「冷えに良いと聞いた漢方薬を試したが変わらなかった」「手足だけが冷たいのに、お腹を温める薬を勧められた」――冷え性についてのご相談は、当薬局でも一年を通していただきます。
結論からお伝えすると、冷え性には4つのタイプがあり、どれに当てはまるかで選ぶ漢方薬が変わります。同じ冷えでも、足りないのか、滞っているのかで方向が正反対になります。
当薬局では、どこが冷えるか、いつから冷えるか、温めると戻るかを伺って見立てています。冷え性という言葉ひとつでは、選ぶところまで進めません。
この記事では、冷え性を漢方でどう捉えるか、4つのタイプの見分け方、タイプ別の漢方薬、末端の冷えとお腹の冷えの違い、飲み方と期間の目安、医療機関での確認が先になる場合までを、日々ご相談を受けている薬剤師の視点でまとめます。
冷え性を漢方でどう捉えるか
結論: 漢方では、冷えを温める力の不足だけでなく、巡りの滞りとしても捉えます。ここが西洋医学との大きな違いです。
病名ではないが、扱う枠組みはある
冷え性は病名ではありません。検査で異常が出ないことがほとんどで、医療機関で相談しても様子を見ましょうと言われた経験のある方が多くいらっしゃいます。
一方、漢方には冷えを扱う枠組みが古くからあります。添付文書の効能・効果に冷え症という言葉が入った漢方薬も複数あり、選択肢として整理されています。
温める力と、届ける力
冷えの原因を、漢方では大きく2つに分けます。1つは温める力そのものが足りない状態。もう1つは、温める力はあるのに末端まで届いていない状態です。
足りないのか、届いていないのか。この2つを取り違えると、温める漢方薬を飲んでも変わらないという結果になります。
巡らせるものは3つ
漢方では、体を巡るものを気・血・水の3つで考えます。気は動かす力、血は栄養と温かさを運ぶもの、水は潤すものです。
このどれが足りないか、あるいは滞っているかで、冷えの出方が変わります。次の章で扱う4つのタイプは、この組み合わせから生まれています。
冷え性の4つのタイプ
結論: 血が足りない、血が滞る、温める力が足りない、気が滞る。この4つで大半の冷えが説明できます。
タイプ1|血が足りない
顔色が悪い、爪が割れやすい、髪が細い、立ちくらみがする、生理の量が少ない。血が足りず、末端まで温かさが運べていない状態です。
手足の先が冷たく、しもやけができやすいのが特徴になります。若い女性に多く見られるタイプです。
タイプ2|血が滞る
顔色がくすむ、唇の色が暗い、生理痛が重い、経血に塊が混じる、肩こりがひどい。血はあるのに流れが滞っている状態です。
手足は冷たいのに顔はほてるという、上下の温度差が出やすいのがこのタイプです。冷えのぼせと呼ばれます。
タイプ3|温める力が足りない
お腹が冷たい、下痢しやすい、寒がりで冬がつらい、夜間にトイレに起きる、腰が重い。温める力そのものが落ちている状態です。
年齢とともに増えるタイプで、末端だけでなく体の芯から冷えます。
タイプ4|気が滞る
ストレスがかかると冷える、ため息が多い、喉が詰まる感じがある、気分の波がある。緊張で血管が縮み、末端に届かなくなる状態です。
冷たいときと平気なときの差が大きいのが特徴です。緊張する場面で手が冷たくなる方が該当します。
| タイプ | 主な特徴 | 冷える場所 | 代表的な漢方薬 |
|---|---|---|---|
| 血が足りない | 顔色が悪い、爪が割れる | 手足の先 | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) |
| 血が滞る | くすみ、生理痛、塊 | 手足(顔はほてる) | 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) |
| 温める力が足りない | お腹が冷たい、下痢 | 体の芯、腰 | 人参湯(にんじんとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん) |
| 気が滞る | ストレスで変動する | 手足(波がある) | 加味逍遙散(かみしょうようさん)、四逆散(しぎゃくさん) |
タイプ1|血が足りない冷えと漢方薬
結論: 手足の先が冷たく、しもやけができやすい方。血を補いながら温める方向の漢方薬が候補になります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
末端の冷えに用いられる代表的な漢方薬です。効能効果には冷え症が明記されており、手足の冷えが強い方に選ばれます。
