妊娠初期の下痢は大丈夫?受診の目安と気をつけたいこと

妊娠初期の下痢は大丈夫?受診の目安と気をつけたいこと 下痢

「お腹が下ると、赤ちゃんに何かあるのではと不安になります」「市販の下痢止めを飲んでいいのか分からず、我慢しています」――妊娠初期の下痢について、この2つはよく伺うご相談です。

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妊娠中はホルモンの変化で腸の動きが乱れやすく、下痢も便秘も起こります。心配なのは下痢そのものより、脱水と、我慢して水分を控えてしまうことです。

れいわ漢方薬局では、妊娠中のご相談で週数と産科の方針を必ず伺います。使える薬が限られるため、産科と食い違わない範囲でお伝えする必要があるからです。

この記事では、妊娠初期に下痢が起きる理由、受診の目安、市販薬の扱い、脱水の防ぎ方、食事、つわりとの重なりまでを扱います。

妊娠初期に下痢が起きる理由

結論: ホルモンの変化、つわりによる食事の乱れ、においや味の好みの変化。この3つが重なって、腸の動きが不安定になります。

ホルモンの影響

妊娠すると黄体ホルモンが増え、腸の動きを抑える方向に働きます。このため便秘になる方が多いのですが、同じ時期に下痢が出る方もいます。

体の変化が急なぶん、腸の動きが一定しません。便秘と下痢が入れ替わるという訴えも、この時期には珍しくありません。

ホルモンの変化そのものは止められません。手を入れるのは、食べ方と冷えの側になります。

つわりで食事が変わる

食べられるものが限られ、同じものばかりになる。冷たいものしか受け付けない。食事の時間が不規則になる。

つわりの時期は、こうした変化が重なります。冷たい飲み物やゼリーばかりを取っていると、それだけで腸が冷えて下ることがあります。

食べられるものを食べるのが優先ですが、温度だけは意識しておくと違います。常温に戻す、少し温める。この一手で変わる方がいます。

においと味の好みの変化

妊娠前は平気だった食べ物が受け付けなくなる。逆に、それまで食べなかったものを大量に食べるようになる。

急に量が増えたものが引き金になっていることがあります。果物、乳製品、炭酸飲料。心当たりがあれば、量を減らして2〜3日様子を見ると分かります。

つわりの時期に食べられるものは限られます。完全にやめるのではなく、量を半分にするところから試す方が現実的です。

心配しすぎなくてよいこと

結論: 通常の下痢が、直接の原因で妊娠に影響することは考えにくいとされています。心配なのは脱水の側です。

下痢そのものより脱水

下痢のときに腸が動くと、お腹全体が張るように感じられます。この感覚から、赤ちゃんへの影響を心配される方が多くいます。

ただし、腸の動きと子宮の収縮は別のものです。通常の下痢で問題になるのは、水分と電解質が失われることの方です。

不安から水分を控えてしまうと、そちらの方が体に響きます。飲む量を減らす対処は勧められません。

我慢しない

「薬を飲めないので、我慢するしかないと思っていました」というお話をよく伺います。我慢することに医学的な利点はありません。

回数が多くて眠れない、外出できない、食事が取れない。この状態が続くなら、産科に相談する理由として十分です。妊娠中だから相談できない、ということはありません。

健診の日まで待つ必要もありません。電話で状態を伝えれば、来た方がよいかどうかを判断してもらえます。

一人で判断しない

インターネットで調べると、不安を強める情報にも当たります。妊娠中は特に、情報の量が判断を難しくします。

週数、症状の程度、これまでの経過。これらを踏まえて判断できるのは、経過を見ている産科です。迷ったときは、そこに聞くのがいちばん早く済みます。

調べる時間を、連絡する時間に充てる方が確実です。数分の電話で、不安の大半は整理できます。

受診の目安

結論: 発熱、血便、強い腹痛、水分が取れない、尿が半日出ない。このどれかがあれば、その日のうちに産科へ連絡します。

すぐ連絡するサイン

下の6つは、日数に関わらず連絡する理由になります。妊娠中は判断を後回しにしにくい場面が多いため、迷ったら連絡する側に寄せて構いません。

特に見落とされやすいのが、水分が取れないことと尿が出ないことの2つです。症状として自覚しにくく、下痢の回数ばかりに意識が向きます。

サイン 具体的な状態
発熱 38度前後の熱を伴う
血が混じる 赤い血、黒いタール状の便
強い腹痛 差し込むような痛み、お腹が張って硬い
水分が取れない 吐いてしまう、飲めない
尿が出ない 半日以上出ていない
出血 性器からの出血を伴う

