過敏性腸症候群の治し方|薬・食事・体質から整える順番

過敏性腸症候群の治し方|薬・食事・体質から整える順番 下痢

「検査では異常なしと言われたのに、毎朝お腹が痛くなります」「電車に乗る前に必ずトイレを探すのが習慣になりました」――過敏性腸症候群のご相談は、この2つから始まることがほとんどです。

つらい不調、ひとりで悩まずご相談ください

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過敏性腸症候群は、腸に炎症や腫瘍が見つからないのに、腹痛と便通の異常が続く状態を指します。治し方の順番は、薬で症状を抑える段階と、腸が過敏になっている理由を減らす段階の2つに分かれます。この2つを同時に始めると、どちらが効いたのか分からなくなります。

れいわ漢方薬局では、まずタイプを決めるところから入ります。下痢型なのか、便秘型なのか、ガスが主なのか。同じ診断名でも、選ぶ漢方薬は正反対になるためです。

この記事では、診断のされ方、4つのタイプ、病院で使われる薬、東洋医学の見方、タイプ別の漢方薬、食事と生活の整え方までを扱います。日々ご相談をお受けしている薬剤師の立場から解説します。

  1. 過敏性腸症候群とは|どう診断されるか
    1. 診断は、除外と基準の2段構え
    2. 10人に1人という数字
    3. 若い世代に多いが、年齢を選ばない
  2. 4つのタイプに分かれる
    1. 便の形で分ける4つ
    2. ガス型は診断名ではない
    3. 型は固定ではない
  3. なぜ腸が過敏になるのか
    1. 脳と腸はつながっている
    2. 予測が症状を呼ぶ
    3. 感染のあとから始まることがある
  4. 病院でされる検査と薬
    1. 何を調べるか
    2. よく使われる薬
    3. 薬が効かないと感じるとき
  5. 市販薬でできること・できないこと
    1. 場面をしのぐには十分
    2. 整腸剤は続けてよい
    3. 市販薬だけで粘る期間を決めておく
  6. 東洋医学が見るIBS
    1. 肝鬱|緊張で気が詰まる
    2. 脾虚|消化吸収の力が落ちている
    3. 多くは両方が重なっている
  7. タイプ別に選ぶ漢方薬
    1. 桂枝加芍薬湯|腹痛と残便感がある方に
    2. 四逆散|緊張が強く、わき腹が張る方に
    3. 半夏瀉心湯|お腹が鳴り、においが強い方に
    4. 大建中湯|お腹が冷えて張る方に
    5. 啓脾湯・六君子湯|疲れると下る方に
  8. 食事|低FODMAPという考え方
    1. 発酵しやすい糖質を減らす
    2. 3週間で試し、1つずつ戻す
    3. 温度と食べ方も見る
  9. 生活の整え方
    1. 朝の組み立てを変える
    2. 睡眠を先に整える
    3. 運動は歩くだけで足りる
  10. ガス型の扱い
    1. 飲み込む空気を減らす
    2. 音とにおいは別の問題
    3. 気にするほど増える
  11. 治るまでの期間と、やめどき
    1. 何を見て判断するか
    2. やめどきは、季節をひとつ越えてから
    3. 完全に消えることを目標にしない
  12. IBSではない可能性を考えるサイン
    1. 4つの警告サイン
    2. 診断されたあとでも、変化があれば伝える
  13. よくある質問
  14. まとめ:型を決めてから、順番に手を入れる

過敏性腸症候群とは|どう診断されるか

結論: 過敏性腸症候群(以下「IBS」)は、検査で異常が見つからないのに腹痛と便通の異常が続く状態です。日本人のおよそ10%が当てはまります。

診断は、除外と基準の2段構え

IBSの診断は、まず別の病気を外すところから始まります。炎症性腸疾患、大腸がん、甲状腺の異常。これらが無いことを確かめたうえで、症状の型が基準に合うかを見ます。

使われているのがRome基準と呼ばれる国際的な物差しです。日本消化器病学会の『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)』では、腹痛が「最近3か月のなかの1週間につき少なくとも1日以上」あり、排便との関連・排便頻度の変化・便形状の変化のうち2つ以上を伴うことを条件としています。

