます。この場合、便通の相談として消化器内科から入る形が自然です。
痔の話を切り出しにくいという方にとっては、心理的な負担も小さくなります。診察の中で肛門の症状を伝えれば、必要に応じて紹介してもらえます。
下痢や便秘が背景にある痔では、この順番の方が理にかなっています。便通が整えば、痔の側も落ち着くことが多いためです。
診察でされること
結論: 診察は、問診・視診と触診・必要に応じて肛門鏡の3段階で進みます。時間にして数分で、服を全部脱ぐことはありません。多くは外用薬から始まります。
3段階の流れ
初めての方が不安に感じるのは、何をされるか分からないことです。流れが分かっていれば、決心がつきやすくなります。
- 問診: いつから、どんな症状か、便通はどうか。ここで日付のメモが役に立つ
- 視診と触診: 横向きに寝た姿勢で、必要な範囲だけを出して行う
- 肛門鏡: 内側を見る必要があるとき。細い器具で数十秒
服を全部脱ぐことはありません。タオルやシーツで覆われた状態で、必要な部分だけを出します。
痛みはあるか
診察そのものは、多くの場合それほど痛みません。切れ痔で炎症が強い場合は、触られると痛むことがあります。
痛みが強いときは、その旨を伝えれば配慮してもらえます。ゼリーを使う、力を抜く姿勢をとるなど、負担を減らす方法があります。
「思っていたより短かった」と話される方がほとんどです。待合室で待つ時間の方が長いというのが、実際のところです。
治療は薬から始まる
多くの場合、まず外用薬と便通を整える薬から始まります。この段階で改善すれば、それ以上の治療は要りません。
痔の治療というと手術を思い浮かべる方が多いのですが、実際に手術になるのは進んだ段階に限られます。早く行くほど、薬だけで済む可能性が上がります。
処方される外用薬は、市販薬より成分の幅があります。市販薬で変わらなかった方でも、別の組み立てで動くことがあります。
費用の目安
結論: 保険が使えます。初診で診察と外用薬なら、3割負担で数千円の範囲に収まることがほとんどです。
何にお金がかかるか
かかるのは、初診料、処置料、薬代です。検査が加わればそのぶん増えます。
痔の診察は保険診療の対象です。自由診療になるのは、特殊な治療を選んだ場合など限られた場面になります。
市販薬を何か月も買い続けるより、一度受診した方が安く済むこともあります。3年間、同じ軟膏を買い続けていたという方の1か月ぶんの薬代を数えると、判断が変わることがあります。
手術になった場合
手術の費用は方法によって変わります。日帰りで済むものから、数日の入院が必要なものまであります。
高額療養費制度の対象になる場合もあります。仕事の都合や費用について、診察のときに具体的に聞いておくと予定が立てやすくなります。
手術になるのは進んだ段階に限られます。受診した方の多くは、外用薬と便通の薬で済んでいます。
通院の回数
外用薬から始める場合、次の受診は2週間後や1か月後になることが多くあります。症状が落ち着けば、それで終わります。
手術を受けた場合は、傷の処置で数回通うことが一般的です。あらかじめ回数の目安を聞いておくと、仕事の予定を組みやすくなります。
通院が続くのは、傷が治るまでの期間です。年単位で通い続けるものではありません。
受診をためらう理由をほどく
結論: 受診が遅れる理由は、痛みでも費用でもなく恥ずかしさです。ただし肛門科の医師にとっては、毎日診ている身近な症状になります。特別な訴えではありません。
見られることへの抵抗
痔は、日本人の多くが経験するとされる身近な症状です。肛門科の医師にとっては、毎日診ているものになります。
特別な訴えではないという前提を知っておくと、負担は少し軽くなります。同じ悩みで受診する方が、その日だけで何人もいます。
「もっと早く来ればよかった」と話される方が多いのは、この点が分かるためです。実際に行った方の感想として、いちばん多い言葉になります。
何をされるか分からない
流れが分かっていれば決心がつく、という方は多くいます。問診、視診と触診、必要なら肛門鏡。この3段階で、数分です。
服を全部脱ぐことはなく、必要な範囲だけを出します。診察台には、体の向きや覆いの工夫がされています。
痛みが強いときは、その旨を伝えれば配慮してもらえます。ゼリーを使う、力を抜く姿勢をとるなど、負担を減らす方法があります。
症状が軽いと言い出しにくい
血が少し付く程度、たまに痛む程度。この段階で受診してよいのか迷う、というお話もよく伺います。
軽いうちに行った方が、選べる手が多くなります。進んでから行くと、薬では戻せない段階に入っていることがあります。軽いことは、行かない理由ではありません。
血が付くようになって2年、という方は珍しくありません。その2年で進む場合もあれば、進まない場合もありますが、確かめておけば迷わずに済みます。
女性が受診しやすくするには