名前が長く覚えにくいのですが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)と読みます。呉茱萸と生姜が温める力を足した形です。
当帰芍薬散
冷えに加えて、むくみや生理不順がある方に向かいます。血を補いながら水をさばく組み立てで、女性の相談で最も広く使われる漢方薬の1つです。
顔色が青白く、疲れやすく、めまいや立ちくらみが並ぶ形が典型になります。
温経湯
手足のほてりと冷えが混ざり、唇が乾く方に用いられます。効能効果には冷え症のほか、月経不順や不眠が含まれます。
血を補う方向のなかでも、乾きが目立つ方に選ばれる形です。
見分けの目安
しもやけができるかどうかが、分かりやすい手がかりになります。できるなら血が足りていない可能性が高く、この系統が候補です。
タイプ2|血が滞る冷えと漢方薬
結論: 手足は冷たいのに顔はほてる。この上下の差がある方は、温めるだけでは変わりません。
桂枝茯苓丸
血の滞りに向かう代表的な漢方薬です。効能効果には、のぼせて足冷えなどを訴えるものという条件が入っています。
生理痛が重い、経血に塊が混じる、肩こりがひどい、顔色がくすむ。こうした様子が並ぶ方に選ばれます。
温めるだけでは逆になることがある
このタイプに温める力の強い漢方薬を使うと、上半身のほてりが増すことがあります。顔が赤くなる、のぼせが強まる、眠れなくなる。
冷えているから温める、という単純な足し算にならないのが、冷え性の難しいところです。
滞りをほどいてから温める
流れが戻ると、もともとある温かさが末端まで届くようになります。滞りが強い方では、この順序を守るほうが早く進みます。
当薬局では、上下の温度差が大きい方には、まず滞りに向かう組み立てから始めることが多くあります。
見分けの目安
顔や頭が熱く、足が冷たい。この差がはっきりしているなら、このタイプの可能性が高くなります。舌の裏の血管が太く暗い色をしているのも手がかりです。
タイプ3|温める力が足りない冷えと漢方薬
結論: お腹が冷たく、下痢しやすい方。体の芯から温める方向が候補になります。末端だけを温めても、供給元が足りていません。
人参湯
お腹が冷えて下痢しやすい方に向かう漢方薬です。人参、乾姜、白朮、甘草の4つでできています。
食欲がない、胃が冷たい、水のような便が出る。こうした様子が並ぶ形です。
八味地黄丸
年齢とともに増える冷えに用いられます。効能効果には、疲れやすくて四肢が冷えやすくという条件が入っています。
腰が重い、夜間にトイレに起きる、足がしびれる。50代以降のご相談で候補に挙がることが多い漢方薬です。
苓姜朮甘湯
腰から下が冷えて重い、腰が水に浸かっているように感じるという方に向かいます。名前のとおり、茯苓、乾姜、白朮、甘草の4つです。
下半身に絞って冷えが出る方に選ばれる形です。
補中益気湯
冷えというより、疲れて全身の力が落ちている方に向かいます。温める力の土台そのものを底上げする方向です。
冷えが主訴でなく、疲れやすさが前面にある場合の選択肢になります。
タイプ4|気が滞る冷えと漢方薬
結論: ストレスがかかると冷える、日によって差が大きい。緊張をほどく方向が候補です。
加味逍遙散
気の巡りの詰まりとこもった熱に向かう漢方薬です。効能効果に冷え症が含まれており、イライラやほてりを伴う冷えに用いられます。
生理前に症状が強くなる、肩こりがある、気分の波がある。こうした様子が並ぶ形です。
四逆散
緊張が強く、手足が冷たくなる方に用いられます。柴胡、芍薬、枳実、甘草の4つでできた、比較的単純な組み立てです。
人前に出ると手が冷たくなる、緊張でお腹が痛くなるという方が該当します。
半夏厚朴湯
喉が詰まる感じがあり、気分がふさぐ方に向かいます。冷えそのものより、気の滞りが主訴の場合の選択肢です。
見分けの目安
冷えの程度が日によって大きく変わるかどうかを見ます。いつも冷たいのではなく、場面によって変わるなら、このタイプの可能性が高くなります。
自分のタイプを確かめる5つの問い
結論: どこが冷えるか、いつ冷えるか、他に何が並ぶか。この3方向から絞ります。1つのタイプに収まらない方が多いので、強く出ているものから見ます。
順番に確かめる
- 冷えるのは手足の先だけか、お腹や腰も冷たいか
- 顔や頭がほてることがあるか
- 冷えの程度が日によって大きく変わるか
- 生理痛や経血の塊があるか(女性の場合)
- 下痢しやすいか、夜間にトイレに起きるか
1番でお腹や腰が冷たいならタイプ3、2番が当てはまればタイプ2、3番ならタイプ4、5番ならタイプ3が候補になります。
複数に当てはまることが多い
実際には、1つのタイプにきれいに収まる方は多くありません。血が足りていて、なおかつ滞っているという方もいらっしゃいます。