つまり、下痢だけ、便秘だけではIBSになりません。腹痛と便通の変化がセットで起きているかどうかが分かれ目です。

もう1つ、期間の条件があります。症状が6か月以上前から始まっていて、直近3か月が基準を満たすこと。先週始まった腹痛と下痢は、この時点ではIBSと呼びません。急に始まったものは、まず感染や食あたりを考えます。

10人に1人という数字

同じガイドラインでは、日本人の有病率をおよそ10%と報告しています。10人に1人という割合で、外来で最も多い消化器の相談の1つです。

それでも受診率は高くありません。命に関わる病気ではないこと、恥ずかしさ、そして「体質だから仕方ない」という思い込みが受診を止めています。当薬局にお越しになる方でも、症状が出てから初めて相談するまでに5年以上たっている方が珍しくありません。

10%という数字は、この待つ期間を短くする材料になります。10人に1人が同じ悩みを抱えている以上、相談を受ける側にとっては日常的な症状です。珍しい訴えではないという前提が、受診の心理的な負担を下げます。

若い世代に多いが、年齢を選ばない

10代から40代に多いとされますが、年齢の幅は広くあります。受験、就職、転勤、介護。生活の変わり目に始まる方が目立ちます。

「ストレスが原因なら、ストレスが無くなれば治るはず」と考える方が多いのですが、そう単純ではありません。一度過敏になった腸は、原因が去っても反応のしかたを覚えています。ここが、休めば治ると言われて長引く理由です。

年齢によって、困る場面も変わります。学生なら授業と試験、働く世代なら通勤と会議、介護をしている方なら外出の予定。同じ症状でも、生活のどこで詰まるかが違うため、手を入れる順番も変わってきます。

4つのタイプに分かれる

結論: IBSは便の形で下痢型・便秘型・混合型・分類不能型に分かれます。ガス型は正式な分類ではありませんが、相談の場では独立した型として扱っています。

便の形で分ける4つ

分類にはブリストル便形状スケールという7段階の物差しを使います。1型のコロコロ便から7型の水様便までを形で分け、6型と7型を下痢、1型と2型を便秘として数えます。

腹痛があるときの便がどちらに寄るかで、型が決まります。1日の中で下痢と便秘が入れ替わる方は混合型です。

注意したいのは、下痢止めや便秘薬を使っている時期の便で判断しないことです。薬で形が変わっている状態を型として覚えてしまうと、次に選ぶものがずれます。

タイプ 便の形 特徴 多い場面
下痢型 6〜7型が多い 腹痛のあと下る。急な便意 通勤前、会議前、外出の直前
便秘型 1〜2型が多い 腹痛があり、出しても残る 女性に多い。生理周期で波がある
混合型 両方が入れ替わる 下痢と便秘を繰り返す 最も多い型
ガス型 便より張りとガス おならが止まらない、音が気になる 教室・職場など静かな場所

