「何科に行けばいいのか分からず、そのままになっています」「行っても何をされるのか分からなくて、足が向きません」――下痢の受診について、この2つはよく伺うご相談です。
最初の窓口は消化器内科です。近くに無ければ内科でも構いません。血便や肛門の痛みが主なら肛門科、子どもなら小児科という分け方になります。
れいわ漢方薬局では、下痢のご相談で受診が要る段階かどうかを先にお伝えしています。様子を見てよい段階と、行った方が早い段階があるためです。
この記事では、症状別の行き先、検査の中身、費用の目安、受診前に整理すること、異常なしと言われたあとの進め方までを扱います。
症状別の行き先
結論: 消化器内科が基本です。血便と肛門の痛みなら肛門科、子どもなら小児科、妊娠中なら産科が先に来ます。
どこに行くかの一覧
症状によって、最も適した診療科が変わります。迷ったときは消化器内科を選べば間違いありません。
下の表は、症状ごとの行き先を整理したものです。当てはまる行が複数ある場合は、いちばん困っている症状の側を選びます。
近くに消化器内科が無いという理由で受診をやめてしまう方がいますが、内科でも初期の検査と対応はできます。
| 主な症状 | 行き先 | 理由 |
|---|---|---|
| 下痢が続く、腹痛がある | 消化器内科 | 腸の検査まで一貫して扱える |
| 近くに消化器内科が無い | 内科 | 一般的な検査と初期対応は可能 |
| 血便、肛門が痛む | 肛門科・肛門外科 | 痔かどうかを見分けられる |
| 発熱と嘔吐を伴い急に始まった | 内科(当日中) | 感染性を考える。脱水の判断が要る |
| 子どもの下痢 | 小児科 | 年齢に応じた薬と脱水の管理 |
| 妊娠中の下痢 | まず産科に相談 | 使える薬が限られるため |
発熱と強い脱水がある場合は、科を選ぶより早く診てもらうことが優先されます。近くの内科で構いません。
消化器内科と内科の違い
消化器内科は、胃腸や肝臓を専門に扱う科です。大腸内視鏡を含む検査まで、一貫して扱える施設が多くあります。
内科でも、血液検査や便の検査、初期の診断は可能です。必要になった時点で紹介してもらえるため、まず近くの内科で相談する形でも構いません。
行かないままにすることの方が、選択を狭めます。科の名前で迷って足が止まるくらいなら、近い方を選んでください。
肛門科を選ぶとき
血便が主で、肛門に痛みがある。この場合は肛門科の方が早く済みます。痔かどうかをその場で見分けられるためです。
ただし、黒いタール状の便なら胃や小腸からの出血を疑うため、消化器内科が適切になります。赤い血なら肛門科、黒い便なら消化器内科という分け方が目安です。
便に混ざっているか、表面に付いているかも手がかりです。表面に付くだけなら肛門に近い出血、混ざっているならもっと奥を考えます。
検査で何をするか
結論: 問診、血液検査、便の検査が基本です。必要に応じて大腸内視鏡や画像の検査が加わります。
検査の順番
いきなり内視鏡になることはほとんどありません。次の順で進みます。
- 問診: いつから、1日の回数、便の色、熱の有無、飲んでいる薬
- 血液検査: 炎症、貧血、甲状腺の機能、脱水の程度を見る
- 便の検査: 血が混じっていないか、細菌がいないかを調べる
- 画像・内視鏡: 上の3つで説明がつかないとき、または警告サインがあるとき
多くの方は、3までで方向が決まります。内視鏡まで進むのは、血便や体重減少がある場合が中心です。
内視鏡はどんなときに
血便、体重が数か月で3キロ以上減った、夜中に目が覚めて下る、50歳以降に初めて出た。このどれかがあると、内視鏡が検討されます。
炎症性腸疾患や大腸がんを外すための検査です。外れれば、そこから体質の側に集中できます。受けること自体に意味があります。
不安が強い場合は、鎮静剤を使う方法もあります。施設によって対応が違うため、予約のときに聞いておくと決めやすくなります。
甲状腺も調べることがある
甲状腺の機能が高まる病気でも、下痢が続くことがあります。動悸、汗をかきやすい、体重が減るといったサインを伴います。
血液検査で確かめられるため、受診すればその場で判断がつきます。痛みを伴わない下痢では、この可能性も候補に入ります。
見過ごされやすい病気の1つです。下痢だけを訴えていると調べられないことがあるため、動悸や体重の変化があれば伝えてください。