その場合は、いま最も強く出ている症状から手を入れます。全部を一度に扱おうとすると、組み立てが散らかります。
お腹を触ってみる
自分で確かめられる方法として、手のひらでへその周りを触る方法があります。胸のあたりより明らかに冷たければ、お腹の冷えがある形です。
手足だけが冷たいのか、体の芯まで冷たいのか。ここが最初の分岐点になります。
効能効果に冷え症と書かれた漢方薬
結論: 添付文書に冷え症が明記された漢方薬は複数あります。ただし、書かれているからといって誰にでも合うわけではありません。
表記は冷え症
一般には冷え性と書きますが、添付文書では冷え症と表記されます。同じものを指していますが、引用するときは記載どおりになります。
前置きが選び分けを決める
たとえば当帰芍薬散の効能効果は、体力虚弱で、冷えやすく貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり等を訴えるものという条件から始まります。
冷え症という言葉が入っているかどうかより、その前の条件に当てはまるかが実際の分かれ目です。
書かれていない漢方薬にも出番がある
一方、効能効果に冷え症と書かれていなくても、冷えの背景に向かう漢方薬はあります。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や四逆散がその例です。
効能効果の言葉だけで探すと、選択肢が狭くなります。
末端の冷えとお腹の冷えは別物
結論: 手足の先だけが冷たいのと、お腹や腰まで冷たいのとでは、向かう方向が違います。
末端だけが冷たい場合
体の芯には温かさがあるのに、末端まで届いていない状態です。血が足りない、あるいは巡りが滞っているタイプが該当します。
この場合、体の芯を温める漢方薬を使っても手足には届きません。届ける側に手を入れる必要があります。
お腹や腰まで冷たい場合
温める力そのものが落ちている状態です。末端だけを温めようとしても、供給元が足りていません。
この形では、芯を温める方向が土台になります。
両方ある場合
芯も冷たく、末端はさらに冷たい。この形では、まず芯から温めて、届ける側は後から手を入れます。
順番を間違えると、どちらも中途半端になるため、当薬局では最初にどちらが強いかを伺っています。
触って確かめる
自分の手でお腹と足を触り比べると、おおよその見当が付きます。お腹が温かく足だけ冷たいなら末端型、両方冷たいなら芯からの冷えです。
冷えと一緒に出やすい不調
結論: 生理痛、頭痛、下痢、むくみ、肩こり、眠りの浅さ。冷えが背景にあると、これらが同時に出ます。
生理痛
冷えると子宮の周りの巡りが落ち、痛みが強くなります。温めると楽になるという生理痛は、冷えが背景にある形です。
冷えに手を入れると、痛み止めを使う日数が減ることがあります。
頭痛と肩こり
首や肩が冷えると筋肉が縮み、頭痛につながります。冬に頭痛が増えるという方は、この経路が疑われます。
首を覆うだけで変わる方が実際にいらっしゃいます。
下痢と腹痛
お腹が冷えると腸の動きが乱れます。冷たいものを摂った後に決まって下痢をするなら、分かりやすい形です。
むくみ
巡りが落ちると水も動かなくなります。冷えとむくみが同時に出るのは、この理由によります。
別々の不調として別々に手当てしようとすると、飲むものが増えるばかりで整理が付きません。背景を1つと見るほうが扱いやすくなります。
眠りの浅さ
足が冷えていると、寝つきにくく、夜中に目が覚めやすくなります。靴下1枚で変わる方もいます。
飲み方と続け方|5つの手順
結論: 空腹時に、温かい状態で、季節をまたいで見ます。冷え性は季節で変動するため、判断に時間がかかります。
飲むタイミングと回数
食前30分、または食後2時間ほど経った食間が基本です。1日2回から3回に分けます。
冷たい水で飲むと、温める方向と打ち消し合います。白湯(さゆ)か常温の水で飲んでください。
続けるための5つの手順
- 飲み始める前に、手足とお腹の冷たさを3段階で記録する
- 朝と夜の決まった時間に飲む場所を固定する
- 最初の2週間は胃の様子だけを見る
- 4週間ごとに1番をもう一度記録し、前回と並べる
- 季節が変わる時期には、量を見直す機会を持つ
5番目が冷え性に特有の部分です。夏に楽になり冬に戻るのは自然なことで、それ自体は失敗ではありません。
飲み忘れたときの扱い
気づいた時点で1回分を飲み、次の回まで時間が近ければ飛ばします。まとめて2回分を飲むことは避けてください。
効果が出るまでの期間と続け方の目安