このうち性器出血と強い腹痛は、下痢とは別に確かめる必要があります。下痢のせいだと決めつけず、そのまま伝えてください。

日数の目安

サインが無い場合でも、3日以上続くなら一度連絡しておく方が安心です。妊娠していない場合の目安は2週間ですが、妊娠中は脱水が進みやすいため短く見ます。

つわりで水分が取りにくい時期は、さらに早く判断します。飲めていないという事実そのものが、連絡する理由になります。

産科の側も、この時期の相談には慣れています。大げさかどうかを気にする必要はありません。

連絡するときに伝えること

いつから、1日に何回、便の色、熱の有無、飲めている量。この5つを伝えれば足ります。

書き出しておくと、電話でも慌てずに済みます。記憶で答えると、飲んだ量は多めに、下った回数は少なめに見積もる方がほとんどです。

母子健康手帳に書き込んでおくのも1つの方法です。次の健診でそのまま見せられます。

連絡する時間帯に迷う方もいますが、判断に迷う症状があるなら夜間でも構いません。産科には連絡先が用意されています。

市販薬は自己判断で使わない

結論: 市販の下痢止めには、妊娠中の使用に注意が必要なものがあります。産科か薬剤師に確認してから選びます。

成分によって扱いが違う

ロペラミドを含むもの、木クレオソートを含むもの、吸着・収れん成分のもの。市販の下痢止めは3種類に分かれ、それぞれ注意書きが異なります。

「市販薬だから大丈夫」という前提は置かない方が安全です。箱の注意書きを読み、妊娠中の記載を確かめてください。判断がつかない場合は、薬剤師に週数を伝えて相談する形になります。

整腸剤は比較的使いやすい

乳酸菌や酪酸菌を含む整腸剤は、妊娠中でも使いやすい部類に入ります。産科で処方されることもあります。

止める薬ではないため、今日の回数を減らす目的には向きません。ただし、腸内細菌を整えるという方向では続けて差し支えありません。

効いてくるまでに数週間かかります。1週間で判断せず、続けながら経過を見る形になります。

自己判断で始める前に、一度産科に伝えておくと安心して続けられます。

処方されたものは指示どおりに

産科で薬が出た場合は、指示どおりに使います。妊娠中の状態を踏まえて選ばれているためです。

飲むか迷ったときも、自己判断でやめず、まず出した先に確認します。電話で1本聞くだけで済むことがほとんどです。

もらったまま飲まずに置いている、という方も少なくありません。飲まない理由があるなら、それも伝えておくと次の判断が変わります。

脱水を防ぐ

結論: 妊娠中は脱水が進みやすい時期です。水だけでは戻らないため、糖と塩を含む水分を少量ずつ、常温で取ります。尿が半日出ていないなら、量が足りていません。

水だけでは戻らない

下痢で失われるのは水分だけではありません。ナトリウムやカリウムといった電解質が一緒に出ていきます。

経口補水液が最も適しています。手元に無ければ、湯冷まし1リットルに塩を小さじ2分の1、砂糖を大さじ4ほど加えたもので代用できます。糖と一緒だとナトリウムの吸収が進むため、この組み合わせに意味があります。