ガス型は診断名ではない

ガス型という言葉は、医学的な分類にはありません。ただし、おならと腹鳴を主な悩みとして相談に来られる方は実際に多く、対処も他の型とは変わります。

便通そのものは大きく崩れていないのに、音とにおいで生活が狭まる。この型は、腸の動きより、飲み込む空気の量と発酵の起こり方に手を入れます。

診断名が無いぶん、医療機関で相談しても軽く扱われたと感じる方がいます。困っている度合いは他の型と変わらないので、伝え方を変えて相談してよい部分です。

型は固定ではない

同じ方でも、時期によって型が移ります。学生時代は下痢型で、いまは便秘型という方は珍しくありません。

そのため、5年前に決めた型のまま同じ薬を続けていると合わなくなります。半年から1年ごとに、いまの便の形を見直す。これが遠回りを避ける手です。

型が移る境目には、生活の変化があることがほとんどです。転職、引っ越し、出産。振り返ると変わり目が思い当たる、という方が多くいます。

なぜ腸が過敏になるのか

結論: IBSの背景には、脳と腸が互いに信号を送り合う仕組みがあります。緊張が腸を動かし、腸の不調が不安を強めるという往復です。

脳と腸はつながっている

腸には独自の神経が張り巡らされており、脳からの信号を受けて動きを変えます。緊張したときに腹痛が来るのは、この経路が働いているためです。

逆向きの経路もあります。腸の不快感が脳に伝わり、不安を強める。すると腸がさらに動く。この往復を脳腸相関と呼びます。

この仕組みがあるため、IBSは気の持ちようでは片付きません。信号のやり取りが実際に起きているので、腸の側からも脳の側からも手を入れられます。

予測が症状を呼ぶ

IBSで特徴的なのが、「また下るかもしれない」という予測そのものが引き金になることです。実際に腹痛が来る前から、腸は動き始めています。

「トイレの位置を確認しないと出かけられません」というお話は、この段階に入った方から伺うものです。ここまで来ると、腸の状態より予測の方が生活を狭めています。

逆に言えば、予測を崩せば症状も動きます。出先で探す前提を、出る前に済ませる前提へ変えるのが最初の一手です。

感染のあとから始まることがある

食中毒や感染性腸炎のあと、下痢だけが残ってIBSに移行することがあります。感染後IBSと呼ばれる型です。

心当たりのある方は、いつから始まったかを思い出してみてください。感染をきっかけに始まっているなら、ストレスだけを原因と考える必要はありません。

この型では、腸内細菌の構成が元に戻り切っていないことがあります。整腸剤を数か月続ける意味が、他の型より大きくなります。

病院でされる検査と薬

結論: 検査は別の病気を外すために行われます。薬は症状ごとに分かれており、下痢型と便秘型では処方されるものが違います。

何を調べるか

血液検査、便潜血、必要に応じて大腸内視鏡。炎症や腫瘍、感染がないことを確かめます。甲状腺の機能を調べることもあります。

検査で異常が出ないこと自体が、診断の一部です。「異常なしと言われて終わった」と感じる方が多いのですが、この段階を通らないとIBSという診断にはたどり着きません。

受診の前に、症状が出る場面と便の形を1週間ぶん書き出しておくと、検査の組み立てが早くなります。口頭では回数を少なめに答えてしまう方がほとんどなので、紙があるだけで診断の精度が変わります。

よく使われる薬

下痢型には腸の動きを整える薬や、便の水分を調整する薬。便秘型には便を軟らかくする薬。腹痛にはけいれんを抑える薬。整腸剤はどの型でも使われます。

不安が強い場合は、抗不安薬や少量の抗うつ薬が使われることもあります。これは気のせいだと言われているのではなく、脳腸相関の経路に働きかける目的です。

この説明を受けずに処方されると、精神的な問題として扱われたと感じてしまいます。目的を確かめてから飲むかどうかを決める方が、続けやすくなります。

薬が効かないと感じるとき

「薬をもらったが変わらない」というご相談も多く伺います。理由はいくつかあります。

型が変わっているのに同じ薬を続けている。飲むタイミングが合っていない。あるいは、症状を抑える薬だけで、過敏になっている理由に手が入っていない。この3つ目が、漢方薬を併せて使う理由です。