費用の目安
結論: 保険が使えます。初診で問診と血液検査なら、3割負担で数千円の範囲に収まることがほとんどです。
検査ごとの負担
かかるのは、初診料、検査料、薬代です。何を調べるかによって幅が出ます。
血液検査と便の検査までなら、3割負担で数千円の範囲です。大腸内視鏡が加わると、1万円前後になることが多くなります。
市販薬を何か月も買い続けるより、一度受診した方が安く済むこともあります。3年間、同じ薬を買い続けていたという方の1か月ぶんの薬代を数えると、判断が変わることがあります。
一度受けておく意味
検査で異常が出ないこと自体に意味があります。悪いものが無いと分かってから、体質の側に集中できるためです。
毎年受ける必要はありません。一度外しておけば、そのあとは症状の質が変わったときだけ確かめれば足ります。
診断を受けずに市販薬で粘っていると、あとから症状が変わったときに比べる基準がありません。最初に一度だけ受診しておくことが、その後の判断を軽くします。
通院の回数
多くの場合、結果を聞く2回目の受診で方向が決まります。薬を出された場合は、2週間後や1か月後に経過を見ます。
長く通い続けるものではありません。症状が落ち着けば、そこで終わります。
慢性の下痢で薬を続ける場合も、月1回程度の受診で足りることがほとんどです。仕事の都合は、診察のときに伝えれば調整してもらえます。
受診の前に整理すること
結論: 日数、1日の回数、便の色、飲んでいる薬。この4つをメモにすると、診察が短く済みます。
4つをメモしておく
口頭では、回数を少なめに答えてしまう方がほとんどです。書いたものがあると、診察の精度が変わります。
- いつから: 何日前からか、何か月続いているか
- 1日の回数: 平均で何回か、最も多い日は何回か
- 便の色と形: 黄色か、緑か、赤い血か、黒いか。水様か泥状か
- 飲んでいる薬: 処方薬、市販薬、サプリメントすべて
このうち4番目が、意外に効いてきます。抗菌薬、糖尿病の薬、マグネシウムを含む便秘薬は、下痢の原因になることがあります。
お薬手帳を持っていく
処方薬を飲んでいる方は、お薬手帳を渡すのがいちばん早い方法です。市販薬とサプリメントは載っていないため、その2つだけ書き足しておきます。
1か月以内に新しく始めたものがあれば、そこが原因の候補になります。下痢が始まった時期と、薬を始めた時期を並べて伝えると、判断が早くなります。
ビタミンCやマグネシウムのサプリメントも対象です。健康のために始めたものほど、原因の候補から外れがちになります。
記録は1週間ぶんで足りる
下った時刻、便の状態、その前の食事。この3つを1週間書き出すだけで、診察のときの説明が済みます。
細かく書こうとすると3日で止まります。「7:40 軟らかい 会議前」。この程度で十分に読み取れます。
スマートフォンのメモで構いません。診察のときは、その画面をそのまま見せれば足ります。書き写す手間をかけると、それだけで続かなくなります。
症状が出なかった日は空欄のままで構いません。空欄の数が、そのまま良い日の数になります。
受診をためらう理由をほどく
結論: 恥ずかしさ、大げさに思われる不安、何をされるか分からない。この3つが受診を遅らせています。
大げさではない
「たかが下痢で受診するのは大げさではないか」と迷う方が多くいます。ただし、2週間続いているならそれだけで相談する理由になります。
日本消化管学会の『慢性下痢症診療ガイドライン2023』では、慢性下痢症を4週間以上持続する下痢と定義しています。4週間を超えているなら、様子を見る段階は終わっています。
医師にとっては、日常的に診ている症状です。珍しい訴えではありません。
検査が怖いという方へ
内視鏡まで進むのは、警告サインがある場合が中心です。多くの方は、問診と血液検査、便の検査で方向が決まります。
いきなり内視鏡になることはほとんどありません。この点を知っておくと、受診の決心はつきやすくなります。
内視鏡が必要になった場合も、鎮静剤を使う方法があります。不安が強いなら、予約のときに相談しておくと選びやすくなります。
説明できるか不安な方へ
うまく説明できるか心配する必要はありません。何日続いているか、1日に何回か。この2つがあれば、診察の側で必要な質問が続きます。
書いたものを渡すだけでも構いません。話しにくさで受診が遅れる方が、はるかにもったいないことになります。