少量を何度も、常温で

コップ1杯を一気に飲むと、それが刺激になって次の下痢を呼ぶことがあります。大さじ1〜2杯ずつを5分おきに、という取り方の方が体内に残ります。

つわりを伴っているときは特にこの飲み方が向きます。冷たいものは腸への刺激になるため、常温に戻す方が負担が小さくなります。

飲めた量を書き出すと、足りているかどうかが分かります。尿が半日出ていないなら、飲めている量が足りていません。

飲めないときは連絡

吐いてしまう、飲んでもすぐ出てしまう。この状態では、口から入れる方法では追いつきません。

点滴が必要な段階なので、産科に連絡してください。妊娠中はつわりと重なることがあり、判断が遅れやすい場面でもあります。

吐き気が強いときは、少量を何度も試して、それでも受け付けないかどうかを見ます。大さじ1杯が入らないなら、待たずに連絡する段階です。

食事の整え方

結論: 食べられるものを優先しながら、温度と量だけ調整します。制限を増やす時期ではありません。

温度から変える

冷たい飲み物、冷蔵庫から出したての果物、氷入りのお茶。つわりで冷たいものを好むようになる方は多く、それが腸を冷やしていることがあります。

常温に戻す、少し温める。この一手だけで回数が減る方は少なくありません。内容を制限する前に、温度から試す順番です。

つわりで冷たいものしか受け付けない場合は、氷を抜くだけでも違います。冷蔵庫から出して少し置く、という程度で構いません。

避けたいもの

脂の多いもの、香辛料、カフェイン、そして下痢の直後は牛乳。下痢の時期は乳糖を分解する働きが一時的に落ちるため、いつもは平気な方でも下ります。

ただし、つわりで食べられるものが限られている場合、無理に外す必要はありません。食べられるものを食べることの方が優先されます。

制限を増やすと、食べられるものがさらに減ります。この時期は、外すより温度と量で調整する方が向きます。

量を分ける

1回の量を減らして3〜4回に分けると、腸への負担が小さくなります。つわりの時期は、そもそも一度に食べられないことも多くあります。

食べられるときに少しずつ、という形で構いません。空腹の時間が長くなると気持ち悪さが強まる方もいるため、この分け方は両方に働きます。

枕元に食べられるものを置いておく方もいます。起き抜けの気持ち悪さが強い時期には、この工夫が役に立ちます。

漢方薬を使う場合

結論: 妊娠中に使える漢方薬は限られます。自己判断で始めず、産科の方針を確かめたうえで選びます。

大黄を含むものは避ける

大黄(だいおう)は便通をつける生薬で、子宮の収縮に影響する可能性があるため、妊娠中は慎重に扱われます。

痔に使う乙字湯(おつじとう)、便秘に使う大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)麻子仁丸(ましにんがん)など、大黄を含む漢方薬は複数あります。下痢に使うものではありませんが、便秘の時期に手を出さないよう知っておく意味があります。