効かないと感じたときは、やめる前に飲み方を確かめてください。食前か食後か、症状が出てからか予防的にか。これだけで結果が変わることがあります。

市販薬でできること・できないこと

結論: 市販薬は症状が出ている場面をしのぐのに向きます。過敏そのものを減らす目的には向きません。

場面をしのぐには十分

急な便意を止めたい、腹痛を抑えたい。こうした場面では市販薬が役に立ちます。試験や移動の当日に備えて持っておくのは現実的な備えです。

ただし毎日飲み続ける前提の薬ではありません。慢性の下痢に止瀉薬を毎日重ねると、下痢と便秘が入れ替わる状態になりやすくなります。

持っているだけで安心して、結果的に飲まずに済んだという方も多くいます。予測が引き金になる型では、備えがあること自体が症状を軽くします。

整腸剤は続けてよい

乳酸菌や酪酸菌を含む整腸剤は、腸内細菌の構成を整えるもので、長く続けて差し支えありません。効いてくるまでに数週間かかるため、1週間で判断しないことがコツです。

漢方薬との併用も問題ありません。当薬局でも、整腸剤を続けながら体質に合う漢方薬を足す形をよくご提案しています。

菌の種類が合わないこともあります。3か月使って変化が無ければ、別の菌を含む製品に替えて試す価値があります。

市販薬だけで粘る期間を決めておく

1か月使って変わらないなら、受診か相談に切り替える。この区切りを先に決めておくと、何年も同じ薬を買い続ける状態を避けられます。

3年間、同じ市販薬を買い続けていたという方もいらっしゃいます。少しでも効いている実感があると、区切りが作れなくなるためです。

1か月ぶんの薬代を数えてみると、判断が変わることがあります。続けることの負担は、体だけでなく家計の側にも出ています。

東洋医学が見るIBS

結論: 東洋医学では、IBSを気の巡りの滞り(肝鬱)と、消化吸収の力の低下(脾虚)の重なりとして見ます。どちらが強いかで漢方薬が変わります。

肝鬱|緊張で気が詰まる

肝鬱(かんうつ)は、ストレスで気の巡りが滞った状態です。決まった場面で腹痛が起き、便通が下痢と便秘で入れ替わるのが特徴です。

ため息が多い、みぞおちからわき腹が張る、寝つきが悪い。こうしたサインを伴います。緊張する場面でだけ症状が出るなら、この型から考えます。

休日には出ない、というのも肝鬱の目印です。平日だけ、出社する日だけという波があるなら、体の力より気の巡りの側を先に見ます。

脾虚|消化吸収の力が落ちている

脾虚(ひきょ)は、食べたものを消化吸収する働きが落ちた状態です。食後に眠くなる、疲れやすい、少し食べ過ぎただけで下るという特徴があります。

便は形にならず、色が薄く、においも弱い。緊張とは関係なく、疲れた日に症状が出るならこちらです。

食べる量が減っている方も多くいます。下るのが怖くて食事を減らし、そのぶん力が落ちてさらに下る。この輪に入っている場合は、食べる量を戻すところから始めます。

多くは両方が重なっている

実際のご相談では、この2つが重なっていることがほとんどです。仕事の緊張で気が詰まり、食事が乱れて吸収の力も落ちる。順番はどちらからでも起こります。

どちらが強いかを決めるのが、漢方薬を選ぶ最初の一歩です。緊張する場面でだけ出るなら肝鬱、疲れた日に出るなら脾虚。両方なら、その日の生活で優勢な方から手を入れます。

タイプ別に選ぶ漢方薬

結論: IBSの漢方薬は、腸の緊張をゆるめるもの、気の巡りを整えるもの、吸収の力を補うものに分かれます。型に合わせて選びます。

桂枝加芍薬湯|腹痛と残便感がある方に

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)は、お腹の緊張をゆるめる漢方薬です。厚生労働省の一般用漢方製剤承認基準では、その効能を「腹部膨満感のある次の諸症:しぶり腹、腹痛、下痢、便秘」としています。

しぶり腹とは、便意はあるのに出ない、出ても残るという状態です。IBSの相談でいちばん出番の多い1つで、下痢型にも便秘型にも使えます。合っていれば1〜2週間で腹痛の出方が変わります。

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四逆散|緊張が強く、わき腹が張る方に

四逆散(しぎゃくさん)は、気の巡りを整える漢方薬です。ストレスでみぞおちからわき腹に張りが出る、手足が冷えるという方に向きます。肝鬱が前に出ている型です。

桂枝加芍薬湯と合わせて使うこともあります。緊張の場面が決まっている方ほど、こちらの働きが分かりやすく出ます。

手足が冷えるのに、みぞおちには熱がこもった感じがある。この組み合わせは肝鬱の目印で、単なる冷え性とは扱いが変わります。

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半夏瀉心湯|お腹が鳴り、においが強い方に

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は、温める生薬と冷ます生薬を同時に含む漢方薬です。同じ承認基準では、みぞおちがつかえた感じがあり「腹が鳴って軟便または下痢の傾向のあるもの」に用いるとされています。

腹鳴とガスが気になる方、お酒の翌日に下る方に向きます。ガス型で相談に来られる方に、最初に検討する1つです。

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大建中湯|お腹が冷えて張る方に

大建中湯(だいけんちゅうとう)は、お腹を温めて動きを整える漢方薬です。厚生労働省の同じ承認基準では「体力虚弱で、お腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの」に用いるとされています。