医師は、症状を聞くことが仕事です。うまくまとまっていない話から必要な情報を拾うのも、そのうちに入ります。
子ども・高齢の方・妊娠中
結論: 小児は小児科、妊娠中は産科が先です。高齢の方は脱水が早く進むため、判断を急ぎます。
子どもの下痢
小児科が窓口です。年齢に応じた薬と、脱水の管理が必要になるためです。
おむつが半日濡れていない、元気がない、唇が乾いている。このどれかがあれば、日数を数えずに受診します。小児は半日で状態が変わることがあります。
ウイルス性の胃腸炎が多く、止める薬が向かない場面が多いという事情もあります。自己判断で市販薬を使う前に、まず相談する順番です。
高齢の方
喉の渇きを感じにくくなるため、本人の申告があてになりません。見るのは尿の回数で、半日出ていないなら飲めている量が足りていません。
複数の薬を飲んでいることも多く、そのうちの1つが原因のことがあります。お薬手帳を持って受診すると、この確認が早く済みます。
食事の量が落ちている場合、そのぶん水分も減っています。食事から取れていた汁物が抜けるだけで、数百ミリリットルの差になります。
妊娠中
まず産科に相談する順番です。使える薬が限られるため、産科の方針を確かめてから選ぶ形になります。
つわりと下痢が重なると、水分が二重に失われます。1日の尿の回数が減っている、立ちくらみがするという段階で連絡してください。
市販薬にも妊娠中の使用に注意が必要なものがあります。自己判断で選ばず、産科か薬剤師に週数を伝えて相談する順番です。
異常なしと言われたあと
結論: 異常なしは、悪いものが無いという意味です。原因が無いという意味ではありません。ここから体質を見る段階になります。
検査に映らないもの
西洋医学の検査は、病気があるかどうかを判定するために作られています。粘膜に炎症があるか、腫瘍があるか、菌がいるか。
腸の動きが速すぎる、水を吸収する力が落ちている、冷えると縮む。こうした働きの偏りは、画像にも数値にも映りません。
「悪いところはありません」と言われて安心する一方で、下痢は続いたままという方が多いのはこのためです。
過敏性腸症候群と診断されることも
腹痛を伴い、便通の変化がセットで3か月以上続いているなら、過敏性腸症候群と診断されることがあります。
日本消化器病学会の『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020-過敏性腸症候群(IBS)』では、日本人の有病率をおよそ10%と報告しています。10人に1人という割合で、珍しい状態ではありません。
診断がついたあとも、症状が消えるわけではありません。ここから型を決めて手を入れる段階が始まります。
体質の側から入る
検査で異常が出ないと分かってから、当薬局のような相談先が役に立ちます。下る時刻、便のにおい、冷えの有無から型を決めていきます。
啓脾湯(けいひとう)は、慢性の軟便に用いる漢方薬です。厚生労働省の一般用漢方製剤承認基準では「やせて顔色が悪く、食欲がなく、下痢の傾向のあるもの」に向くとされています。
腹痛と残便感があるなら桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)を使います。厚生労働省の同じ承認基準では、その効能を「腹部膨満感のある次の諸症:しぶり腹、腹痛、下痢、便秘」としています。
冷たいものですぐ下るなら人参湯(にんじんとう)という方向になります。
受診したあとの進め方
結論: 薬が出たら指示どおりに使い、期間を決めて経過を見ます。合わないと感じたら、自己判断でやめずに伝えます。
出された薬の目的を聞く
止める薬なのか、整える薬なのか、痛みを抑える薬なのか。目的が分かっていると、飲むタイミングも判断できます。
何日ぶん出ているかも確かめておくと役に立ちます。3日ぶんなのか2週間ぶんなのかで、どこまで様子を見る想定かが読み取れます。
診察の時間が短くて聞けなかった場合は、薬局で確かめられます。処方された薬の目的や飲み方は、こちらでも説明できます。
期間を決めて経過を見る
多くの場合、2週間後や1か月後に経過を見ます。この間に変化が無ければ、次の手を考える段階です。
記録を続けておくと、次の受診で伝えやすくなります。下った回数が減っているか、便の形が変わったか。数字があると、判断が早く済みます。