妊娠中は便秘と下痢が入れ替わることがあり、便秘の時期に市販の漢方薬へ手が伸びやすくなります。この点だけ覚えておくと迷いません。

産科に確認してから

妊娠中は、漢方薬であっても自己判断で始めません。産科で処方されることもあるため、まずそこで相談する順番になります。

当薬局にご相談いただく場合も、妊娠の有無と週数を必ず伺います。産科の方針と食い違わない範囲でしかお伝えできないためです。

すでに産科で漢方薬が出ている場合は、それを続けながら生活の側を整える形をご提案しています。

冷えへの手当ては薬以外でもできる

腹巻き、湯たんぽ、飲み物の温度。冷えへの手当ては、薬を使わずにできる部分が多くあります。

妊娠中は特に、この方向から始める意味があります。薬に頼らずできることを先に試すという順番が、この時期には合っています。

下腹部と足元を温めるだけで、腸の動きは変わります。夏でも冷房の効いた場所では、ひざ掛けを1枚使う価値があります。

つわりとの重なり

結論: つわりと下痢が重なると、水分が取れずに脱水へ進みやすくなります。この組み合わせは早めに相談します。

水分が二重に失われる

吐いて失う、下痢で失う。この2つが重なると、口から入る量が追いつきません。

つわりが強い時期に下痢が加わったら、通常より早く判断します。1日の尿の回数が減っている、立ちくらみがするという段階で産科に連絡してください。

尿の色も目安になります。濃くなっているなら、飲めている量が足りていません。

つわりの吐き気で水分が取れない時期は、下痢が加わると一気に進みます。下痢の回数だけを見ていると、この重なりを見落とします。

食べられるものが減る

つわりで食べられるものが限られている時期に下痢が加わると、選択肢がさらに狭まります。

この時期は、栄養より水分が優先されます。食べられなくても、飲めていれば持ちこたえられます。逆に、飲めていないなら点滴が要る段階です。

食べられないことを責める必要はありません。つわりの時期に体重が増えないのは、珍しいことではありません。

体重の変化を見る

つわりで体重が減ることはよくありますが、下痢が重なると減り方が早くなります。

母子健康手帳に記録されている体重と比べてみてください。急に減っているなら、次の健診を待たずに連絡する理由になります。

1週間で2キロ以上減っているなら、その時点で連絡する目安になります。数字で見ると判断しやすくなります。

家に体重計がない場合は、服のゆるさでも分かります。ベルトやウエストが変わったという感覚は、数字より覚えているものです。

改善症例|妊娠中のご相談

結論: 妊娠中は、産科の方針を確かめたうえで生活の側から手を入れます。当薬局が扱えるのはこの部分です。

ケース1:妊娠12週・冷たいものばかり取っていた

つわりで温かいものが受け付けず、冷たいゼリーと氷入りの飲み物ばかり取っていた方でした。1日3〜4回の下痢が2週間続き、産科では経過を見る方針とのことです。

伺うと、飲み物はすべて冷蔵庫から出したてでした。まず氷を抜いて常温に近づけていただき、ゼリーも冷やしすぎないよう変えています。

1週間で回数が1日1〜2回に減りました。薬を使わず、温度を変えただけの変化です。産科にも経過を伝えていただき、そのまま様子を見る形になっています。

ケース2:妊娠8週・つわりと下痢が重なった

吐き気が強くて水も飲みにくい状態に、下痢が加わったという状態です。尿の回数が減っており、立ちくらみもあるとのことです。

この状態は当薬局で扱う範囲ではないため、その日のうちに産科へ連絡していただくようお伝えしました。結果として点滴を受け、数日で落ち着いています。

落ち着いてから、経口補水液を少量ずつ取る形と、常温での水分補給をお伝えしました。判断が要る場面を見分けることも、相談を受ける側の役割です。

よくある質問

Q. 妊娠初期の下痢は赤ちゃんに影響しますか?

A. 通常の下痢が直接の原因で妊娠に影響することは考えにくいとされています。心配なのは脱水の側です。ただし発熱、血便、強い腹痛、性器出血を伴う場合は別なので、その日のうちに産科へ連絡してください。

Q. 市販の下痢止めを飲んでもよいですか?

A. 自己判断では使わないでください。市販薬にも妊娠中の使用に注意が必要なものがあります。箱の注意書きを確かめ、判断がつかない場合は薬剤師に週数を伝えて相談するか、産科に聞く順番になります。

Q. 何日続いたら連絡すればよいですか?

A. 3日以上続くなら一度連絡しておく方が安心です。妊娠していない場合の目安は2週間ですが、妊娠中は脱水が進みやすいため短く見ます。飲めていない場合は、日数に関わらず連絡してください。

Q. つわりで水が飲めません。どうすればよいですか?

A. 大さじ1〜2杯ずつを5分おきに、常温で試してください。それでも受け付けないなら、点滴が必要な段階です。つわりと下痢が重なると脱水が早く進むため、その日のうちに産科へ連絡してください。

Q. 漢方薬なら安全ですか?

A. 漢方薬にも妊娠中に避けたいものがあります。大黄を含むものが代表で、子宮の収縮に影響する可能性があるとされます。自己判断で始めず、産科の方針を確かめてから選んでください。

まとめ:心配なのは下痢そのものより脱水

妊娠初期の下痢は、ホルモンの変化と食事の乱れが重なって起こります。多くは経過を見られるものですが、脱水だけは早めに手を打ちます。

  • 原因は3つ: ホルモンの変化、つわりによる食事の乱れ、好みの変化
  • 心配なのは脱水: 通常の下痢が直接妊娠に影響することは考えにくい
  • 市販薬は自己判断で使わない: 成分ごとに注意書きが違う
  • 温度から変える: 冷たいものを常温に。制限を増やす時期ではない
  • つわりと重なったら早めに連絡: 水分が二重に失われる

最後に、本文で触れなかったことを1つ。飲めた量を、その日のうちに書き出してください。妊娠中の下痢で最も見落とされるのが、水分が足りているかどうかです。「たくさん飲んでいます」と話される方の実際の量が、1日500ミリリットルに届いていないことはよくあります。数字があれば、産科に連絡するときもそのまま伝えられます。

「妊娠中で薬が使えず困っている」「産科に相談する前に整理しておきたい」という方は、れいわ漢方薬局にご相談ください。週数と産科の方針を伺ったうえで、生活の側からできることをお伝えします。

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執筆者 濵田篤秀(薬剤師)

執筆者:濵田 篤秀

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