結論: 女性医師の診察日や、女性専用の外来を設けている施設があります。受診前に電話で確かめておくと、行きやすさが変わります。問い合わせ自体は珍しくありません。
電話で聞いてよいこと
女性の医師が担当する曜日はあるか、女性のスタッフが対応してくれるか。受診前に電話で確かめておくと、行きやすさが変わります。
こうした問い合わせは珍しくありません。施設の側も慣れているため、遠慮なく聞いて構いません。
施設のホームページに、女性医師の診察日が載っていることもあります。電話が苦手な方は、先にそちらを見ておくと確かめる手間が減ります。
妊娠中・産後は産科から
妊娠中や産後にできた痔は、まず産科に相談する順番です。使える薬が限られるため、産科の方針と食い違わない形にする必要があります。
産科で対応が難しい場合は、肛門科を紹介してもらえます。自己判断で市販薬を選ぶより、この流れの方が確実です。
妊娠中は市販薬にも漢方薬にも避けたいものがあります。大黄を含む乙字湯も慎重に扱うため、産科の方針に沿って選ぶ形にします。
生理と重ならない日を選ぶ
診察のことを考えると、生理中を避けたいという方が多くいます。予約するときに日程を調整すれば問題ありません。
ただし、腫れて熱が出ている場合は別です。この場合は日程を選ばず、その日のうちに受診します。
生理中であっても診察は可能です。伝えておけば配慮してもらえるため、症状が急なときは日程より優先します。
予約が取りにくい施設もあります。1か月先まで埋まっている場合、日程にこだわると受診がさらに遅れることになります。
行かないまま進むとどうなるか
結論: 切れ痔は肛門が狭くなり、いぼ痔は押しても戻らなくなり、痔瘻は管が複雑になります。待つほど治療は大きくなります。
切れ痔の場合
繰り返すうちに、傷が硬い組織に変わって肛門が狭くなることがあります。ここまで進むと、軟膏では戻りません。
狭くなってきたサインは、便が細くなることです。以前より明らかに細い便が続いているなら、日数を待たずに相談する段階です。
目安は3か月。市販薬と生活の見直しで3か月変わらないなら、受診に切り替えてください。
いぼ痔の場合
内痔核は、脱出の程度で4段階に分けられます。手で押し込まないと戻らない段階になると、薬では戻せません。
押し込む動作が習慣になってしまい、いつからそうしているか思い出せない方が多くいます。押し込んでいる時点で、受診の対象です。
第2度までなら、市販薬と生活の見直しで戻ることが多くあります。この境目を知っておくと、判断が遅れません。
痔瘻の場合
痔瘻は自然には治らず、手術が原則です。長く置くと、管が枝分かれして複雑になります。
膿が出て痛みが引くことがありますが、治ったわけではありません。管は残っており、再びたまれば同じことが起きます。腫れと熱が出た段階で、その日のうちに受診してください。
年に何回繰り返しているかは、診察のときに医師が知りたい情報の1つです。日付で記録しておくと、そのまま説明になります。
受診前の準備
結論: 症状が始まった時期、便通の状態、飲んでいる薬。この3つを整理しておくと、診察が短く済みます。
3つをメモしておく
口で説明しにくい部分だからこそ、書いたものがあると助かります。
- いつから: 何か月前からか、繰り返している場合は年に何回か
- 便通: 1週間の排便回数と便の形。下痢型か便秘型か
- 薬: 使っている市販薬、飲んでいる処方薬とサプリメント
便通の情報は、痔の治療方針を決める材料になります。硬い便も水様便も肛門を傷めるため、どちらの側から来ているかで手当てが変わります。
お薬手帳を持っていく
処方薬を飲んでいる方は、お薬手帳を渡すのがいちばん早い方法です。市販薬とサプリメントは載っていないため、その2つだけ書き足しておきます。
飲み合わせの確認だけでなく、下痢や便秘の原因が薬にあることも分かります。
抗菌薬、糖尿病の薬、マグネシウムを含む便秘薬。いずれも便通を変えることがあり、痔の背景になっていることがあります。
服装
下半身を出しやすい服装が向きます。ゆったりしたズボンやスカートなら、着替えの手間が減ります。
タイツやストッキングは脱ぐ必要があるため、当日は避ける方が楽です。細かいことですが、当日の負担を減らす工夫になります。
診察のあとに軟膏を塗ることもあります。汚れても構わない下着を選んでおくと、帰りの心配が減ります。
漢方薬でできること
結論: 受診と並行して、便通を整える漢方薬を使えます。痔の再発を防ぐ土台になります。
便秘型なら乙字湯
乙字湯(おつじとう)は、痔に使う漢方薬の代表です。厚生労働省の一般用漢方製剤承認基準では、その効能を「痔核(いぼ痔)、きれ痔、便秘、軽度の脱肛」としています。
大黄(だいおう)を含み便通をつける働きがあるため、下痢が続いている方にそのまま使うと回数が増えます。便の形を先に確かめてから選びます。
買う前に、便通の状態を薬剤師に伝えておくと確実です。市販薬の棚では痔の薬として並んでいるため、見分けがつきません。
出血が続くなら芎帰膠艾湯
芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)は、出血に用いる漢方薬です。厚生労働省の同じ承認基準では、体力中等度以下で冷え症、出血傾向があるものの「痔出血」などに用いるとされています。
冷えがあり、貧血気味で、出血が続くという方に向きます。大黄を含まないため、下痢傾向の方にも使いやすい漢方薬です。
下痢が背景にあるとき
下痢で肛門が荒れているなら、痔の薬より先に下る回数を減らします。啓脾湯(けいひとう)は、やせて顔色が悪く、食が細く、何年も軟便が続く方に向きます。
1日5回が2回になれば、肛門が受ける刺激は半分以下になります。手術を受けた方の再発予防にも、この方向が働きます。
効き方はゆるやかで、3か月ほどかけて便の形が戻ります。受診と並行して始めておくと、術後の経過にも影響します。
改善症例|受診につながったケース
結論: 受診が要る段階かどうかを先にお伝えすると、判断が早くなります。当薬局では見立てを添えてご案内しています。
ケース1:30代男性・腫れを3年繰り返していた
「年に2回くらい腫れて、そのたびに膿が出て治っていました」。最初にそう話してくださった方です。3年で5回繰り返し、そのあいだ一度も受診していませんでした。
膿が出て楽になるのは治ったのではなく圧が抜けただけであることをお伝えし、肛門科の受診をおすすめしました。結果は痔瘻で、手術を受けています。
術後、背景にあった1日3回の軟便に手を入れました。桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)を使い、朝の冷たい飲み物をやめていただいています。2か月で1日1〜2回に減り、その後は腫れを繰り返していません。
ケース2:40代女性・受診先が分からず2年
血が付くようになって2年、何科に行けばよいか分からないまま市販の軟膏を使い続けていた方でした。痛みは軽く、いきむと出て自然に戻るとのことです。
肛門科の診察の流れをお伝えし、女性医師の診察日がある施設を調べて電話で確かめていただきました。受診の結果は第2度の内痔核で、外用薬と便通の薬から始まっています。
「思っていたより短くて、もっと早く来ればよかったと言われました」とのことです。当薬局では、便が硬い型だったため麻子仁丸(ましにんがん)を合わせてご提案しています。
よくある質問
Q. 痔は何科を受診すればよいですか?
A. 肛門科または肛門外科が専門です。近くに無ければ、消化器外科や外科でも診てもらえます。下痢や便秘が主で肛門の症状が軽いなら、消化器内科から入る道もあります。腫れて熱が出ている場合は、その日のうちに肛門科を受診してください。
Q. 診察ではどんなことをされますか?
A. 問診、視診と触診、必要なら肛門鏡の3段階です。横向きに寝た姿勢で、必要な範囲だけを出して行われ、時間にして数分で終わります。服を全部脱ぐことはありません。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 保険が使えます。初診で診察と外用薬なら、3割負担で数千円の範囲に収まることがほとんどです。検査や手術が加わればそのぶん増えます。市販薬を何か月も買い続けるより安く済むこともあります。
Q. 症状が軽いのですが、受診してよいですか?
A. 受診してください。軽いうちに行った方が、選べる手が多くなります。進んでから行くと、薬では戻せない段階に入っていることがあります。血が少し付く程度でも、確かめておく価値があります。
Q. 女性でも受診しやすい施設はありますか?
A. 女性医師の診察日や、女性専用の外来を設けている施設があります。受診前に電話で確かめておくと選びやすくなります。こうした問い合わせは珍しくないため、遠慮なく聞いて構いません。
まとめ:行き先は肛門科、診察は数分
痔の受診が遅れる理由は、行き先が分からないことと、何をされるか分からないことの2つです。どちらも先に知っておけば解決します。
- 行き先は肛門科・肛門外科: 近くに無ければ消化器外科・外科でもよい
- 診察は3段階で数分: 問診、視診と触診、必要なら肛門鏡
- 費用は保険診療: 初診と外用薬なら3割負担で数千円の範囲
- 軽いうちに行く方が選べる手が多い: 進むと薬では戻せない段階になる
- 腫れて熱が出たらその日に: 膿がたまっている段階なら切開で済むことがある
最後に、本文で触れなかったことを1つ。受診する日を先に決めて、予約を取ってしまってください。痔の受診は、決心がついてから予約するまでに時間が空きます。その間に症状が落ち着くと、また先延ばしになります。症状が軽い日に予約を取っておく方が、結果として早く終わります。
「受診した方がよい段階か知りたい」「市販薬を使い続けているが変わらない」という方は、れいわ漢方薬局にご相談ください。症状と便通の状態を伺ったうえで、受診の要否と、体質に合う漢方薬をお伝えします。