記憶で答えると、良くなった実感が先に立って回数を少なめに言ってしまいます。数字があれば、この誤差が出ません。
合わないときは伝える
飲んでみて合わない、副作用が出た。この場合も自己判断でやめず、まず出した先に伝えてください。
量の調整や別の薬への変更で済むことがほとんどです。やめたことを伝えないままだと、次の判断も狂います。
合わないと感じた中身も伝えます。効かないのか、副作用が出たのか、飲みにくいのか。理由によって次に出る薬が変わります。
改善症例|受診につながったケース
結論: 受診が要る段階かどうかを先にお伝えすると、判断が早くなります。当薬局では見立てを添えてご案内しています。
ケース1:50代男性・10年放置していた
1日2〜3回の軟便が10年以上、受診歴なし。痛くないので、ずっとこのままでいいと思っていたとのことです。
痛みも血もないものの、10年という期間と50代という年齢から、まず消化器内科の受診をおすすめしました。血液検査と便の検査で異常なし、内視鏡も受けて問題なしという結果です。
そこから体質を整える段階に入り、啓脾湯を朝晩の2回で開始。3か月後には1日1回の形のある便が定着しました。検査で外してから始められたことが、本人にとっても安心材料になったとのことです。
ケース2:40代女性・薬が原因だった
半年前から1日3〜4回の下痢が続く、というご相談。食事にも冷えにも心当たりが無いという状態でした。
お薬手帳を拝見すると、7か月前に糖尿病の薬が追加されていました。時期が重なっているため、まず主治医に相談していただくようお伝えしています。
結果として量が調整され、それだけで1日1〜2回に戻りました。漢方薬を使う前に外せる原因があった例です。飲んでいる薬の一覧を毎回伺うのは、このためです。
よくある質問
Q. 下痢は何科を受診すればよいですか?
A. 消化器内科が基本です。近くに無ければ内科でも構いません。血便と肛門の痛みが主なら肛門科、子どもなら小児科、妊娠中はまず産科に相談する順番になります。発熱と強い脱水がある場合は、科を選ぶより早く診てもらうことが優先されます。
Q. いきなり内視鏡になりますか?
A. ほとんどありません。問診、血液検査、便の検査で方向が決まる方が多くいます。内視鏡まで進むのは、血便、体重減少、夜間の下痢、50歳以降の発症といった警告サインがある場合が中心です。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 保険が使えます。初診で問診と血液検査なら、3割負担で数千円の範囲に収まることがほとんどです。大腸内視鏡が加わると1万円前後になることが多くなります。市販薬を買い続けるより安く済むこともあります。
Q. 何日続いたら受診すればよいですか?
A. 目安は2週間です。ただし血便、38度以上の熱、尿が半日出ない、体重が3キロ以上減った、夜中に目が覚めて下る。このどれかがあれば日数に関係なく受診してください。小児と高齢の方は目安がさらに短くなります。
Q. 検査で異常なしと言われました。どうすればよいですか?
A. 異常なしは、悪いものが無いという意味です。腸の動きが速い、吸収する力が落ちているといった働きの偏りは検査に映りません。ここから体質を見る段階になり、漢方薬の土俵に入ります。
まとめ:迷ったら消化器内科、無ければ内科
受診が遅れる理由の多くは、行き先が分からないことと、何をされるか分からないことです。どちらも先に知っておけば解決します。
- 基本は消化器内科: 近くに無ければ内科でよい
- 血便と肛門の痛みは肛門科: ただし黒い便なら消化器内科
- いきなり内視鏡にはならない: 問診、血液、便の検査で方向が決まる
- 費用は保険診療: 初診と血液検査なら3割負担で数千円の範囲
- 異常なしは終わりではない: 働きの偏りは検査に映らない
最後に、本文で触れなかったことを1つ。受診する日を先に決めて、予約を取ってしまってください。下痢の受診は、決心がついてから予約するまでに時間が空きます。その間に症状が落ち着くと、また先延ばしになります。症状が軽い日に予約を取っておく方が、結果として早く終わります。
「受診した方がよい段階か知りたい」「検査で異常なしと言われたまま止まっている」という方は、れいわ漢方薬局にご相談ください。下る時刻と便の状態を伺ったうえで、受診の要否と体質に合う漢方薬をお伝えします。