結論: 手先の感覚は2週間から1か月、体質としての冷えにくさは3か月から6か月が目安です。
最初に変わるところ
冷たさそのものより、戻る速さが先に変わります。以前は一度冷えると1時間戻らなかったのが、20分で戻るようになる。
この変化は本人しか分からないため、記録がないと拾えません。冷たいかどうかではなく、戻るまでの時間を見ると早く手ごたえが確かめられます。
期間の目安
2週間から1か月で戻る速さが変わり、3か月から6か月で冷えにくさが定着してくる、というのが実際の経過です。当薬局のご相談でも、4週間の時点で戻る速さの変化を挙げられる方が6割ほどを占めます。
冷え性は長い時間をかけて作られた状態なので、数週間で判断できるものではありません。
季節の影響を差し引く
夏に飲み始めた方は、楽になったのが漢方薬のおかげか季節のおかげか分かりません。冬をまたいで初めて判断できる、という場面があります。
当薬局では、記録に気温や季節も添えていただくようお伝えしています。
冷え性で見落とされやすい3つのこと
結論: 自覚のない冷え、夏の冷え、そして冷えを感じない冷え。この3つは相談のなかでよく出てきます。
本人が冷えを自覚していない場合
手を触ると明らかに冷たいのに、本人は冷えを感じていないことがあります。長く続いていると、その状態が基準になってしまうためです。
家族に手を握ってもらう、あるいは自分の首筋に手を当てて温度差を見る。この方法で気づかれる方が実際にいらっしゃいます。
夏のほうがつらい場合
冷房の効いた場所で長時間過ごす方は、夏のほうが冷えます。薄着で、冷たいものを摂り、汗で体温を奪われる。条件が重なる季節です。
冷え性は冬の話だと思われがちですが、夏に悪化して冬まで引きずるという流れも珍しくありません。
のぼせているのに冷えている場合
顔が熱く汗をかくので、本人は暑がりだと考えている。ところが足を触ると氷のように冷たい。
この形は血が滞っているタイプで、暑がりだから冷え性ではないという判断が、対処を遅らせます。
冷えを取ると別の症状も動く
冷えが背景にある不調は数多くあります。生理痛、頭痛、下痢、むくみ、肩こり、眠りの浅さ。
冷えに手を入れると、あわせてこれらが軽くなることがあります。冷えだけを見て判断すると、動いている部分を見落とします。
季節ごとの過ごし方
結論: 夏は冷やさないこと、冬は温めること。同じ冷え性でも、季節で手の入れ方が変わります。
夏の過ごし方
冷房の効いた場所では、首・手首・足首を覆います。薄手のストールと靴下1枚で、体感が大きく変わります。
冷たい飲み物を常温に変える。氷を入れないだけでも違いが出ます。あわせて、シャワーで済ませず湯船に浸かる日を週に3日ほど作ると、冬の入り方が変わります。
秋の過ごし方
気温が下がり始める時期に、体が追いつかないことがあります。夏に冷えを溜め込んだ方ほど、この時期に不調が出ます。
冷えの記録を始めるなら、この季節が向いています。冬に向けて悪化するのか、対策で保てるのかが見えます。
冬の過ごし方
腰と下腹部を冷やさないことが要点です。カイロを腰に貼る、腹巻きを使う。末端だけを温めるより、こちらのほうが全身に効いてきます。
春の過ごし方
気温の上下が激しく、自律神経が揺れやすい時期です。急に薄着にすると戻ることがあります。
暖かくなったから大丈夫と判断して量を減らすのは、この時期に限っては早すぎることがあります。
医療機関での確認が先になる場合
結論: 急に始まった、片側だけ、しびれや痛みを伴う。こうした冷えは別の原因を疑います。
急に始まった冷え
以前は冷えなかったのに、ここ数か月で急に冷えるようになった。この場合、甲状腺の働きの低下や貧血が背景にあることがあります。
血液検査で分かることが多いため、確認を先に受けるほうが早く進みます。
片側だけが冷たい
左右で明らかに差がある、片方の足だけが冷たい。血管の問題が疑われる形です。
歩くと痛くなって休むと治る、という症状が並ぶ場合は、特に確認が要ります。
しびれや痛みを伴う
冷えに加えて、しびれ、痛み、色の変化がある。神経や血管の問題が関わっている可能性があります。
糖尿病の治療を受けている方
血糖の状態によって、末梢の神経や血管に影響が出ることがあります。冷えやしびれを漢方薬だけで様子を見るのは避けたい場面です。
主治医に伝えたうえで、併用という形で進めます。
手足の色が変わる場合
寒いところで手足が白くなり、その後に紫や赤へ変わる。この形は、単なる冷え性とは別に扱われることがあります。
色の変化がはっきりしている、痛みを伴う、指先に傷ができるといった場合は、医療機関での確認が要ります。漢方薬を併用すること自体は妨げませんが、順序として確認が先です。