便秘型とガス型で使うことが多く、手術のあとの腸の動きにも用いられる漢方薬です。お腹に手を当てると冷たく、ガスが動く感じが外から分かるという方は、この型に当てはまります。

冷たい飲み物を1日に何杯も取る習慣があると、この型は戻りにくくなります。飲むものを常温に替えるところまで含めて1組と考えます。

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啓脾湯・六君子湯|疲れると下る方に

脾虚が前に出ている場合は、補う方向に切り替えます。啓脾湯(けいひとう)は、やせて顔色が悪く、食が細く、何年も軟便が続く方に向きます。

胃のもたれや食欲不振が前に出るなら六君子湯(りっくんしとう)から入ります。承認基準では「体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく」という状態に用いるとされています。

いずれも即効性はなく、2週間で便の形が少し変わり、3か月ほどかけて戻っていきます。

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食事|低FODMAPという考え方

結論: IBSの食事では、腸で発酵しやすい糖質を一時的に減らす方法が知られています。ただし制限を長く続けるのは勧められません。

発酵しやすい糖質を減らす

低FODMAPは、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質を減らす食事法です。オーストラリアの大学で組み立てられ、IBSの症状を軽くする方法として国内でも紹介されています。

対象になるのは、小麦、玉ねぎ、にんにく、牛乳、豆類、りんご、はちみつなど。意外なところでは、無糖のガムに含まれる甘味料もここに入ります。

3週間で試し、1つずつ戻す

やり方は3段階に分かれます。

  1. 除去(3週間): 対象の食品を減らし、症状が軽くなるかを見る。ここで変わらなければ、この方法は合っていない
  2. 再導入(1品目ずつ・各3日): 1つ戻して3日様子を見る。症状が出たらその品目を控える対象として控えておく
  3. 調整: 合わないと分かったものだけを減らし、残りは通常どおり食べる

2の段階を飛ばして1で止まってしまう方が最も多く、これが制限の長期化につながります。

減らしたままで終わらせないことが要点です。制限を続けると栄養が偏り、食べられるものが年々減っていきます。当薬局でも、白いご飯とうどんしか食べられなくなった方のご相談を受けたことがあります。