確認を受けたうえで併用する
検査で何かが見つかった場合でも、漢方薬を併せることはできます。治療を土台にしたうえで、残っている冷えに対して使うという形です。
当薬局では、飲んでいる薬と検査の結果を伺ったうえで組み立てています。
剤形と量の選び分け
結論: 冷え性はタイプが混ざりやすいため、比重を調整できる形が効いてきます。エキス剤では片方しか選べない場面が出てきます。
エキス剤の特徴
決まった組み立てをそのまま飲む形です。続けやすく、外出先でも飲めます。
タイプがはっきり1つに絞れる方であれば、これで足ります。
煎じ薬の特徴
温める側と巡らせる側の比重を、その方に合わせて調整できます。冷え性ではここが効いてくる場面が多くあります。
血が足りていて、なおかつ滞っている。この形は実際に多く、エキス剤では片方しか選べません。煎じ薬なら両方を組み込めます。
毎日20分から30分ほど煮出す手間はかかります。手ごたえが出なかった方が、組み直した煎じ薬で動くことは実際にあります。
温かい状態で飲む
どの剤形でも、温かい状態で飲むほうが理にかなっています。冷たい水で飲むと、温める方向と打ち消し合います。
エキス剤なら湯に溶かす、煎じ薬なら温め直す。ひと手間ですが差が出る部分です。
季節で量を変える
冬に量を増やし、夏は減らす。冷え性ではこの調整が理にかなっています。年間を通して同じ量である必要はありません。
冷えと女性のからだ
結論: 生理、妊娠、更年期。女性の体は時期によって冷えの出方が変わるため、同じ組み立てを続ければよいとは限りません。
生理のある時期
生理のたびに血を失うため、血が足りないタイプの冷えが出やすくなります。生理後に特に冷えるという方は、この形が疑われます。
生理痛や経血の塊が並ぶなら、血の滞りも重なっている可能性があります。
妊娠を望む時期
冷えと妊活の関係は相談の多いテーマです。ただし冷えを取れば授かるという単純な話ではありません。
漢方薬のなかには妊娠中に慎重に扱うものがあるため、妊娠の可能性がある時期は必ず伝えていただく必要があります。
産後の時期
出産で血を失い、睡眠も細切れになります。この時期に冷えが強くなる方は多くいらっしゃいます。
授乳中の場合は、飲むものを産婦人科に伝えたうえで判断する形になります。
更年期にさしかかる時期
冷えとほてりが同時に出るのが、この時期の特徴です。冷えのぼせと呼ばれる形で、上下の温度差が大きくなります。
温めるだけでは上半身のほてりが増すため、巡りに向かう組み立てが土台になります。
飲みながら見直したい食事と生活|4つの着眼点
結論: 温める食べ物、冷やす習慣、筋肉を動かす量、そして服の選び方。飲むものと並行して動かします。
温かいものを摂る
朝の1杯を冷たい水から白湯に変える。これだけでも続けると違いが出ます。
生姜、ねぎ、にんにく、根菜。加熱して食べるものを増やすほうが、生野菜を多く食べるより理にかなっています。
冷やす習慣を減らす
氷入りの飲み物、アイスクリーム、夏場の薄着、冷房の効いた部屋での長時間。頻度を半分にするだけでも変わります。
やめる必要はありませんが、冷やす習慣を続けたまま温める漢方薬を飲むのは、綱引きをしているようなものです。
ふくらはぎを動かす
ふくらはぎの筋肉は、下半身の血を上に戻す働きを担っています。座りっぱなしの時間が長いと、この働きが止まります。
1時間に1回立ち上がる、かかとの上げ下げを20回する。1日20分の歩行も効いてきます。週に3日でも続けると、冬の入り方が変わる方がいます。
首・手首・足首を守る
この3か所は皮膚が薄く、太い血管が通っています。ここを冷やすと全身が冷えやすくなります。
夏の冷房でも、靴下1枚とストールで体感が変わります。あわせて、腰と下腹部を冷やさないことも重要です。
よくある質問
Q. 冷え性に効く漢方薬はどれですか?
A. 1つに決まりません。血が足りない、血が滞る、温める力が足りない、気が滞るという4つのタイプがあり、それぞれ向かう漢方薬が違います。手足だけが冷えるのか、お腹まで冷たいのか、顔がほてることがあるか。この3点を確かめてから選んでください。
Q. 温める漢方薬を飲んでも変わりません。何が違うのでしょうか?
A. 温める力が足りないタイプではない可能性があります。血が滞っているタイプでは、温めるだけでは末端まで届きません。顔や頭がほてる一方で手足が冷たいなら、滞りをほどく方向が先になります。
Q. どのくらいで手ごたえが出ますか?
A. 2週間から1か月で、冷えたときに戻る速さが変わってきます。冷えにくさが定着するには3か月から6か月かかります。冷たいかどうかではなく、戻るまでの時間を記録すると早く確かめられます。
Q. 夏でも飲んだほうがいいですか?
A. 冷え性の方は、夏こそ冷房で冷えていることがあります。ただし季節で症状が軽くなるなら、量を減らす判断もあります。年間を通して同じ量である必要はなく、季節の変わり目に見直す機会を持つのが現実的です。
Q. 複数のタイプに当てはまります。どれから手を付ければいいですか?
A. いま最も強く出ている症状から手を入れます。1つのタイプにきれいに収まる方は多くありません。血が足りていて、なおかつ滞っているという形は実際によく見られます。全部を一度に扱おうとすると組み立てが散らかるため、当薬局では主訴に近いところから始め、動いてきたら次を足すという進め方をしています。
Q. 冷えが取れると、他の不調も変わりますか?
A. 変わることがあります。生理痛、頭痛、下痢、むくみ、肩こり、眠りの浅さ。これらは冷えが背景にあると同時に出やすいものです。冷えだけを見て判断すると、動いている部分を見落とします。記録は冷えと並べて、気になっている他の症状も残しておくと変化が拾えます。
Q. 市販のものと薬局で作るものは違いますか?
A. 生薬の組み合わせが同じでも、1日量や配合の比率が異なることがあります。冷え性はタイプが混ざっている方が多く、煎じ薬なら温める側と巡らせる側の比重を調整できます。市販品で手ごたえがなかった方が、組み直した煎じ薬で動くことは実際にあります。
まとめ
冷え性には4つのタイプがあります。血が足りない、血が滞る、温める力が足りない、気が滞る。同じ冷えでも背景が違うため、選ぶ漢方薬も変わります。
最初の分岐点は、手足の先だけが冷たいのか、お腹や腰まで冷たいのかです。末端だけなら届ける側、芯まで冷たいなら温める側に手を入れます。ここを取り違えると、温める漢方薬を飲んでも変わりません。
特に見落とされやすいのが、手足は冷たいのに顔はほてるという形です。冷えているから温めるという足し算にすると、のぼせが増すことがあります。滞りをほどいてから温めるという順序が要ります。
冷え性は季節で変動するため、判断に時間がかかります。当薬局では、冷たさそのものではなく戻る速さを記録していただき、体に合わせた煎じ薬をお作りしています。自分がどのタイプか分からないときは、公式LINEからお気軽にご相談ください。