温度と食べ方も見る

食べる内容と同じくらい、温度と速さが影響します。冷たい飲み物を一気に飲む、急いで食べる。この2つは腸を強く刺激します。

常温に戻す、よく噛む。地味ですが、内容を変える前にここから試す方が失敗が少なくなります。

食べる時刻も影響します。夜遅い食事が続くと、翌朝の症状が強く出る方がいます。何を食べたかだけでなく、何時に食べたかも記録に残しておくと手がかりが増えます。

生活の整え方

結論: IBSでは、朝の順番と睡眠が症状の出方を左右します。腸だけを見るより変化が早く出ます。

朝の組み立てを変える

胃に食べ物が入ると大腸が動き出す反射があり、これが強く出ると朝食後すぐに便意が来ます。IBSの方では、この反射が過敏に働きます。

家を出る時刻を15分早めて、出る前に座る時間を確保する。出先で探す前提から、出る前に済ませる前提へ切り替えるだけで、予測による症状は軽くなります。

朝いちばんに冷たい水を飲む習慣がある方は、常温か白湯(さゆ)に替えるだけで変わることがあります。胃を冷やすと反射が強く出るためです。

睡眠を先に整える

睡眠が足りない日は、腸の症状も強く出ます。自律神経の切り替えが鈍るためです。

食事の見直しより睡眠の方が変化が早い方もいます。何から手を付けるか迷ったら、まず就寝時刻を30分早める。ここから始める方が現実的です。

寝る直前までスマートフォンを見ている方は、そこを削るだけで30分が作れます。新しい習慣を足すより、いま使っている時間を移す方が続きます。

運動は歩くだけで足りる

激しい運動は要りません。1日20〜30分歩くだけで、腸の動きと自律神経の両方に働きます。

ジムに通う計画を立てて続かなかった、という話はよく伺います。続く形にすることの方が、強度より大切です。

通勤で1駅ぶん歩く、昼休みに外に出る。すでにある予定に混ぜ込む形にすると、意志の力を使わずに続きます。3か月続けば、便通の側にも変化が出てきます。

ガス型の扱い

結論: ガス型は、腸の動きより飲み込む空気の量と発酵の起こり方に手を入れます。他の型とは対処が変わります。

飲み込む空気を減らす

早食い、炭酸飲料、ガムを噛む習慣、口呼吸。いずれも空気を飲み込む量を増やします。

おならの多くは、腸で作られたガスと飲み込んだ空気の合計です。発酵を減らす前に、入ってくる空気を減らす方が早い。ここを見落としている方が多くいます。

緊張して唾を飲み込む回数が増えるのも、空気が入る経路です。ガスを気にしている場面そのものが、ガスを増やしていることになります。

音とにおいは別の問題

音が気になるのか、においが気になるのかで手当てが変わります。音は量の問題で、においは腸内細菌の構成と食べたものによります。

肉と脂が多い食事のあとはにおいが強くなります。音が主な悩みなら空気の量、においが主なら食事の内容から見ます。

東洋医学では、においの強いガスを湿熱(しつねつ)の型として扱います。舌の苔が黄色い、口が苦いというサインを伴うなら、温めるものより熱を冷ますものを選びます。

気にするほど増える

ガス型では、気にすること自体が症状を強めます。おならを我慢しようとして腹圧をかけると、かえって腸が張ります。

「授業中に音が出るのが怖くて、水も飲めません」というご相談を受けたことがあります。この段階では、ガスの量より不安の方が生活を狭めています。

この型では、ガスを止めることを目標にしない方がうまくいきます。音が出ても困らない場面を1つずつ増やす、という向きに変える方が現実的です。

実際、我慢をやめた方が量は減ります。腹圧をかけて止めているあいだに腸が張り、次にまとめて出るためです。

治るまでの期間と、やめどき

結論: 漢方薬は、腹痛には1〜2週間、便の形には1〜3か月かかります。生活の整え方は3か月を1つの区切りにします。

何を見て判断するか

最初に変わるのは腹痛の出方です。回数が減る、痛みが軽くなる、痛む時間が短くなる。ここが1〜2週間で動きます。

便の形はもう少しかかります。桂枝加芍薬湯のように緊張をゆるめるものは早く、啓脾湯のように補うものは3か月ほどかかると考えてください。

判断に迷ったら、飲み始めた日と、症状が出なかった日を並べてみてください。良い日が週に何日あるかで比べると、変化が分かりやすくなります。

やめどきは、季節をひとつ越えてから

症状が落ち着いても、すぐにやめません。IBSは気温と生活の変わり目で揺れるため、良い状態を1か月保ってから量を半分に落とします。

春と秋は特に戻りやすい時期です。気温が動く季節をひとつ越えてから減らす方が、結果として飲む総量は少なくて済みます。

生活の変わり目も同じです。異動や引っ越しを控えている時期に減らすと、そのまま戻ってしまうことがあります。

完全に消えることを目標にしない

IBSは、症状がゼロになることより、出ても生活が回る状態を目指す方が現実的です。電車に乗れる、会議に出られる、旅行に行ける。この線を越えると、症状が残っていても困らなくなります。

ゼロを目標にすると、少しの症状で失敗したと感じてしまいます。目標の置き方そのものが、経過を左右します。

実際、この線を越えた方は薬を減らしても戻りにくくなります。困らない状態が続くと、予測による引き金そのものが弱くなるためです。

IBSではない可能性を考えるサイン

結論: 血便・体重減少・夜間の症状・50歳以降の発症。この4つはIBS以外の原因を先に調べる理由になります。

4つの警告サイン

IBSと診断されたあとでも、下の4つが出たら別の原因を先に調べます。診断名がついていると新しい症状も同じものとして片付けてしまいがちで、これが受診を遅らせます。

年齢の項目が入っているのは、発症の時期が診断の手がかりになるためです。若い時期に始まったものと、50歳を過ぎてから初めて出たものでは、疑う対象が変わります。

サイン なぜ重く見るか
血便(赤い血・黒いタール状) 炎症性腸疾患や出血の可能性を先に外す
体重が数か月で3キロ以上減る 吸収の障害や別の疾患を疑う
夜中に目が覚めて下る・痛む IBSは睡眠中に起こりにくいとされる
50歳以降に初めて出た 発症の年齢としては遅く、他の要因を先に調べる

このうち夜間の症状は、ご自身では見落としやすいものです。朝方に下る方は多いのですが、深夜に目が覚めて下る場合は意味が変わります。

診断されたあとでも、変化があれば伝える

一度IBSと診断されても、症状の質が変わったら伝えてください。血が混じるようになった、痛む場所が変わった、体重が落ちた。

診断名がついていると、新しい症状も同じものとして片付けてしまいがちです。IBSは他の病気を除いたうえでつく診断なので、症状の質が変われば前提が変わります。

何年も同じ症状で通っている方ほど、変化を伝えにくくなります。前回と違うという一言だけで、診察の組み立ては変わります。

よくある質問

Q. 過敏性腸症候群は完治しますか?

A. 症状が出ない期間を長く保つことはできますが、体質の要素があるため、ゼロを目標にすると苦しくなります。電車に乗れる、会議に出られるという線を越えることを目安にする方が現実的です。実際、その段階まで来ると症状が残っていても困らなくなります。

Q. ストレスが原因なら、休めば治りますか?

A. そう単純ではありません。一度過敏になった腸は、きっかけが去っても反応のしかたを覚えています。休養で軽くなる方は多いのですが、それだけで戻らない場合は、腸の側に手を入れる必要があります。

Q. 漢方薬はどのくらいで効きますか?

A. 腹痛の出方は1〜2週間で動きます。便の形はもう少しかかり、緊張をゆるめるものなら数週間、吸収の力を補うものなら3か月ほどが目安です。1週間で判断すると、合っているものを捨てることになります。

Q. 病院の薬と漢方薬は一緒に飲めますか?

A. 多くの場合、併用して差し支えありません。当薬局でも、医療機関の薬を続けながら体質に合う漢方薬を足す形をよくご提案しています。ただし甘草を含む漢方薬を複数重ねると1日量が増えるため、2剤以上になるときは薬剤師に確認してください。

Q. 低FODMAPはずっと続けるものですか?

A. 違います。3週間ほど試して症状が軽くなるかを見て、そのあと1品目ずつ戻して自分に合わないものを特定します。制限したままだと栄養が偏り、食べられるものが年々減っていきます。

Q. ガス型にはどの漢方薬が向きますか?

A. お腹が鳴ってにおいが強いなら半夏瀉心湯、冷えて張るなら大建中湯から考えます。ただしガス型では、飲み込む空気の量を減らす方が先に変化が出ることもあります。早食い、炭酸飲料、ガムの習慣を見直すところから始めてください。

まとめ:型を決めてから、順番に手を入れる

IBSは、診断名がついた時点で終わりではなく、そこから型を決める作業が始まります。同じ診断でも、選ぶものは正反対になります。

  • 型を決める: 下痢型・便秘型・混合型・ガス型。半年から1年ごとに見直す
  • 肝鬱と脾虚のどちらが強いか: 緊張する場面で出るなら肝鬱、疲れた日に出るなら脾虚
  • 薬は2段階に分ける: 症状を抑えるものと、過敏になっている理由を減らすもの
  • 食事の制限は期間を決める: 3週間試して、1品目ずつ戻す
  • 4つの警告サイン: 血便・体重減少・夜間の症状・50歳以降の発症は先に受診

最後に、本文で触れなかったことを1つ。症状が出た日ではなく、出なかった日を数えてください。IBSは波があるため、悪い日ばかりが記憶に残ります。出なかった日を数えると、良くなっているかどうかが見えます。この数え方に変えただけで、続ける気持ちが保てるようになった方が何人もいらっしゃいます。

「検査では異常なしと言われたまま止まっている」「薬をもらったが変わらない」という方は、れいわ漢方薬局にご相談ください。症状が出る場面と便の状態を伺ったうえで、体質に合う漢方薬と、手を入れる順番をご提案します。

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れいわ漢方薬局 無料漢方相談(来店・ビデオ通話・LINEチャット)
執筆者 濵田篤秀(薬剤師)

執筆者:濵田 篤秀

れいわ漢方薬局 渋谷店 薬剤師/博士(医学)

れいわ漢方薬局渋谷店

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東京都渋谷区渋谷1-14-14
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